試合レポート


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第16回東京都サッカートーナメント 決勝
(第91回天皇杯全日本サッカー選手権大会東京都代表決定戦)

2011年8月27日 東京都・西が丘サッカー場
 

優勝した町田ゼルビアにとっては”初タイトル”だ


大学有利を覆して町田ゼルビアが優勝!
 JFL所属の町田ゼルビアと、関東大学リーグ所属の専修大学による決勝戦は、最後の最後まで結末が読めない、東京都サッカートーナメントの歴史に残る名勝負となった。
  先制したのは専修大学だった。24分、トップ下の町田也真人が庄司悦大からの縦パスを受けると素早くターン。軽やかなドリブルでDF2人を外して左足でシュートを流し込んだ。
 町田ゼルビア・ポポヴィッチ監督は、前線に運動量豊富な北井佑季をスタメン起用し、攻撃の起点となるDFラインやボランチにプレッシャーをかけることで、横河武蔵野FCを6-0で粉砕した専修大学の攻撃陣を封じることに成功する。
 8分、町田ゼルビアが勝又慶典のPKで同点に追いつく。その後はお互いに速い展開の中でチャンスを見出そうとするものの、両チームのGKの活躍もあって「次の1点」がなかなか生まれない。

専修大学の町田也真人が鮮やかな先制ゴールを叩き込む
 
 社会人と大学の試合の場合、後半になるにつれて社会人の運動量が落ちて、大学が走り勝つ展開になるのが恒例パターンだった。だが、専修大学・町田が「正直相手の運動量が落ちると思っていたけど落ちなかった」と語ったように、町田ゼルビアがJFL所属クラブの意地を見せる。
 90分間、20分間の延長戦でも決定打は生まれず、勝負はPK戦に突入。そして、ここでアクシデントが発生する。町田ゼルビアのGK修行智仁が延長戦で相手選手と接触して顔面を骨折。町田ゼルビアはこの時点で交代枠をすでに使い切っていたため、GKの交代は不可能。「GKが止めるのは期待できないから、相手が外すまで決め続けようと話していた」(勝又)。
 絶体絶命と思われたが、修行は専修大学の1人目・町田のシュートを奇跡的にストップ。町田ゼルビアは勝又の言葉通り5人全員が見事に決めて、専修大学を下した。Jリーグ昇格を目指す町田ゼルビアにとって天皇杯は全国に名を売る大きなチャンス。天皇杯の舞台で大暴れすることを期待したい。

 

PK勝利の立役者となった町田ゼルビアのGK修行智仁
 
 
interview

町田ゼルビア 勝又慶典
 Jリーグを目指すクラブとして「大学生に負けてはいけない」というプレッシャーに打ち勝って優勝できたことは、若い選手が多い僕たちにとって大きい。天皇杯では東京都代表の看板も背負うことになるので、下手な試合はできません。Jリーグを倒して一つでも上に行って全国に「町田ゼルビア」の名前を広めたい。
   

専修大学 町田也真人

 大学と社会人の試合では大学が走り勝つことが多かったので、走り勝つのを狙っていたんですが、うまくいかなかった。正直もっと相手の運動量が落ちると思ってたけど、落ちなかった。PK戦に関しては「これを決めないと自分自身が上に行けない」という気持ちが強過ぎたのかもしれない。簡単に取られてしまってみんなに申し訳ない気持ちです。

東京‐ソウル親善サッカー定期戦2011
2011年8月24・26日 東京・駒沢陸上競技場、江東区夢の島競技場
 

「得意」と語るドリブルで何度も突破を見せた池添勘太郎

後半に足が止まって逆転負けを喫する
 1996年から始まり、東京とソウルで交互に開催されてきた「東京─ソウル親善サッカー定期戦」。東京とソウルのユース年代の選手たちが親善試合を行うことで、国際経験を積むと共に、国際交流を図ることが目的のこの大会も、今年で15回目を迎えた。
  8月24日に駒沢陸上競技場で行われたU─15カテゴリーの第1戦では中学校でプレーしている選手同士の試合が組まれた。東京都中体連選抜は「昨春の東京国際ユース(U─14)サッカー大会のために編成されたチーム」(関口剛史監督)で、今回の試合が最後の活動となるだけに、「勝って終わろう」と気合を入れて臨んだ。
  先制したのは東京都中体連選抜だった。18分、狭いスペースの中を古山巧がDFとDFの間を浮き球で通すと、それを受けた池添勘太郎がドリブルでかわし、素早く右足を振り抜く。これが決まって1─0。ゴール前でのアイディアあるパスと狭い場面でボールコントロールが発揮された素晴らしいゴールだった。
  6分に同点とされた東京都中体連選抜だったが、57分、豊富な運動量と積極的なプレーを見せていた小野寺湧紀がこぼれ球を拾うと左足一閃。ペナルティーエリアの外からゴールネットに突き刺さるファインシュートで東京が2─1と勝ち越しに成功する。しかし、勝ち越し後は池添が「バテてしまった」と振り返ったように足が止まったことで猛反撃を浴びてしまう。
  勝ち越しから5分後にゴール前で相手のシュートを跳ね返し切れずに同点に追いつかれると、後半終了間際の69分に左サイドから崩されて土壇場で試合をひっくり返されてしまう。東京都中体連選抜は長身DFを前線に上げてパワープレーを試みるも2─3で試合終了。
  関口監督は「3点のうち2点は自分たちのミスから生まれている。何でもないようなプレーが、国際大会では1点につながることがある。そういうことを感じたと思うし、この経験を高校に行って生かしてほしい」と選手たちにエールを送った。

