試合レポート


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第14回東京都サッカートーナメント 決勝
(第89回天皇杯全日本サッカー選手権大会東京都代表決定戦)
2009年8月29日 東京都・西が丘サッカー場
 


明治大学は2年ぶり3度目の優勝で、天皇杯出場は12回目となる

逆境を耐え抜いた明治大学がPK戦を制して優勝!

 優勝したチームには天皇杯の出場権が与えられる東京都サッカートーナメント。社会人の部、学生の部の上位2チームずつによる準決勝が行われ、東京学芸大学と明治大学が勝利し、決勝は第11回大会以来の〝大学対決〟となった。
 この2チームでは明治大学が〝格上〟だ。東京学芸大学は昨年度のリーグ戦で、明治大学の所属する関東大学1部リーグの下の2部リーグに降格し、今季は「1部復帰」を目指して戦っている。2部リーグにはインカレの出場権が与えられないため、全国の相手と戦える唯一のチャンスである。天皇杯に対するモチベーションは非常に高い。
 前半から東京学芸大学が決定的なチャンスを何度も作り出す。
 24分、中央の鈴木崇文から左の高い位置に開いた征矢貴裕へラストパス。征矢はドリブルからシュートを打つがゴールマウスをとらえられず。今度は29分、鈴木が右に展開し、橋場貴之が中へクロスボールを上げる。ディフェンスラインの裏に飛び出した征矢がダイレクトで合わせたがゴール左ポストに嫌われる。
 後半にも53分にゴール前の混戦からこぼれたボールを征矢がシュートするが今度はクロスバーを直撃。71分にも、鈴木のパスから征矢がこの日4度目の決定機を迎えて、GKとの1対1で股を狙ったシュートは、征矢と東京ヴェルディユースの同期だった高木駿がストップ。72分には、征矢のCKをDF高橋秀人が高い打点で合わせたが、コースがわずかにズレて決まらない。
 90分間ではゴールが生まれずに試合は10分ハーフの延長戦に突入する。97分、明治大学は山村佑樹が2枚目のイエローカードで退場し、1人少なくなって10人でのプレーを余儀なくされる。
「1人退場してPKに持ち込むしかなくなった」(久保裕一)明治大学を相手に、最後まで1点を取りにいった東京学芸大学だったが、延長後半に訪れた、征矢のヘディングシュートが最後の決定的チャンスになってしまった。延長戦20分間でも決着がつかず、勝敗の行方はPK戦に委ねられることになった
 先行の東京学芸大学の1人目が失敗した後、4人目まで両者全員が成功し、「外したら負け」という状況で迎えた東京学芸大学の5人目のキッカーに名乗りを挙げたのはGKの山下渉太。勝利への希望を乗せて打った山下のシュートはゴール右上に外れる――。
 白いユニフォームの歓喜の輪ができ、紫のユニフォームが地面に崩れ落ちる。東京ナンバーワンと天皇杯出場権を手にしたのは1試合を通して劣勢に立たされ続けた明治大学だった。
「ハッキリ言って3点ぐらいは失点してもおかしくなかった。ラッキーとしかいいようがない」。神川明彦監督が正直な気持ちを語ったように、内容面では東京学芸大学に圧倒され、退場者まで出るという苦しい展開で勝利をもぎ取ったのは、過去2回この大会を制してきた〝勝者のメンタリティー〟がチームに備わっていたからだろう。
 明治大学の天皇杯出場は2年ぶり12回目。2年前の第87回大会では初戦(2回戦)でJFLのソニー仙台を撃破し、3回戦で当時J2の京都サンガFCに1―0で勝利するという快挙を成し遂げた。
「一つ勝たないとJリーグとできないので、まずは一つ勝って、明治ありというところを見せたい」(久保)。〝明治旋風〟を今回も巻き起こすことができるのか期待がかかる。

 
 
interview

明治大学
FW 11
久保裕一


内容的には良くなかったですけど、勝てたのは正直にうれしい。 今日はGKのおかげです。 一つ勝たないとJリーグとできないので、まずは一つ勝って、明治ありというところを見せたい。 2年前の再現を狙いたいです。
 
interview

東京芸術大学
GK 1
山下渉太


相手はボールを回すのがうまいので、ある程度ラインを引いて、ショートカウンターを狙っていきました。 チャンスは作れたけど決められなかったところが敗因だと思います。 天皇杯に出たかったので本当に悔しい。
 



