広報誌
Vol.20 2014年3月発行
第92回全国高校サッカー選手権大会 東京都Aブロック 決勝/東京都・味の素フィールド西が丘 2013年11月16日(80分・40分ハーフ)
成立学園高校 3 - 4 修徳高校
あきらめない修徳がアディショナルタイムに奇跡を起こす
「疲れましたね」。
修徳の岩本慎二郎監督は開口一番、苦笑いしながら言った。
0-1、0-2、1-2、2-2、3-2、3-3、3-4...。目まぐるしくスコアが動いた、成立学園と修徳による東京都Aブロック決勝は、高校サッカーの歴史に残る熱戦となった。
先手を取ったのは修徳だ。32分、成立学園のクリアミスを拾って10番の田上真吾がゴールに流し込んだ。1-0で折り返した50分には、スローインから素早くつないで小野寺湧紀が追加点を挙げた。「先制点を奪い、さらにカウンターで2点目を取って逃げ切るウチの勝ちパターン」(岩本監督)に持ち込んだはずだった。
成立学園・太田昌宏監督はキープ力に優れるストライカーの町田ブライト、正確かつ強烈なシュートを持つレフティの上田悠起と攻撃の切り札を次々に投入。攻撃のカードを増やして守りに入った修徳を相手に攻め立てていく。
それが実ったのは58分のこと。コーナーキックから最後は10番の浅野裕永がヘディングを叩き込み、1点を返す。サッカーでは2点差が最も危険と言われるが、このゴールによって試合の行方は一気にわからなくなった。
75分、修徳ゴールまで25メートルの位置から上田が目の覚めるようなミドルを突き刺して同点。その2分後には右サイドのカウンターから、河上知樹が勝ち越しゴールを挙げる。
これで決まりかと思われたが、「あきらめないのがウチの強み」(岩本監督)という修徳が奇跡を起こす。前線に放り込んだロングボールが相手DFに当たってコースが変わり、オウンゴールになったのだ。
延長戦に突入した熱戦に決着をつけたのは、途中出場の修徳FW関秀太だった。右サイドから鋭いドリブルで次々にDFをかわすと、GKとの1対1で冷静にゴールネットを揺らした。最後まで戦い抜いた両者の試合に、スタンドからの拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
全国大会に乗り込んだ修徳は2回戦で初出場の滋賀県代表・綾羽高校を1-0で破ると、続く3回戦では長野県・松商学園高校に3-0で快勝。9度目の出場にして初めてのベスト8進出という快挙を達成した。
COACH'S INTERVIEW
修徳高校 監督 岩本慎二郎
疲れましたね。関(秀太)はポテンシャルが高くてゴール前で冷静な選手。彼を切り札としてとっておけたことが、今日の勝因だったかなと思います。成立学園は強かったです。先制点を奪い、さらにカウンターから2点を取るのはウチの勝ちパターンだと思ったのですが……。全国大会に向けて今日の試合を教訓にしたいと思います。
第92回全国高校サッカー選手権大会 東京都Bブロック 決勝/東京都・味の素フィールド西が丘 2013年11月16日(80分・40分ハーフ)
駒澤大学高校 0 - 4 國學院久我山高校
國學院久我山が松村の3得点で快勝
「私たちは攻撃が持ち味なので、見ている人にも面白かったんじゃないかと思います」(國學院久我山高校・李済華監督)
激しい点の取り合いとなったAブロック決勝とは打って変わり、Bブロック決勝は國學院久我山の良さが目立つゲームとなった。立ち上がりは駒澤大学高のプレッシャーの速さにビルドアップができず苦しんだものの、14分、一瞬の隙を突いて松村遼が先制ゴールを決めて落ち着きをもたらす。
すると27分、駒澤大学高のプレッシャーが弱くなったところを突いて、富樫佑太のポストプレーを起点に渡辺夏彦、久竹陸とパスがつながり、最後は松村が決めて2点目。「これぞ久我山サッカー」というべきゴールが決まったことで、國學院久我山のパスワークはさらに冴えを見せる。
2点をリードされた駒澤大学高はフリーキックやコーナーキックなどでロングボールをゴール前に放り込んでいく。45分には右サイドからのクロスにボランチの藤田力也が走り込んでシュートを打つが、これは枠の外。55分には右サイドバック・吉村進太郎のロングスローから再び藤田が合わせるが、これは國學院久我山の守護神、仲間琳星に阻まれゴールが決まらない。
すると65分、國學院久我山は右からのコーナーキックを松村がヘディングで叩き込み3-0。松村は右足(1点目)、左足(2点目)、頭(3点目)、それぞれでゴールを決めてハットトリックを達成した。
ゴールラッシュの最後を締めくくったのは、キャプテンでもあり、U-18日本代表候補でもある渡辺夏彦。左サイドの高い位置でボールを持つと、細かいステップとフェイントでDFをかわして4点目をゲット。大勝に華を添えた。