2点目を決めた小野寺湧紀は、運動量と積極性が光った

一進一退の攻防は、お互い譲らずドロー

正確なパスと展開力で試合を組み立てた橋詰晃
 8月24日の第2試合として開催されたU-18カテゴリー同士の試合には、東京都から東久留米総合高校が出場した。 立ち上がりはフィジカルコンタクトで上回るソウル特別市高校選抜に押し込まれ、9分と速い時間で失点を許した東久留米総合高校だったが、次第に落ち着きを取り戻して反撃に転じる。
 そして16分、フリーキックのこぼれ球をペナルティーエリアの外から森田渉がダイレクトシュート、豪快なゴールを叩き込んで同点に追いついた。
  その後はお互いに勝ち越しゴールを決めることができず、1-1のドローに終わったが、80分間最後まで体と気迫をぶつけ合った試合は見ごたえ十分だった。

来年度の国体に向けて上々の仕上がりを見せる

フリーキックから先制点をもたらした木脇次郎
 来年度の国体少年男子メンバーのベースとなる東京都U-15選抜。8月26日に行われたソウル特別市中学校選抜戦では、22分にDF木脇次郎がゴール左サイドから鮮やかなフリーキックを突き刺し、先制ゴールを決める。 相手の球際の寄せや、プレッシャーを受けても、しっかりとボールをつないでかわす東京都U‐15選抜の質の高いプレーが実ったのは33分、パス交換からフリーでボールを受けた渡辺悠雅がGKとの1対1を落ち着いて沈めて2-0として前半を終えた。
 しかし、後半開始直前発生した落雷の影響で試合は一時中断。その後、気象状況をもとに協議の結果、残念ながら打ち切りとなってしまった。

第66回国民体育大会 関東ブロック大会


少年男子は2年連続日本一なるか

成年男子は「ベスト4」を目指す

成年男子
2011年8月20〜22日 ひたちなか市総合運動公園 陸上競技場・スポーツ広場
 
危なげない戦いぶりで2年連続出場をつかむ
 

朴世訓は豊富な運動量と果敢なドリブルで勝利に貢献
 成年男子が危なげない戦いぶりで〝山口行き〟の切符を手に入れた。栃木県との1回戦では、前半開始早々につかんだPKをキャプテンの岩田啓祐が決めると、その後も2点を加点して3─0で快勝。神奈川県との出場権をかけた2回戦へと駒を進めた。
 「3─0だったが、スコアほどの差はなかった。前半に幸先良く先制できたものの、その後はリズムが悪くて、危ない場面があったし、つまらないミスもあった。そのあたりを修正して臨もうと話した」(漆間信吾監督)
 雨の中で行われた神奈川県戦、東京都は先制を許してしまう。立ち上がりから東京都がボールを支配していたが、7分、鮮やかなミドルシュートを決められ0─1。しかし、「攻撃力には自信があるので、焦ることはなかった」と岩田が語るように、東京都はビハインドになっても焦ることなく、自分たちの得意とするパスをつなぐサッカーを展開。
  同点ゴールが生まれたのは19分、ゴール前での鮮やかなパス交換から中川靖章が落ち着いてシュートを決めた。その3分後には今年から10番を任された岡元思帆がペナルティーエリアの外から豪快なシュートを叩き込み、一気に逆転に成功。
  後半、DF横川達郎が2枚目の警告で退場し、10人になるアクシデントもあったが、MFの加藤宏輝がDFに回るなどピッチ上の選手のポジションチェンジでしのぐと、アディショナルタイムに朴世訓がドリブル突破からPKを獲得。これを岩田がしっかりと決めて3─1で勝利した。
  「昨年は本大会でベスト4に入れなかったので、ベスト4を狙いたい」。2年連続出場に導いた漆間監督は力強く語った。

interview
岩田啓祐
 昨年のチームがベースにあるのでやりやすかった。明るい選手が多くて、みんな仲が良いので、それがサッカーにもつながっていると思う。これだけパスを回せるチームはJFLでもほとんどないと思います。