2009東京国際ユース(U-14)サッカー大会
2009年5月2日〜5日 東京都・駒沢オリンピック公園総合運動場


優勝したサンパウロFC。勝負どころを見極める戦術眼が光った

10都市12チームの頂点に立ったのはサンパウロFC

「2009東京国際ユース(U―14)サッカー大会」が、5月2日から5日、駒沢オリンピック公園総合運動場で開催された。今年で2回目を迎えるこの大会は、新たに2都市が参加して、10都市、12チームによって優勝が争われた。昨年の第1回大会では、ドイツ・ベルリンから出場したヘルタ・ベルリンが韓国のソウル選抜を下して初優勝を飾った。
 激戦が繰り広げられた今大会の決勝に勝ち上がったのは、ブラジル・サンパウロ市のサンパウロFCと開催地・東京の東京ヴェルディジュニアユースだった。
 先制ゴールは東京V。14分、右サイドを崩した秋田翼からのクロスをゴール中央で高木大輔が右足で見事に合わせた。しかし、この1点がブラジルの名門チームのプライドに火をつける。
 失点からわずか1分後のこと。東京Vに生まれた一瞬の気の緩みを突いて、素早く攻め上がると、右サイドのホベルトからのパスを最後はセルジーニョがシュート。サンパウロFCがすぐに同点にする。
 この時間帯が〝勝負どころ〟だと感じたサンパウロFCはスパートを仕掛ける。18分、1点目のアシストをしたホベルトのパスからパウロ・マルセロが決めて逆転すると、19分にはホベルトのシュートをGKが弾いたところを、またしてもパウロ・マルセロが詰めて、たった5分間で3―1と突き放した。
 サンパウロFCのゴールはどれも東京Vの攻撃を止めたところからスタートしている。守備から攻撃に切り替わった瞬間に複数の選手が素早く走り出して、シンプルにパスをつないであっという間にゴール前まで運んでいく。チャンスを見極める戦術眼が備わっており、ゴールまでの道筋を選手同士が共有しているので、フィニッシュまでが実にスピーディーだった。
 それでも東京Vは25分、エースの高木がゴール前で横パスを受けてシュートを突き刺し、1点差に追い上げる。44分には右サイドバック、青木亮太のポスト直撃のシュートもあったが同点弾は生まれず、3―2でサンパウロFCが勝利し、第2回大会の優勝に輝いた。決勝戦にふさわしい素晴らしいゲームに駒沢陸上競技場のスタンドからは大きな拍手が送られた。
 惜しくも敗れた東京Vの中澤重人監督は「1点目を取ったときは全身に鳥肌が立って『イケる』と思ったんですが……。サンパウロFCは普通のことを普通にやれるところが素晴らしい。この差が広がらないように頑張ります」とコメントした。
 大会アンバサダーを務めた元サッカー日本代表の北澤豪氏は「将来のサッカー界は明るいと試合を見ていて感じました。ここで試合をしたこと、出会ったこと、一つ一つを忘れなければ、これから先、大きな大会でまた出会えるんじゃないかと思います」と語った。
 この大会に参加した全ての選手たちにとって、異国の地で様々な国の選手と触れ合い、サッカーを通じて交流を深めたことは将来の大きな財産になったことは間違いない。この中から2016年に東京都が開催地として立候補しているオリンピック代表選手が誕生することを期待したい。

①タイムアップの瞬間、喜びを爆発させるサンパウロFCの選手たち ②準優勝の東京V・高木大輔。決勝では2ゴールを挙げる大活躍 ③駒沢オリンピック公園・中央広場には天然芝が敷かれ、イベントが行われた ④ハーフタイムにはチアリーディングショーも行われた
 


東京都選抜は5位
貴重な経験積む

 昨年、3位に輝いた東京都選抜は今大会でも健闘を見せた。1次リーグで優勝したサンパウロFCに敗れて、2勝1敗の2位で第2トーナメントに回ったが、ニューサウスウェールズ、モスクワに2連勝して5位で大会を終えた。
 5位決定戦のモスクワ戦で決勝点につながるシュートを放った東京選抜のDF石岡涼(三菱養和SC巣鴨JY)は、「サンパウロの選手たちと仲良くなりました。バスの中で一緒に歌を歌ったりして、すごくノリが良くて面白かったです」とサンパウロFCの選手との交流の思い出を笑顔で語った。
 キャプテンとしてチームをまとめたDF小林慶音(横河武蔵野FC JY)は「一番印象的だったのはサンパウロです。パワーもスピードもあるし、動き方も日本人とは全然違いました。サンパウロの選手からは『サッカーは楽しむことが大事だ』といわれましたね。彼らに負けないようにレベルを上げたい」と新たな目標が見つかった様子。
 東京トレセンから選ばれた今回の東京都選抜のメンバーにとってこの大会は、サッカー選手としてだけではなく、1人の人間としても多くのものを得る機会になったはずだ。