試合後、東京都A代表とB代表を決める抽選の結果、改修前最後となる国立競技場での開幕戦を引き当てた國學院久我山。「国立のピッチに戻ってきたい」(渡辺)という気持ちで臨んだ全国大会初戦。だが、徹底して守りを固めた熊本県代表・熊本国府の前に攻めあぐねると、27分にワンチャンスを決められ0-1。最後まで果敢に攻め続けたものの、相手の身体を張った守りを崩せず、まさかの初戦敗退となった。
COACH'S INTERVIEW
國學院久我山高校 監督 李済華
私たちのチームは攻撃が持ち味なので、見ている人にも面白かったんじゃないかなと思います。たくさん点を取れたのは素直にうれしいですが、4-0というのはたまたま。後半の立ち上がりは相手のほうに何度かチャンスがあって、あそこで決められて1-2、2-2になっていたら、どうなっていたかわからなかったと思います。
第22回全日本高等学校女子サッカー選手権大会 東京都予選大会 決勝/東京都・私学事業団総合運動場 2013年9月15日(70分・35分ハーフ)
十文字高校 3 - 0 修徳高校
十文字が描く日本一へのビジョン
9月15日、「第22回全日本高等学校女子サッカー選手権大会東京都予選大会」の決勝が東京都・私学事業団総合運動場で開催された。優勝したのは決勝で修徳を3-0で下した十文字だ。東京都大会の優勝は今回で6回目。だが、石山隆之監督は「優勝までの道のりは楽ではありませんでした」と振り返る。
「高校選手権は1年をかけて作ってきたチームの実力が出る大会。東京には強いチームがたくさんあり、東京都予選はいつも厳しい戦いになるので、優勝できるとは思っていませんでした」
石山監督が「あそこがターニングポイントになった」というのが、決勝リーグ第3戦の晴海総合戦だ。前半終了時点でのスコアは0-2。
すでに十文字は村田女子と引き分けていたため、このまま敗れれば関東大会の出場権のチャンスがあるグループ2位以内も危なくなる。まさに絶体絶命の状況だった。ここで石山監督は大きな賭けに出た。なんと、ハーフタイムに4人もの選手を一気に交代させたのだ。これがズバリ当たる。大胆な采配によって流れを取り戻した十文字は後半だけで3点を奪取。3-2で勝ち切り、グループリーグを1位で突破した。
「これまでは自信を持っていなかったチームが、あそこでたくましくなりました」と石山監督は選手たちの成長を実感した。その勢いで迎えた、修徳との決勝は意外な展開になった。戦前の下馬評では「修徳有利」と言われていた。だが、十文字は前半だけで3点をリードするという圧倒的な強さを見せつけると、そのまま完封勝利を収めたのだ。
十文字高校
総監督顧問 石山隆之
「今年のチームは例年に比べると、強いわけではありません。それでも、こうやって勝ってこられたのは自信につながったと思います」東京都第一代表として臨んだ関東大会で見事優勝。7年連続9回目となる全国高等学校女子サッカー選手権大会の出場権を勝ち取った。だが、1月に行なわれた全国大会では実力を出し切れず、まさかの1回戦敗退という結果に終わった。
「大事なのは日本一になることではなく、日本一になるまでの過程です。学校法人十文字学園は幼稚園から大学まであるので、その強みを活かして、サッカーをやりたいという女の子のための良い環境を作っていきたい。その結果として、日本一になれれば最高だと思います」
【決勝リーグ】
第22回全日本高等学校女子サッカー選手権大会 東京都予選大会
【決勝戦】 十文字高校 3-0 修徳高校
【順位決定戦】3位決定戦/村田女子高校 2-4 飛鳥高校
5位決定戦/晴海総合高校 1-0 文京学院女子高校
グループA
順位 | チーム名 | 勝点 | 勝ち | 引分 | 負け | 得点 | 失点 | 得失点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 十文字高校 | 7 | 2 | 0 | 1 | 10 | 4 | 6 |
2 | 村田女子高校 | 5 | 1 | 0 | 2 | 10 | 2 | 8 |
3 | 晴海総合高校 | 4 | 1 | 1 | 1 | 4 | 3 | 1 |
4 | 東久留米高校 | 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | 15 | -15 |
グループB
順位 | チーム名 | 勝点 | 勝ち | 引分 | 負け | 得点 | 失点 | 得失点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 修徳高校 | 7 | 2 | 0 | 1 | 10 | 0 | 10 |
2 | 飛鳥高校 | 7 | 2 | 0 | 1 | 6 | 3 | 3 |
3 | 文京学院女子高校 | 3 | 1 | 2 | 0 | 7 | 11 | -4 |
4 | 成立学園高校 | 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | 11 | -9 |