広報誌

Vol.22 2015年3月発行

東京多摩フットボールセンター南豊ケ丘フィールド 「東京のサッカー環境の向上とサッカーによる街の活性化」

最大の課題を解決するために

東京多摩フットボールセンター南豊ケ丘フィールド 写真12月には施設整備委員による見学会が行われ、
グラウンドやクラブハウスへの意見を出し合った

 2015年3月、東京に新たなサッカー施設が誕生した。その名も「東京多摩フットボールセンター南豊ヶ丘フィールド」、通称「南豊(なんとよ)フィールド」だ。人工芝のピッチ1面に、LEDの夜間照明、利用者が快適に利用するための更衣室やシャワー室なども兼ね備えている。
 このサッカー施設には大きな特徴が2つある。それが「学校の跡地を利用していること」、そして「東京都サッカー協会が助成金を出したこと」だ。「南豊フィールド」ができるまでの経緯について、東京都サッカー協会・上野二三一会長に話を伺った。
 「東京のサッカーにおける最大の課題は芝生のピッチが少ないことです。各連盟の集まりに行っても、『何とかしてほしい』とずっと言われてきました。東京都協会としても最優先課題としてとらえています」
 (公財)東京都サッカー協会の登録は、2236チーム、9万3145人(2014年)。これは都道府県サッカー協会では最も多く、日本サッカー協会の登録人数の1割程度を占める。だが、サッカー人口に対して十分なグラウンドの数がないという現状がある。
 「都や区市など自治体が作ってくれるのを待っていては、いつまで経っても改善されません。ですので、私たちとしては新しいグラウンドを作れるチャンスがあるなら」
 そこに持ち上がったのが、多摩市にある旧南豊ヶ丘小学校の跡地をサッカー施設にするという話だった。
 「元々多摩市と東京ヴェルディはスポーツを通じた恊働によるまちづくりの協定を結んでいて、多摩市とNPO法人 多摩サッカー協会、(一社)東京グリーンスポーツリンク(ヴェルディ)から助成の申請が来ました。東京都協会からの助成、さらにtotoの助成も受けて、グラウンドを作ることになりました」
 今回のグラウンドは東京都協会、ヴェルディ、多摩市の3者にとってメリットがある。東京都協会は助成金を出すことによって、優先的にグラウンドを確保できるようになる。ヴェルディとしては平日のスクール会場や、女子チームの日テレ・ベレーザの練習場としても活用できる。多摩市にとっても、スポーツによって街に活気が生まれる。いわば「win-win-winの関係」(上野会長)なのだ。

サッカーを通じた街の活性化を

 実は、東京都協会が助成して整備をしたのは今回が初めてではない。2005年、駒沢オリンピック公園総合運動場の第二球技場と補助競技場が人工芝・夜間照明付きのグラウンドにリニューアルされた際にも日本サッカー協会と共に助成を行っている。
 「第二球技場と補助競技場は完成後東京都に寄付をしたのですが、トレセン活動や試合会場として優先的に使用させてもらうことができ、大変役に立って来ました。しかも人工芝であれば土のグラウンドに比べて管理がしやすく、スケジュールも立てやすい。今回の南豊フィールドができたことで、年間でいえば80日程度はグラウンドが確保できる見込みです」
 東京都協会としては、今後も同様にグラウンドを増やすために助成を行っていく方針だという。
 「すでに清瀬市のグラウンドの人工芝の張り替えと照明の増設への助成を行うことが決まっています。早ければ夏には工事が完了するはずです。清瀬市にはピッチが3面あるので、どこか1面でも毎週末に確保できれば、かなり良くなるはずです」
 とはいえ、約9万3千人ものサッカー人口を抱える東京都にとって、グラウンド数の問題はまだまだ解消されたとは言いがたい。上野会長は「サッカー人口に比べて明らかにサッカー施設が足りていない」と切実に訴える。
 「東京都のサッカー人口のうち、約3万9000人(約42%)が小学生なんです。しかも、シニアや女子も増えている。都や区市に対しては、競技人口やチーム数を公平に評価して施設を作っていただきたいと思っています」
 上野会長はグラウンドの数を増やす目的を「普及と育成のため」と言い切る。そのため環境整備が必要不可欠だという。
 「土のグラウンドでやるのと、芝生のグラウンドでやるのは大違いです。土のグラウンドは雨が降ればドロドロになるし、デコボコになってしまう。サッカーを楽しんでもらい、技術上達のためにも、芝生のピッチを増やしていくことは東京都協会にとって絶対必要なことだと考えています」
 コストのことを考えれば、何もないところに新たなにサッカー場を作るのは現実的に難しい。土地、コストの両面から考えても、今回のような学校の跡地に作るのは「現実的な一つのモデル」と上野会長は言う。
 「今回のケースにしても、学校の跡地を利用できなければコストは何倍にも膨れ上がっていたでしょう。限られた予算の中で、どうやってサッカー場を増やしていくのか。知恵を絞っていかなければいけません」
 上野会長はサッカー場ができることによって、街の活性化につなげたいと考えている。
 「サッカー場ができれば、そこに若い人たちがやってきます。例えば、今回のグラウンドは多摩市の人口減少に伴って廃校になった学校の跡地にできたものです。そうしたところにサッカー場ができれば活気が生まれるはずです」
 上野会長は「だからこそ」と付け加える。「利用者のみなさんには、ピッチ内外でフェアーに行動すること、そして地域社会をリスペクトする気持ちをしっかり持ってもらいたい。例えば、ごみの始末にしても、バス利用時のマナーやチームとして行動するときにも、そこに住んでいる人々に対する配慮が必要です。この施設が地域社会の人々に受け入れられ、街の活性化に役立ってほしいと思っています」
 東京にとってグラウンド問題は簡単に解決できるものではないかもしれない。それでも、東京都サッカー協会はサッカーのプレー環境の向上に一歩ずつ取り組んでいく。その先にあるサッカーを楽しむ人たちの笑顔のために。

東京多摩フットボールセンター南豊ヶ丘フィールド
グラウンド使用時間:
(平日)09:00〜20:30
(土・日・祝)09:00〜18:00
照明使用時間:
(平日)原則20:40までに完全消灯
(土・日・祝)原則18:00までに完全消灯
住所:
東京都多摩市豊ヶ丘6-4
交通:
京王相模原線「京王多摩センター駅」、
小田急多摩線「小田急多摩センター駅」下車。
バス停8番乗り場から乗車、「豊ヶ丘五丁目」下車、徒歩すぐ。
公式サイト:
http://www.verdy.co.jp/versapo/minamitoyogaoka/ _blank