 
 



第64回国民体育大会 関東ブロック大会


失敗から学ぶ
〜ゼロからのスタート〜

(財)東京都サッカー教会 副会長
国体強化プロジェクトリーダー
上野 二三一

今年新潟県で行われる第64回国民体育大会に東京は成年男子、女子、少年男子の3種別とも関東ブロック予選を通過することができませんでした。
 4年後の2013年(平成25年)には東京で国体が開催される予定であり、国体強化プロジェクトを立ち上げ、技術委員会、各種別、トレセン等、東京協会が一体となって国体に取り組む体制を整えたばかりだけに、極めて残念な結果と言わざるを得ません。
 9月の初めに各種別の監督にも参加していただき、今年の活動報告と総括を行い、来年そして将来的な課題について話し合いました。
 各種別の中から共通に出た問題が、監督が選手の所属チームとの調整に非常に苦労して、希望する選手を招集できなかったことが挙げられます。JFL、Lリーグ、大学チーム、Jクラブユースなど個々のチーム事情や監督の方針などの理由で、結果的に選べなかったケースも挙げられました。このことについては東京協会が全体として取り組む必要があります。
 選抜チームの監督をはじめ、指導スタッフは様々な要素を考慮しながら、短期間でチーム作りを行わなければなりません。東京の選手たちは一定レベル以上の技術水準にあり、試合を見ればチームの士気も高く、どの試合も接戦という内容でした。それだけに決定的な仕事ができる選手がもう1人、2人いれば、と悔やまれるところです。
 それぞれの種別を総括すると、成年男子は4年連続して関東予選を落とす結果となりましたが、今年は若手選手や大学生の発掘が進み、フィジカル面を重視したトレーニングの結果、かなりの成果があり、将来に向けての手応えを感じたようです。
 女子は、平均年齢が17歳という若いチームだけに、リーダーシップという課題が残りましたが、埼玉県との代表決定戦では、なでしこリーグ単独のチーム(浦和レッズレディース)に善戦し、これからに非常に期待が持てます。
 少年男子は、トレセンリーグに対する出足の遅れ、厳しい実戦が不足している選手が多かったことから、戦い方の共通理解や役割の徹底が不十分だったことが、千葉県との代表決定戦に出てしまったと思われます。しかし、もし関東の修羅場をくぐり抜けていれば、全国でも上位進出できる力を秘めていたと確信しています。
 それぞれの東京選抜に選手を派遣してくださったチーム関係の皆様、献身的な労力をいただいた指導スタッフの皆様、サポートをいただいた多くの皆様、そして何よりチームの勝利のために全力を尽くして戦ってくれた選手の皆さんに心から感謝申し上げます。
「負けに不思議な負けなし」と言われるように、私たちは失敗から多くのことを学ばなければなりません。そして今年の結果を「将来の東京のサッカー」を創造するための第一歩としたいと考えます。

成年男子
2009年8月15〜17日 千葉県・市原スポレクパーク


狙い通りのゲームも1失点に泣く

 63分、神奈川の右からのCKがゴール前に入る。GK寺地廉がパンチングで弾き出そうとしたがわずかに届かない。神奈川の選手が頭で触ったボールがゴールに吸い込まれる――。東京にとって痛恨の失点は、試合終了7分前に起こった。
 4年ぶりに本大会出場を目指す成年男子が挑んだ関東ブロック大会。対戦相手は強豪・神奈川だった。今年度より監督に就任した山本佳津監督は、「この試合に勝つため」に15人のメンバーを選考し、ゲームプランを立ててきた。
 前半から東京は出だしの良さが目立った。MF加藤正樹が左右にリズム良くボールを散らして、サイドからシンプルにクロスを上げる。このボールに長身FWの山下真太郎が合わせる形から何度かチャンスを生み出していった。
 守備でも球際でしっかりと競り合い、神奈川にチャンスらしいチャンスを与えない。そして、前半を狙い通りにスコアレスで折り返して後半を迎えた。
 後半も前半同様に東京ペースだった。しかし、サイドからクロスを何度となく送るものの、神奈川の堅守に跳ね返されてしまう。
「自分たちのいい時間に点を取れなかったので嫌な感じがした」という加藤の予感は当たってしまう。63分、CKから神奈川に先制を許した。その後、東京はパワープレーから強引にゴールを狙うも万事休す。
 この結果、4年連続で本大会出場を逃してしまった成年男子だが、今年から大幅にメンバーが入れ替わり、若手主体で臨んだチームに希望が見えたのは事実。来年こそは、4年連続敗退という不名誉な記録に終止符を打ってもらいたい。

interview


加藤正樹

チャンスは結構作れていたと思うんですが……。CKから失点した時間帯は運動量が落ちていた。4年連続で全国大会に出られていないので、来年こそ出場したい。若いのでまたこのメンバーで頑張りたい。

