広報誌

Vol.21 2014年9月発行

第69回 国民体育大会 関東ブロック大会 サッカー競技/栃木県・栃木SC宇都宮フィールド他 2014年8月16・17、23・24日(70分・35分ハーフ)

東京都からは女子が本大会出場を果たす

第69回 国民体育大会 関東ブロック大会 サッカー競技 女子 写真1最高のチームワークが勝利を引き寄せた

狙い通りだった値千金のゴール

 スカウティング通りのゴールだった。本大会をかけた千葉との代表決定戦。22分、千葉の選手が最終ラインでパスをつなごうとしたところに、東京の前線がプレッシャーをかける。パスコースを見つけられなかった左センターバックがGKに下げようとしたボールをカットしたのは東京の9番、中村ゆしかだった。

第69回 国民体育大会 関東ブロック大会 サッカー競技 写真2千葉戦で貴重な決勝点を決めた中村ゆしか

 「インターセプトは味方が相手の苦手なコースを切ってくれていたので狙っていました。GKが前に出ていたのが見えたので打つしかないなと」

 ゴールまでは30メートル近くある。しかし、中村に迷いはなかった。素早く右足を振り抜くと、鮮やかな放物線を描いたボールがゴールネットを揺らした。値千金の先制点が東京にもたらされた。偶然に見えたゴールは偶然でなかった。試合前のミーティングでは「千葉のビルドアップを高い位置で奪えればチャンスになる」と話し合っていた。川邊健一監督は満足そうな表情を浮かべた。

 「私はなでしこチャレンジリーグのスフィーダ世田谷の監督をしていて、千葉の選手たちが所属するジェフ・レディースとは何度も試合をしているので、特徴はわかっていました。スカウティングしたことをピッチの上で選手たちが表現してくれました」

 川邊監督は昨年の東京国体にコーチとして参加。上位進出を期待されながらも、1回戦で敗退してしまった悔しさを味わった当事者でもある。「今年こそは全国で結果を出したい」。都立駒場高校を率いる高校サッカー界の名将・山下正人監督をアドバイザーに迎えて、二人三脚でチームを作ってきた。髭のアドバイザーはひょうひょうとした雰囲気で言う。

 「僕はずっと男子の監督をやってきたから、女子のことは詳しくない。だけど、1発勝負でどうやって勝つかはわかっている。その中でアドバイスできることをしただけ」

 1点リードで前半を折り返した東京だったが、後半になると我慢の時間が続く。千葉が前線にロングボールを入れてきたことで、東京は自陣に押し込まれてしまったのだ。それでも、スフィーダ世田谷のチームメートでもある田中麻里菜と田中真理子の"ダブル田中"のセンターバックが体を張って跳ね返す。

 試合終了間際の70分、東京に最大のピンチが訪れた。ペナルティエリア内のクリアミスを千葉の選手に拾われて、ゴールまで至近距離からシュートを打たれたのだ。だが、このシュートは左ポストに当たって決まらず。前半の1点を守り切った東京が本大会の出場権を勝ち取った。

 何年間も東京代表として出場しているキャプテンの田中麻里菜は「今までで一番うれしい」と声を弾ませた。

 「苦しい試合になることはわかっていました。自分たちのやりたいサッカーはできませんでしたが、全員が一つになって戦ったことが勝因だと思います」

 東京は10月18日に開幕する「長崎がんばらんば国体2014」の初戦で熊本と当たることになった。川邊監督は、この勝利を「通過点」だと強調した。

 「今日もなでしこリーグのレギュラーの選手が何人も出ていましたが、本大会もそうなるでしょう。ただ今日の勝利には日本一になるための通過点です。ここを踏み台にしていきたい。そして、東京のユニフォームに(優勝回数を表す)星を増やしたい」