女子
2011年8月20〜22日 セキショウ・チャレンジスタジアム、つくばアカデミーセンター
 
一方的に攻めながら決められずPK負け


中村ゆしかは迫力あるドリブルで再三の突破を見せた

 まさかの初戦敗退だった。茨城県を相手に一方的に攻め込みながら、ゴールネットを揺らすができず、PK戦に持ち込まれて敗れた。PK戦ではGK鈴木望がセービングしたシュート2本がやり直しを命じられ、決められる不運もあった。 立ち上がりから試合は東京都がボールを支配し、茨城県がカウンターを狙う展開となる。年代別女子日本代表にも名を連ねるFW横山久美、MF中村ゆしかの迫力ある突破から何度もチャンスを作り出す。そして28分、横山のコーナーキックから中村が頭で押し込み、東京都が先制した。
 そのまま1点リードで前半を折り返したが、37分、茨城県に左サイドから崩されると、クロスをGKがこぼしたところを詰められて同点とされてしまう。その後、「ずっと自分たちのペースだったのに、しっかり点数を取れなかった」と冨樫香織が悔やんだように、東京都は何度となくゴールまで迫ったものの勝ち越すことができず。70分の前後半を終え、20分の延長でも決着がつかず、勝負はPK戦へともつれ込んだ。
 PK戦では東京都の1人目、冨樫のシュートが相手GKに阻まれてしまう。その後、茨城県の3人目、5人目のシュートをGK鈴木が見事な反応で止めたが、「シュートを打つ前に動いた」と判断されて、2本ともやり直しを命じられ、2本目のシュートをどちらも決められて勝負は決した。
「決めるところを決めていれば勝てていた。同点にされた後、2点目を取りに行って試合を決めたかったが……。PK戦は不運もあったが、向こうのほうが勢いがあった」と石山隆之監督は語った。
 これで2年連続初戦敗退となった女子。来年こそは歓喜をつかむことを期待したい。

interview
富樫香織
 今年はチームの核になる選手が増えたので手応えはあったし、合宿を通して良いチームになっていたので悔しい。まずは自分のチームに戻って個人のレベルを上げて、来年こそ本大会に出られるよう頑張りたい。
 
少年男子
2011年8月18〜19日 ひたちなか市総合運動公園 陸上競技場・スポーツ広場
 
高木の劇的FKで千葉との激戦を制する


高木大輔が劇的なフリーキックで勝利に導く

 昨年、全国優勝を果たした東京都は2年連続の日本一を目指し、関東ブロック大会の初戦に臨んだ。U─16リーグで1位だった東京都は、初戦で千葉県に勝てば本大会出場が決まる。 前半から東京都は千葉県の激しい当たり、球際の寄せの速さに苦しめられる。7分には中盤でボールを失ってカウンターを食らう場面も。それでも、ピッチを広く使ったボール回しで流れをつかむと、30分に左サイド・川上翔平のクロスボールが直接決まって先制、前半アディショナルタイムには川上のパスから安西幸輝が抜け出し、
GKとの1対1を落ち着いて流し込み2─0とした。
 しかし、後半になると「だんだん足が止まってしまって、バタバタしているうちにやられてしまった」(高木)と、千葉に50分、66分と連続でゴールを決められ、2─2の同点に追いつかれてしまう。延長戦突入が濃厚となった後半アディショナルタイム、ゴール前で東京都はフリーキックを獲得。これを「思い切り打ってどうなるか。イチかバチかだった」という高木が右足で蹴ったボールは、ゴールに一直線に突き刺さった。高木の劇的なゴールで東京都が本大会行きを決めた。
 「チャンスがあったのに決められなくて責任を感じていたので、決められて良かった。」と殊勲の高木。手塚弘利監督も「関東トレセンリーグのときにも高木が最後にフリーキックを決めて勝ったことがあった。何かを持っているということでしょう」と褒め称えた。
 山口県で行われる本大会では前回王者として臨むことになるが、「まずは一つ一つ地道に勝って行きたい」と手塚監督。「どこの県よりもまとまっている自信がある」(高木)東京都が、2連覇を目指す。

interview
高木大輔
 チームが勝ってよかった。このようなゴールを決められたのは、自分のサッカー人生にとっても大きい。全国にはもっといいチームが出て来るし、ちょっとした判断ミスが命取りになるので、危機感を持って戦いたい。


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