「3試合連続でPK勝利というのは……私の指導者人生でも初めてです」。
準決勝終了後、漆間信吾監督は苦笑いしながら振り返った。成年男子の東京都は1回戦から薄氷を踏むような戦いで決勝まで勝ち上がっていった。
町田市立陸上競技場で行われた北海道との1回戦。東京都は幸先良く先制する。13分、小島暢明が蹴り込んだロングボールを、山下真太郎が身体能力の高さを活かして強引に押し込んだ。
前半は1-0で折り返したものの「どんどん前に出てきた」(漆間監督)北海道の圧力に押され、同点とされる。勝負の行方はPK戦へ。延長終了直前、PKストッパーとして登場したGK寺地廉は期待に応え北海道4人目のキッカーを見事ストップ。1回戦を突破した。
全試合PK戦勝利で13年ぶり決勝へ
多摩市立陸上競技場での準々決勝は茨城県に先制される苦しい展開となった。チームを救ったのはDFの安藤謙。敗色濃厚の後半アディショナルタイム、コーナーキックから打点の高いヘディングシュートを叩き込み、試合を振り出しに戻す。2試合連続のPK戦では東京都がキッカー5人全員が成功したのに対し、茨城県は5人目が失敗。準決勝へ勝ち上がった。
攻撃の軸としてチームを引っ張った朴世訓
決勝進出をかけて戦ったのはJFLのグルージャ盛岡のほぼ単独チームで臨んできた岩手県。27分、「1、2戦とあまり持ち味を出せていなかった」(漆間監督)、10番の朴世訓のミドルシュートで先制する。しかし、その直後に同点に追いつかれてしまう。
その後、1点ずつを取り合うと、またしてもPK戦に突入。ここでも存在感を放ったのはGK寺地廉だった。1人目、5人目、8人目と3本のシュートをストップする大活躍。東京都が3試合連続PK勝利で13年ぶりの決勝進出を果たした。
岐阜県との決勝では19分、コーナーキックから先制されてしまう。後半になると東京都はボランチの本橋良太のスルーパスや、安藤のロングスローからゴールに迫っていくものの、どうしてもこじ開けることができない。これまで何度も奇跡を起こしてきた東京都だったが、決勝では1点が遠かった。
「最高の結果にできなかったのは残念だけど、このメンバーで戦うことができて良かった。」(安藤)
試合後の成年男子のメンバーたちの表情は、「自分たちの実力を出し切った」という晴れやかなものだった。
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