監督……… 川邊 健一 スフィーダ世田谷FC

背番号 POS 選手名 所属チーム
1 GK 石野 妃芽佳 スフィーダ世田谷FCユース
2 DF 福原 菜緒 スフィーダ世田谷FC
3 DF 櫻井 麻友佳 日本体育大学女子サッカー部
4 DF 田中 真理子 スフィーダ世田谷FC
5 MF 瀬野 有希 修徳中学高校女子サッカー部
6 DF 川島 珠生 スフィーダ世田谷FC
7 MF 山本 摩也 早稲田大学ア式蹴球部
8 FW 伊藤 侑菜 日本体育大学女子サッカー部
9 FW 中村 ゆしか 関東学園大学女子サッカー部
10 MF 薄田 春果 スフィーダ世田谷FC
11 FW 永田 真耶 スフィーダ世田谷FC
12 GK 清水 栞 浦和レッドダイヤモンズレディース
13 MF 山田 美緒和 浦和レッドダイヤモンズレディース
14 DF 田中 麻里菜 スフィーダ世田谷FC
15 FW 下條 彩 スフィーダ世田谷FC
COACH'S VOICE

女子 / 監督 川邊健一

女子 監督 川邊健一 写真

 良かったです。ここ数年結果が出ていなくて、選手たちの「全国に出たい」という気持ちが強かった。僕たちに不足していたのは1発勝負のトーナメントの経験値でした。貴重なアドバイスをくれた山下先生に感謝したいです。

PLAYER'S VOICE

女子 / 14 DF 田中麻里菜

女子 14 DF 田中麻里菜 写真

 昨年の国体に出場したメンバーも多くて、(昨年の)1回戦敗退の悔しさを晴らすには「本大会に出るしかない」と話していました。今年は自力で行けたので自信にもなっていると思うし、昨年とは違った臨み方ができるはずです。

第69回 国民体育大会 関東ブロック大会 サッカー競技 成年男子 写真1千葉の守備を崩せず無得点に終わった

新体制でスタートするも「国体の壁」に阻まれる

 昨年の地元開催の国体で決勝に勝ち上がった成年男子。4年間チームを率いた漆間信吾監督が勇退。新たなチームとして再出発した。

 今年のチームを任されたのはFC町田ゼルビアのアカデミーダイレクターを務める楠瀬直木監督。東京23フットボールクラブの米山篤志監督がコーチとしてサポートする体制になった。

 新体制で挑む初戦は千葉。前半からボールを回したのは東京だった。スタメン11人のうち6人を占める東京23フットボールクラブのプレースタイルは、ボールを大事にしながら、細かいパス回しで中央を崩していくというもの。

 だが15分、ひょんなことから失点を許してしまう。ゴール前に上げられたクロスボールを守備陣がお見合いしてしまい、千葉の選手に押し込まれてしまったのだ。

 「1点取ればこっちのペースになると思っていた」(楠瀬直木監督)というように、東京は昨年の国体にも出場したエースの山本恭平にボールを集めて、積極的に仕掛けていく。だが、先制したことで守備の意識が強まった千葉のディフェンスを打ち破れない。

 後半には福田建がフリーキックから惜しいシュートを放つも決まらず。すると63分、千葉に一瞬の隙を突かれてカウンターを仕掛けられると、右サイドからのクロスが東京の選手に当たってオウンゴール。0 -2と点差を広げられてしまう。東京はセンターバックの伊藤竜司を前線に上げてパワープレーをするもタイムアップ。新体制で臨んだが「国体の壁」に阻まれ、一回戦敗退となった。

監督……… 楠瀬 直木 FC 町田ゼルビア

背番号 POS 選手名 所属チーム
1 GK 太 洋一 東京23 フットボールクラブ
2 DF 中井 將貴 日立ビルシステムサッカー部
3 DF 伊藤 竜司 東京23 フットボールクラブ
4 DF 浅海 友峰 東京海上日動火災保険(株)サッカー部
5 DF 小林 翼 東京23 フットボールクラブ
6 DF 卞 栄将 FC KOREA
7 MF 田仲 智紀 東京23 フットボールクラブ
8 MF 渡邉 敬人 東京23 フットボールクラブ
9 MF 福井 快 東京23 フットボールクラブ
10 FW 山本 恭平 東京23 フットボールクラブ
11 FW 福田 建 日立ビルシステムサッカー部
12 GK 康 成宇 FC KOREA
13 MF 三澤 慶一 東京23 フットボールクラブ
14 MF 飯島 秀教 東京23 フットボールクラブ
15 FW 河村 太郎 東京23 フットボールクラブ
COACH'S VOICE

