広報誌
Vol.25 2016年9月発行
1 / 3
2016東京国際ユース(U-14)サッカー大会/駒沢オリンピック公園総合運動場 2016年5月1〜4日 グループリーグ 40分 順位戦60分 主 催:東京都、公益財団法人東京都スポーツ文化事業団、公益財団法人東京都サッカー協会
次世代を担うサッカー選手による国際大会「2016 東京国際ユース(U-14)サッカー大会」が開催された。世界中から集まった個性豊かなチームと選手たちが優勝を目指し、4年後のオリンピックの舞台となる東京で熱い戦いを繰り広げた。
勝利への執念を見せたボカジュニアーズが3度目の優勝!
前年度王者のカイロと最多優勝回数を誇るボカジュニアーズの決勝戦。頂点を目指す両チームがハイレベルなプレーを繰り広げた
ボカジュニアーズが突いた一瞬の隙
5月1日から4日間、駒沢オリンピック公園総合運動場で行われた「2016東京国際ユース(U-14)サッカー大会」。8回目となる今大会には国内から7チーム。国外からは9チームの計16チームが参加。次世代のスターを目指す選手たちによるプレーが繰り広げられた。
4日間の熱闘の末、決勝戦に勝ち上がったのは前回大会で初優勝を果たしたカイロと、昨年の準決勝でカイロに敗れたボカジュニアーズ。決勝の会場には昨年を上回る2955人の観客が集まり、勝負の行方を見守った。
ボカはL・モレイラとL・バレンテ・ディアスが攻撃時はサイドに張り出し、中央のスペースを空けて、そこに2列目の選手が入ってくる変則2トップシステムを採用。3バックのカイロに対して、FWがサイドに流れることでCB同士の間を空けて、そこを突くという狙いが見られた。守備時には前線からプレッシャーをかけて、奪った後のショートカウンターを狙っていた。
ボカに押し込まれる時間が長かったカイロだったが、守備時には両サイドのウイングバックが下がって、5バック気味になってゴール前を固める。攻撃時には2トップとトップ下の3人で手数をかけずにゴールを狙って、ワンチャンスをうかがった。
ボカジュニアーズのルケス監督は「勝つことで若い選手は鍛えられ、勝者のメンタリティが生まれる」とチームの哲学を語った
前半はボカが何度かゴール前まで運ぶものの、カイロの身体を張ったディフェンスに阻まれ、ゴールネットを揺らすことができない。前半のシュート数3本というデータが示すように、ボカにとっては難しい試合となった。ただ、「激しい試合になることは分かっていた。そのためのトレーニングをしてきた」とボカを率いるL・ルケス監督が言うように、ボカはどこかで訪れるチャンスを虎視眈々と狙っていた。それが実ったのは51分、R・グランセ・マルティネスがGKをかわし、角度のないところからシュートを放つ。カイロ選手が何とかクリアしたかに見えたが判定はゴール。ボカが待望の先制点を手にした。その後、南米のチームらしいリードした試合での時間の使い方を見せたボカが、1-0でカイロを下して3度目の優勝を飾った。
L・ルケス監督が試合後に語ったのは「勝つことの重要性」だった。「ボカに入ったら、どのカテゴリーであっても勝つことが求められます。勝つことで若い選手は鍛えられる。それが勝者のメンタリティにつながっていくのです」。青と黄色のユニフォームに身を包んだ選手たちは、14歳以下とはいえ「ボカの一員」というプライドを背負ってピッチに立っていた。その勝利への執念は日本の選手のみならず、全てのチームにとって刺激になっただろう。
3度目の優勝を飾ったボカジュニアーズ。技術はもちろん、勝利への執念、球際での激しさは出場チームの中で突出していた
もちろん、この大会の目的は「勝つこと」だけではない。世界各国から集まった、異なる文化を持つ選手たちが、試合でのプレーや、ピッチの外での生活を通じて、お互いに交流することも重要なテーマだ。今回も出場チームが中学校に行って日本の文化に触れたり、出場チーム同士で選手交流会を行うなど、サッカー以外にも多くの経験をした。
今年で8年目を迎えた「東京国際ユース(U-14)サッカー大会」。4年後のオリンピックの舞台である東京で繰り広げられた、世界のユース世代による国際大会は、参加した選手はもちろん、見るものにも多くの感動と発見を与えた。
順位 | チーム名 |
---|---|
優勝 | ボカジュニアーズ(ブエノスアイレス) |
準優勝 | カイロ |
3位 | FC東京 |
4位 | 東京都トレセン選抜 |
5位 | ベルリン |
6位 | コリンチャンス(サンパウロ) |
7位 | 東京ヴェルディ |
8位 | 宮城県 |
9位 | チェルタノヴォ(モスクワ) |
10位 | パリFC(パリ) |
11位 | ソウル |
12位 | 茨城県 |
13位 | 岩手県 |
14位 | ニューサウスウェールズ |
15位 | 福島県 |
16位 | 八一中学(北京) |
3位決定戦は“東京ダービー”に
FC東京は29分に煙山拓がゴールを決めると、その1点を守り切り、東京都トレセン選抜を下した
決勝に先立って行われた3位決定戦はFC東京と東京都トレセン選抜の〝東京ダービー〞となった。29分、FC東京の煙山拓が左足でゴールネットを揺らして先制する。「ゴールを決めた時は、何も考えられないぐらいうれしかった」(煙山)。前半はシュート0本に抑えられた東京都トレセン選抜だったが、後半は10番・角昴志郎が左サイドからキレのあるドリブルで仕掛け、何度もチャンスメイク。5本のシュートを放ったものの、FC東京の堅い守りを崩せず、追い付くことはできなかった。
