広報誌

Vol.25 2016年9月発行

Jリーグ百年構想クラブ東京武蔵野シティFC「Jリーグを目指して」

J3発足によって危機感が生まれた

— 長らくJFLで活動していた横河武蔵野FCが、東京武蔵野シティFCとしてJリーグ参入を目指すことになったのは、なぜなのでしょうか?
塩野
私たちは横河電機の社内同好会として発足したクラブです。2003年からは横河武蔵野FCと改称し、市民クラブとしてJFLで活動してきました。大きなきっかけとなったのは3年前にJ3リーグができたことです。J3とJFLは同格と位置づけられていますが、Jリーグを目指しているかどうかという点では大きな違いがあります。J3ができてから、主力選手がJ3のクラブへ何人も移籍し、セレクションの受験人数が少なくなるなど、選手補強も難しくなってきました。
— J3リーグができてから、14年はJFLで14チーム中6位、15年は16チーム中12位と低迷しています。
塩野
J3の発足はJFLのクラブにとって強い危機感を覚えるものでした。Jリーグとしては将来的にJ1・J2・J3で100チームにするという構想があります。そうなるとJFLはより厳しい状況になりますよね。Jリーグを目指さない場合、将来的にクラブ運営が難しくなっていくだろうという見通しがありました。また、私たちのクラブでは下部組織で多くの子供たちがプレーしています。13年には12歳以下の国際大会である「ダノンネーションズカップ」で世界一にもなりました。ただ、トップチームがJFLだと子供たちにとっての目標になりづらいんですね。高いレベルでプレーしたいと考えている子供たちにとっての受け皿にトップチームがならなければいけないと考えました。

キャプテンの岩田啓佑。豊富な運動量と高い技術を併せ持つ 写真1キャプテンの岩田啓佑。
豊富な運動量と高い技術を併せ持つ

— 「東京武蔵野シティFC」というチーム名の由来を教えて下さい。
塩野
私たちのビジョンとしては世界へ羽ばたいていきたいというものがあります。国際都市である「東京」を明記する事で知名度・注目度、情報発信力が高まるのではないかと。また、将来的にも継続性のある名前ということで「東京武蔵野シティFC」になりました。
— J3への参入条件はどのようになっているのでしょうか?
塩野
J3クラブライセンス申請手続きを6月末に終えて、ライセンスの交付決定が9月末にあります。そこの審査をクリアすることが第一段階ですね。そのうえで、JFL4位以内、ホームゲーム平均入場者数2000人以上というのを達成すればJ3昇格となります。ただし、JFL4位以内はJリーグ百年構想クラブの中で2位以内が条件です。例えば、私たちが3位になったとして、上位2チームが百年構想クラブだった場合はJ3参入は認められません。

J3昇格の主な条件

JFL年間成績
4位以内

※Jリーグ百年構想クラブ2位以内

ホームゲーム観客平均入場者数
2000人以上
— 今シーズン、ここまでの手応えはいかがでしょうか?
塩野
JFLは2ステージ制で行われていますが、1stステージは18チーム中10位でした。2ndステージでの巻き返しを計っていますが、厳しい状況です。また1stステージの平均動員数は1020人でしたので、目標入場者数の2000人まではかなりの開きがあります。
— 現実的には来シーズン以降でのJ3参入が目標になってきますか。
塩野
もちろん、今年の昇格を目指していますが、現状は成績と観客動員数を含めて厳しい状況です。遅くとも来シーズンJFLで優勝し、2018年にはJ3参入を決めたいと思っております。今シーズンもまだ可能性がなくなったわけではないので、最後まで諦めるつもりはありません。とはいえ、来シーズンのことも見据えた強化はしていく必要性はあるので、早目に動き出していくつもりです。