成年男子 / 監督 楠瀬直木

成年男子 / 監督 楠瀬直木 写真

 前半の2点はどちらも不運が重なったものでした。後半になってリズムが出てくればと思っていましたが、パススピードが上がってこなかった。それぞれの選手のコンディションにもバラツキがあって、国体の難しさを感じました。

第69回 国民体育大会 関東ブロック大会 サッカー競技 少年男子 写真1PK戦で敗れて頭を抱える選手たち

前回王者の少年男子は1回戦で姿を消す

 昨年、「スポーツ祭東京2013」で優勝を果たした少年男子。今年は関東U-16リーグでBグループ3位となり、本大会へ出場するには2試合の勝利が必要な状況となった。

 1回戦の相手は開催地の栃木県。試合は序盤から東京都が両サイドから何度もチャンスを作るが、引いて守る栃木県の守備陣を崩すことができない。そんな中、試合が動いたのは22分。GKからボールを受けた栃木県の明本考浩がハーフウェーライン付近からロングシュート。このボールが前に出ていたGKの頭上を越えゴール。東京都は一瞬のスキを突かれ先制を許してしまう。

 「前半はやっぱり固さがあったのでいつものプレーができなかった。そのタイミングであのロングシュートが決まってしまい、立て直すのに時間がかかった。」(蔵森紀昭監督)

 1点ビハインドで折り返した後半、東京はドリブルが武器の川原田湧を投入する。すると60分、川原田が右サイドからドリブルで中へ切れ込み中央に走り込んでいた伊藤純也へパス。ボールを受けた伊藤はさらに左を駆け上がってきた半谷陽介へ。半谷が落ち着いてシュートを流し込み、同点に追いついた。

 ここから東京都は何度かチャンスを迎えるが、勝ち越すことができない。延長戦でもゴールが決まらず勝負はPK戦へ。2人目が外した東京都に対し、栃木県は5人全員が成功。2連覇という大きな目標を掲げてスタートしたが、関東ブロック大会の1回戦で早くも姿を消すことになった。

 蔵森監督は「これだけのメンバーを預かっていながら勝たせられず申し訳ない」と肩を落とした。

監督……… 蔵森 紀昭 成城学園高校

背番号 POS 選手名 所属チーム
1 GK 佐藤 久弥 東京ヴェルディユース
2 DF 平田 竜士 東京ヴェルディユース
3 DF 深澤 大輝 東京ヴェルディユース
4 DF 岡崎 慎 FC東京U-18
5 DF 松本 幹太 東京ヴェルディユース
6 DF 鈴木 喜丈 FC東京U-18
7 MF 伊藤 純也 FC東京U-18
8 MF 大久保 智明 東京ヴェルディユース
9 FW 半谷 陽介 FC東京U-18
10 FW 吉村 寿輝 FC東京U-18
11 FW 西田 優太 横浜F・マリノスユース
12 GK 波多野 豪 FC東京U-18
13 DF 杉山 耕二 三菱養和サッカークラブユース
14 MF 竹本 大輝 成立学園高校
15 MF 川原田 湧 横浜F・マリノスユース
16 FW 河原地 亮太 横浜F・マリノスユース
PLAYER'S VOICE

少年男子 / 3 DF 深澤大輝

少年男子 / 3 DF 深澤大輝 写真

 前半はちょっと悪い流れで、僕自身もミスが多く、それで失点してしまい悪い流れを断ち切れなかった。後半は同点には追いついたが、その後のチャンスを決めきれなかった。そこで決めていれば難なく勝てていたと思う。