 
女子
2009年8月15〜17日 千葉県・習志野市秋津運動公園サッカー場


若手主体で望むも千葉、埼玉に敗れる

 前年度、宿敵・千葉に勝利して本大会出場を果たした女子は、1回戦で茨城に2─1で勝利。出場権のかかった2回戦では、またしても千葉と当たることになった。
 平均年齢17歳という、高校生主体のメンバーで臨んだ東京は、立ち上がりから積極的なプレーを見せる。DFラインを高く保って、高い位置からプレスをかけていく。
 だが7分、右サイドを崩されてクロスを入れられると、2列目から走り込んだ千葉の選手に先制点を決められてしまう。「スピードのある選手が前にいるので、ゾーンのマークの確認をやってきたんですが、1対1でやられましたね」と石山隆之監督が振り返るように、全体を通じて1対1で劣勢に回る場面が目立った。
 その後もひるまずに攻めた東京だったが、前半終了間際の34分、またして左サイドからのクロスをヘディングで決められ、2点差で前半を折り返す。48分、直接FKから3点目、54分にも1点を追加されて0─4。東京は埼玉との代表決定戦に回ることになった。
 なでしこリーグに所属する浦和レッズレディースの単独チームである埼玉が有利という下馬評の中、東京は大健闘を見せる。だが、あと一歩力及ばず、0─1の最小得点差で敗れて関東ブロック大会敗退となった。
 千葉戦終了後、キャプテンの松原萌が「一人ひとりがもうちょっと戦えていたら、こんなには差が離れなかったんじゃないかと思います」と敗因を語っていたが、翌日の埼玉戦ではメンタル面の改善が見られたのは大きな収穫になったといえるだろう。
 石山監督が千葉戦後に「相手は単独チームで、ウチは選抜チームなのでチーム作りから差があるのは事実」と語ったように、東京の課題は短期間でチームが一つになることではないだろうか。

 
interview


松原 萌

一人ひとりがもうちょっと戦えていたら、こんなには差が離れなかったんじゃないかと思います。2点差の時点ではみんなもまだいけると思ってたけど、3点目を取られたときにガクンとなってしまった。(千葉戦終了後)

 
少年男子
2009年8月18、19日 千葉県・市原スポレクパーク
 


山梨に快勝するも千葉の壁に阻まれる

 成年男子、女子が関東ブロック大会で敗退し、最後の希望となった少年男子は山梨との初戦に臨んだ。
「立ち上がりは監督からも積極的にいけといわれていたので、そこで1点取れたのが勝利につながったと思います」と田鍋陵太が振り返ったのは開始2分のゴール。
 右から田鍋→北出雄星→右高静真とつないで、オーバーラップしてきた左サイドバックの村松知稀にパス。これを村松が思い切り良く振りぬくと、ゴール右スミに突き刺さった。その後も東京はピッチをワイドに使った攻撃でチャンスを作った。
 山梨の個人技に手を焼く場面も見られたが、数的優位を作って対処すると、26分、田鍋の「センタリングのつもり」で上げたボールがGKのファンブルを誘って追加点をゲット。
 後半も、必死に攻めてきた山梨の攻撃を全員で耐えて、相手が〝攻め疲れ〟したところで途中交代の橋本拳人が2ゴールを決めてダメ押し。4─0で山梨を下して代表決定戦にコマを進めた。
 翌日の代表決定戦では開催県の千葉と対戦。岩本慎二郎監督は「この前のトレセンリーグでは0─3で負けているから、リベンジしたい。千葉がどうこうより、ウチが目指している切り替えの早いサッカーをどれだけできるか。どっちかわからないボールをどれだけ自分たちのモノにできるか。それができれば勝機は十分にあると思っています」と抱負を語っていたが、接戦の末に0─1で敗れて、2年連続出場は果たせなかった。
 少年男子が16歳以下のカテゴリーで行われるようになって4回目のこの大会。一昨年に全国優勝を達成したことからもわかるように、東京は全国トップクラスのポテンシャルを秘めている。来年度こそは全国の舞台に立つことを期待したい。

 
interview


田鍋陵太

ホッとしました。立ち上がりは監督からも積極的にいけといわれていたので、そこで1点取れたのが勝利につながったと思います。明日の相手の千葉は、すごく寄せが早い。もっとボールを早く動かしたい。(山梨戦終了後)

 




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