広報誌

Vol.22 2015年3月発行

第1回東アジアシニアサッカー大会/東京都・赤羽スポーツの森公園競技場 2014年12月6日

東アジア3カ国による〝シニアの祭典〞

第1回東アジアシニアサッカー大会 写真1

世界的にも珍しい試み

 2014年12月6日、赤羽スポーツの森公園競技場で〝歴史的な出来事〞があった。東京都(日本)、ソウル市(韓国)、広州市(中国)の3都市を代表するシニアチームによって「第1回東アジアシニアサッカー大会」が行われたのだ。2010年より東京とソウルでは交互に開催都市を入れ替えて定期戦を行ってきたが、中国が参加するのは今回が初めてのことだ。
 東京都シニアサッカー連盟のリーグ統括(大会当時)林志寿雄氏が「このようなシニアの世界大会は珍しいのではないか」というように、シニアのチームが国をまたいで交流することは世界的に見ても稀。この「東アジアシニアサッカー大会」はどうして実現したのだろうか。
 「元々、東京とソウルで定期戦をやっていたのですが、中国の広州市にも参加を呼びかけたところ、二つ返事で『来たい』と言っていただきました」
 大会は50歳以上(O-50)と40歳以上(O-40)のカテゴリーに分けられ、3カ国から1チームずつが参加して総当たりのリーグ戦形式で優勝を争った。O-50の優勝は中国の広州634足球隊。50代とは思えないようなキレのある動きとパワフルなシュートは見事だった。O-40を制したのは韓国のシニアサッカー界の名門チーム、ソウル市ロイヤルFC40。スピードに乗ったカウンターアタックが光った。日本から出場した2チームは、O-50のセレクシオン・トキオが2位、O-40のTドリームスは3位という結果に終わった。
 会場には日本サッカー協会の田嶋幸三副会長が視察に訪れた。田嶋副会長は目の前のピッチで繰り広げられるシニア選手たちのプレーに「みんな走れてますね」と感嘆の声を挙げた。

サッカーを通じて交流を深める

 「シニアのカテゴリーで違う国のチームとやれることはほとんどありません。だから今回は本当に楽しみにしていたんですよ」
 セレクシオン・トキオでプレーする丸山剛生は韓国、中国のチームと戦ったことで「普段の練習や試合からもっともっと頑張らないとダメだ」と感じさせられたという。
 「韓国のチームも中国のチームも速くて、体が強い。日本のチーム同士で試合をしているだけでは味わえないような感覚がありました」
 セレクシオン・トキオの石田治監督は「第1回だったので、どうしても優勝したかった」とコメント。「リーグで優勝したチームが出られるということなので、1年間リーグを頑張ってリベンジしたいと思います」と早くも第2回大会を見据えていた。
 東京都シニアサッカー連盟の林氏は言う。
 「これまでシニアの世界では全国大会に出ることが最大の目標でしたが、これからは国際大会に出たいということで、よりいっそうのモチベーションが生まれるのではないかと思います」
 今大会の意義はピッチの中だけに留まらない。大会前日には歓迎レセプションが催され、参加チームの選手たちはもちろん、それぞれの国のサッカー関係者が一堂に介して、交流を深めた。翌日は試合中に熱くなる場面もあったが、試合後はお互いの健闘を称え合い、記念撮影をする場面も見られた。
 サッカーが共通語になって、国を越えたつながりが生まれる――。それこそが、「東アジアシニアサッカー大会」の最大の魅力なのかもしれない。すでに第2回大会は2015年に中国・広州市で開催されることが決定。東京都からはO-50はTSL-1優勝チーム、O-40はTCL-1優勝チームに出場権が与えられる。東京のシニアサッカーはますます盛り上がりそうだ。

第1回東アジアシニアサッカー大会 写真2

O-50カテゴリー 結果
1位広州634足球隊(中国・広州市)
2位セレクシオン・トキオ(日本・東京都)
3位ソウル市ロイヤルFC50(韓国・ソウル市)
O-40カテゴリー 結果
1位ソウル市ロイヤルFC40(韓国・ソウル市)
2位中国広州歳月明星足球隊(中国・広州市)
3位Tドリームス(日本・東京都)

ダノンネーションズカップ2014世界大会/ブラジル・アレーナコリンチャンス 2014年11月14〜16日

横河武蔵野FCジュニアが世界一に!