3位になったFC東京の小池知己監督は大会の収穫について「海外チームと試合をした時にサッカーの捉え方が違うと感じました。勝っている試合で時間を使うことを、この年代で当たり前のようにやっている。そういうシビアなところは日本も学んでいかなければいけない」と、準決勝で戦ったボカジュニアーズの勝利への執念に脱帽した。
東京都トレセン選抜の安岡博文監督は「今回も良い経験をさせてもらいましたが、それをどのように東京のサッカーにフィードバックし、つなげていけるかが重要だと思います。今大会を通じてできたこと、できなかったことをしっかりと整理して、共有していきたい」と東京の選手たちが味わった経験を生かしたいと語った。
東京-ソウル親善サッカー定期戦2016/ソウル特別市・ワールドカップ競技場補助競技場、考昌運動場 2016年8月24・25日 公益財団法人東京都サッカー協会、ソウル特別市蹴球協会
20回目を迎えた、サッカーを通じた友好親善
1996年より開催されている、東京都と韓国・ソウル特別市両都市サッカー協会の友好親善を図ることを目的とする「東京̶ソウル親善サッカー定期戦」。隔年にて開催地を入れ替えて実施しており、20回目となる今回は、8月24・25日にソウル特別市で行われた。
中学校選抜、強豪高校と戦う
本定期戦に参加したのは東京都のU-15とU-18の選抜チーム。U-15は、来年愛媛で開催される「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」への強化の一環と位置付け、東京トレセンU-15より選抜された選手によりチームを結成し、24日・25日ともにソウルの中学校とクラブから選抜されたソウル中学校選抜チームと対戦した。
U-15は第1戦、前半は相手に押し込まれる時間帯が続くも耐えると、徐々にマイボールの時間帯を増やし自分たちの攻撃の時間を増やしていった。何度かシュートを打たれた場面もGK石井日陽(FC東京U-15むさし)のファインセーブもあって、0-0で前半を折り返した。
ハーフタイム、生方修司監督(三菱養和SC)は「残り10分から15分で相手の足が止まるから、そこを狙おう」とアドバイス。後半は序盤前半同様相手に押し込まれる時間が続くが東京も何度かゴール前までボールを運びシュートまで行く場面もあった。
試合が動いたのは後半アディショナルタイムだった。ソウルにペナルティーエリア内に放り込まれると、頭で合わせられて失点してしまう。これで終わったかと思われたが、失点直後、遠藤海斗(東京ヴェルディジュニアユース)のミドルシュートがゴールネットに突き刺さり同点。終了間際に2ゴールが決まる試合は1-1で試合終了となった。
第2戦は、先発メンバーを第1戦から変更して臨んだ。前半は、東京がボールを持つ時間が長い状態で進んだがゴールが決まらない。ハーフタイムに生方監督は「最初の5分我慢しよう」、「ボールサイドはしっかり寄せよう」と指示を送る。
しかし後半11分、左サイドバックの裏のスペースにボールを供給されると、そこから折り返したクロスを合わせられて失点してしまう。メンバーを立て続けに変え、攻撃に厚みを加えようとしたものの、後半20分にも追加点を決められてしまう。反撃も及ばず0-2で試合を終えた。
U-15は来年の国体少年男子(U-16)に関わる世代。今回の遠征はチームの基礎作り、選手の能力を図る良い機会となった。
U-18は東京都クラブユース連盟U-18選抜が東京を代表して参加した。24日、25日ともに2016年の文化体育観光部長官旗全国高校サッカー大会優勝の輔仁(ボイン)高等学校と対戦した。
第1戦は、立ち上がり何度か左サイドから崩されピンチを迎えるも凌いで攻撃の糸口を見つけようとする。前半も中盤に差しかかり東京のチャンスが増えていった中、前半21分にペナルティアーク付近でボールを受けた青木義孝(FC町田ゼルビアユース)がDFをかわしてシュート。これが見事にゴールに決まって1-0とした。だが前半終了間際の40分+2分、ペナルティーエリア内でファウルをとられPKから同点に追いつかれ、1-1で前半を折り返した。
ハーフタイムには米原隆幸監督(FCトリプレッタ)から「自分たちの形で攻撃も守備もできているからそれは続けよう」、「東京のプライドを持って戦おう」という檄が入る。
後半は、一進一退の激しい攻防が続く中、お互いゴール前まで迫りチャンスを作るも得点を挙げることができず1-1の同点のままタイムアップとなった。
「勝つこと」を強く意識して臨んだ第2戦。東京は飲水タイム終了直後のコーナーキックを渡辺基希(東京武蔵野シティFC U-18)が頭で合わせゴールネットを揺らすも、オフサイドのため惜しくも得点ならず。その後前半38分、コーナーキックを頭で決められ失点してしまい前半が終了した。
後半には相手フォワードとGK湊幸輝(三菱養和SCユース)が交錯。回復を待つため一旦試合が止まるほどの激しい攻防が続いた。
東京はフレッシュな選手を投入してゴールを狙ったが、後半29分にフリーキックからヘディングを決められ2点差に。さらに後半40分+6分にも失点してしまい、0-3で第2戦を終えた。
スコアは0-3と完敗だったものの、第1戦、第2戦を通し激しい攻防が展開され、お互いのプライドがぶつかり合った非常に有意義な試合となった。
20回目となる今回の東京-ソウル定期戦はU-15、U-18合わせて0勝2分2敗、未勝利という結果になった。
今回も前回のソウルで開催された2014年と同様に選手団に東京所属の審判員・藤澤和駿氏が帯同し、主審と副審を1試合ずつ担当した。審判員同士も交流ができ、実のある遠征となった。
1 / 3