高いレベルのサッカーを子供たちに見せたい

— ホームタウンである武蔵野市とはどのような関わり方を考えていますか。
塩野
今年の1月に、武蔵野市と相互協力に関する協定を締結しました。武蔵野市からはJ3リーグへの移行に関する活動を支援していただくことになります。私たちとしては武蔵野市の事業やイベントには積極的に参加し、スポーツを通じた地域振興を担っていきます。武蔵野市の人口比率としては高齢者が多く、若い人口の流入が少ないという課題があります。私たちがJリーグに上がれば、地域の子供たちが高いレベルのサッカーを身近に触れることができますし、武蔵野に愛着を持つ人が増えていく。そういった形での地域貢献をしていきたいと考えています。

2016シーズンメンバー 写真1

— クラブとして地域活動はどのようなことを行っていますか?
塩野
03年に市民クラブとなってからも地域活動はずっと行ってきましたが、今後はより増やしていくつもりです。今シーズンは特別支援学校へのサッカー教室、高齢者などの施設に出向いての交流、武蔵野桜まつりなどのイベントなどに選手が参加しています。
— 今シーズンの平均入場者数が1000人ということですが、J3参入条件である2000人まで引き上げるためには何が必要になると思いますか。
塩野
まずは武蔵野のみなさんにチームを知ってもらうことです。東京武蔵野シティFCというサッカーのチームがあって、武蔵野陸上競技場で試合をしている — —そうしたことを知ってもらう。地域貢献活動もまだまだ広げる余地があります。選手たちはプロではなく仕事をしているので、どうしても制限は出てくるのですが、地域活動に参加してもらって、選手と知り合いになって試合に来てもらうのが理想だと思います。
— 1000人の中でコンスタントに試合に足を運ぶファンの数は?
塩野
恐らく、500人ぐらいでしょうか。そうした方が友達や家族を連れてきて、1000人ぐらいという数字になっていると思います。どうやって分母を増やしていけるか、そのための取り組みを行っているところです。日経新聞が武蔵野地域への折り込みチラシを入れてくださったり、関東バスが中刷り広告を出してくださったりといった形で各企業の方々に協力していただいています。また、武蔵野市経由で試合スケジュールを小学校や中学校に配布してもらっています。

武蔵野市を中心に、地域活動にも積極的に取り組んでいる武蔵野市を中心に、地域活動にも積極的に取り組んでいる

— JFLは基本的には土日に開催されます。地方のクラブとの最も大きな違いが、競合するチームが多いことです。JリーグではFC東京がJ1、東京ヴェルディとFC町田ゼルビアがJ2にいます。お客さんを呼び込むためには何が必要になってくるでしょうか?
塩野
JFLの場合は企業チームが多いので、アウェイチームのサポーターがあまり来ないという現状があります。そのため、自分たちで2000人を動員できるようにしなければいけないというハードルもあります。他のチームとの競合に関して言えば、レベルの高いサッカーを見たいという人にとっては、J1、J2のほうが魅力的なのは間違いありません。ただ、私たちとしてはサッカーが好きな方々にももちろんですが、まだまだサッカーに触れたことのない子どもたちや興味のない、全くスポーツに関心がない人などに、東京武蔵野シティFCを通じて体を動かす楽しさや、スポーツを観て楽しむことを知ってもらう活動をしていきたいと思っています。そしてクラブを知ってもらい、興味を持ち、競技場へ足を運んでもらえるきっかけになればと思っています。
— 最後に、東京都のサッカーに関わる選手・指導者の方へのメッセージをいただけますか。
塩野
今シーズンは厳しい戦いになっていますが、クラブとして一丸となってJリーグへの切符をつかみとるために、全力で頑張っていきたいと思います。ぜひ、武蔵野陸上競技場に足を運んでいただき、応援をよろしくお願いします。

クラブヒストリー

1939年         横河電機製作所の社内同好会(横河電気サッカー部)として発足。

2003年         地域密着型サッカークラブへ移行。クラブ名を横河武蔵野フットボールクラブに改称。

2007年    2月  運営母体を「特定非営利活動法人武蔵野スポーツクラブ」に移管。

2015年  11月  Jリーグ百年構想クラブ申請。

2016年    1月  クラブ名を東京武蔵野シティフットボールクラブに改称。

2016年    2月  Jリーグ百年構想クラブ承認。