広報誌

Vol.20 2014年3月発行

SPECIAL INTERVIEW

マッシモ フィッカデンティ監督
新しいイタリアのサッカーを見せたい

2014年、FC東京の新監督に就任したマッシモ フィッカデンティ監督。Jリーグ史上初となるイタリア籍監督は、どんなチームを作ろうとしているのか。上位躍進のカギを握る“マッシモ監督”に話を聞いた。

マッシモ フィッカデンティ監督

新しいチャレンジに迷いはなかった

ー 今回、FC東京の監督に就任した経緯を教えていただけますか。

「FC東京のビジョンに賛同したというのが一番です。これまで、イタリア籍監督がJリーグで指揮を執ったことがないというのは知っていました。私の周りには『どうしてわざわざ日本に行くんだ?』と言ってくる人もいました。確かに、外側から見れば難しいチャレンジに思うかもしれません。でも、私自身が新しい環境、新しい国で監督をやることに高いモチベーションがありました」

ー マッシモ監督から見た、日本とイタリアのスタイルの違いとは?

「基本的な違いは歴史でしょう。イタリアは120年もプロのリーグとしての歴史がありますが、日本はまだ20年ほどです。ただ、近年日本サッカーの成長は著しいですし、ヨーロッパにこれだけの選手を送り込んでいることは、日本が進んできた道が間違っていないことを証明していると思います」

ー イタリアには「カテナチオ」という言葉に代表されるように守備的なイメージがあります。ただ、開幕戦、第2節(インタビューは3月12日に行なわれた)のゲームでは、攻守にアグレッシブだなと感じました。

「イタリア=カテナチオというのは30年以上前にできたイメージです。近年のイタリアサッカーは過去のディフェンシブなイメージから脱却していますし、私自身も攻撃的なスタイルを好みます。FC東京のゲームを通して、新たなイタリアのサッカーを日本のみなさんにお見せしたいと思っています」

ー ここまで、ご自身が目指すサッカーは順調に浸透していると感じますか。

「まさに今、練習と試合を通して深めている段階です。私の目指すサッカーでは攻撃と守備を分けてとらえません。攻撃をしながら守備の準備をし、守備をしながら瞬時に攻撃を仕掛ける。それが理想です。当然のことながら、私の考えをチームに浸透させるまでには、それなりの時間が必要です。ただ幸いにして私のチームの選手たちの理解力は高いですし、とても意欲的に取り組んでくれています。これからも成長の歩みを止めないようにしていきたいと思います」

味スタでファン・サポーターに勝利をプレゼントしたい

ー FC東京は近年、Jリーグで中位に甘んじています。上位進出のために必要なものは何でしょうか。

「まずは現状の自分たちの実力を冷静にとらえなくてはいけません。そのうえで、上位に行くためには違うメンタリティが必要になるでしょう」

東慶悟マッシモ監督の目指すサッカーにおいて、東慶悟の務めるインサイドハーフは重要な役割を担う

ー FC東京は近年、Jリーグで中位に甘んじています。上位進出のために必要なものは何でしょうか。

「まずは現状の自分たちの実力を冷静にとらえなくてはいけません。そのうえで、上位に行くためには違うメンタリティが必要になるでしょう」

ー 例えば、うまくいかずに悩んでいる選手がいるとします。そのとき、監督はどのようなアプローチをするタイプですか?厳しく叱咤するのか、それとも、優しく見守るのか……

「どちらか一つということはありません。大事なのはバランスです。それぞれの選手には悩んでいる状態を解除するための"キー"があります"キー"は選手によって違って、そっとしておいたほうがよい選手もいれば、しっかりと向き合ったほうが良い選手もいます。それを見極めていく力が監督には求められます」

ー 日本人にアプローチするにあたって、外国籍監督として難しさを感じることはありませんか。

「日本人のメンタリティ、考え方を私自身が理解する必要がありますし、逆に日本人の選手たちにも私の考え方を受け入れる努力をしてほしいと思っています」

ー 第2節はFC東京のホームスタジアム「味の素スタジアム」で行なわれました。初めてのホームゲームの感想は。

「素晴らしかったですね。多くのファン・サポーターが最高の雰囲気を作ってくれました。一つ残念だったのは、応援してくれた方々に勝利をプレゼントできなかったことです。早く、味の素スタジアムでみなさんと勝利を分ち合いたいですね」

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ー 最後に、東京でサッカーを頑張っているみなさんへ、マッシモ監督からメッセージをいただけますか。

「大事なのは情熱を持ち続けることです。指導者であれば、どんなに優れた戦術も、斬新なトレーニングも情熱を伴っていなければ望んでいるような結果にはつながりません。プレーヤーも同じです。上達したいという気持ちがあれば、何歳になっても成長できるはずです。それぞれの目標に向かって情熱的に取り組んで下さい」

PROFILE

マッシモ フィッカデンティ監督

1967年11月6日生まれ、イタリア出身。現役選手としてはヴェローナ、トリノなどでプレー。2001シーズンを最後に引退。02年に指導者としてのキャリアをスタートさせる。8クラブの監督を歴任し、14年よりFC東京にJリーグ史上初めてのイタリア籍監督として迎えられる。若手の発掘や攻撃的なスタイルに定評がある。