ダノンネーションズカップ2014世界大会 写真1ダノンネーションズカップの国際大会で日本チームが優勝するのは初めて

積み上げたものをぶつける

ダノンネーションズカップ2014世界大会 写真1最終日の決勝は
ブラジルワールドカップの試合会場で行われた

 ブラジルの地で〝日本代表〞が世界一のカップを高々と掲げた。〝12歳以下のワールドカップ〞とも呼ばれるダノンネーションズカップ世界大会が2014年11月にブラジルで行われ、日本代表として出場した横河武蔵野FCジュニアが頂点に立った。
 予選リーグの初戦ではオランダに1-0で勝利。サウジアラビア戦はスコアレスドローに終わったものの、第3戦でアルジェリアに8-1で大勝し、2勝1分けのグループ1位で決勝トーナメントに勝ち上がった。
 「世界大会だからといって特別に戦い方を変えてはいません。自分たちが積み重ねてきたものが通用するのかチャレンジしようと話していました」(戸田智史監督)
 ダノンネーションズカップは20分1本というレギュレーションで行われる。試合時間が短く、ハーフタイムもないので、必然的に〝1点の重み〞が大きくなる。今大会、横河武蔵野FCは0-0だったサウジアラビア戦を除き、6試合中6試合で先制点を決めて、優位に試合を運んだ。
 「先制点を取れたのは大きかったですね。ただ、先制した後に相手チームがゴールに向かってくる気迫や、勝利への執念というのは見習わなければならないなと感じました」
 戸田監督にとっても、横河武蔵野FCジュニアの選手にとっても、世界大会に出るのは初めてのことだった。3日間の中でさまざまな発見があったという。「ピッチの外では12歳の子供たちの順応性には驚かされました。言葉が通じないはずなのに、コミュニケーションをとって仲良くなっていましたから(笑)。ピッチ内で感じたのは日本人選手の技術の高さを感じました。ボールコントロールに長けているし、パスをしっかり回すこともできます。そこは自信になりましたね」

世界一はゴールではない

ダノンネーションズカップ2014世界大会 写真2「12歳以下での日本人選手の技術は間違いなく高い」
と戸田智史監督

 決勝トーナメントではイングランド(1-0)、ルーマニア(3 -0)、チリ(3-0)を破って、日本のチームとしては2回目のファイナリストになった。決勝の舞台はサンパウロのアレーナコリンチャンス。半年前に開催されたFIFAワールドカップで開幕戦が行われた、8万人収容のスタジアムだ。
 「あんなところで試合をできることなんて、一生のうちに一回あるかないか。当日は2万5000人ぐらいお客さんが入って、コーチングの声も全然通らない。だけど、選手たちはこっちが驚くぐらい落ち着いていましたね」
 パラグアイとの決勝は10分ハーフで行われた。前半はスコアレスだったものの、後半に入ってリズムをつかむと、待望の先制点が生まれる。ゴール中央でボールを持った依田らい木のスルーパスに、右サイドから走り込んだ斉藤将成がゴールに流し込んだ。
 その後はパラグアイの猛攻を受けるものの、チーム全員で体を張って跳ね返し、1-0でタイムアップ。表彰式ではキャプテンの松本太一が高々とトロフィーを掲げた。ただ、世界一になったとはいえ、戸田監督は「これがゴールではない」と言う。世界一という素晴らしい結果を出してきたからこそ、見えてきた課題がある。
 「大事なのはこれから。これまでもダノンネーションズカップでは日本のチームは良い成績を残しています。他の国には身体能力がずば抜けている選手もいましたし、そういう選手たちと年齢が上がっていっても勝てるようにならなければいけない。今大会で改めて感じた日本人としての良さを突き詰めながら、海外の選手が持っていた勝負への貪欲さや、タフなメンタルなどを身につけていくことが重要になるんじゃないかと思っています」

予選リーグ
[第1戦]オランダ1-0
[第2戦]サウジアラビア0-0
[第3戦]アルジェリア8-1
決勝トーナメント
[1回戦]イングランド1-0
[2回戦]ルーマニア3-0
[準決勝]チリ3-0
[決 勝]パラグアイ1-0