試合レポート


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少年
ドリパクフェアプレーカップ
第26回東京都少年ジュニアサッカー大会
2007年11月17日(土)、18日(日) 東京都・府中市少年サッカー場
 


サッカーを好きになってもらう
勝ち負けよりもそれが大事

 雲ひとつない晴天に恵まれた11月17日。府中市少年サッカー場では、色とりどりのユニホームに身を包んだ少年たちが、元気一杯にサッカーボールを追いかけていた。

 1982年から始まった「東京都少年ジュニアサッカー大会」は今年で26回を数える。11月17日、18日に開催されたこの大会に参加したのは、48チームの小学3、4年生。
 この大会の目的は、勝ち負けとは別のところにある。それは、子どもたちにサッカーを好きになってもらうこと。
 3、4年生、つまり10才、11才という年齢は、肉体的にも精神的にも大きく成長する重要な時期で、この期間に基本的なテクニックのほとんどが養われるといっても過言ではない。サッカーの世界では”ゴールデンエイジ“とも呼ばれる、この年代でのプレー経験が、サッカー選手としてのその後に及ぼす影響力は計り知れない。
 それゆえに、少年連盟では大会方式にさまざまな工夫を凝らしている。
 最も大きな点は8人制で行われることだろう。8人制の大会になったのは第13回大会から。これは全国的に見てもかなり早いほうだったという。
 8人制サッカーは人数が少なく、ピッチが狭いので一人ひとりのボールに触る機会が必然的に増える。また、ピッチが狭ければ1対1など相手がいる状況でのプレーがたくさん生まれるのも大きい。味方のゴールも相手のゴールも近いので、攻撃も守備も両方に参加しなくてはいけない。
 いろいろなポジションをやってみて、どこが自分に向いているか、どんなプレーが得意で、苦手なのかを感じることも、この年代にとっては大事なことなのである。
 また、大会側はチームの監督、コーチなどの指導者になるべく全員が出場させるよう呼びかけている。勝負にこだわるあまり限られた選手ばかり出場させるのではなく、一人でも多くの子どもにサッカーの楽しさに触れてもらうために、技術や体格に差があってもチャンスを与えることが必要だからだ。
 主審のみの1人制の審判で行われるのもこの大会の特徴だ。副審がいないのでオフサイドかどうか、タッチラインを割ったかどうかの判断をするのが難しい場面もある。そのようなときは選手が自ら、アウトボール、反則、オフサイドなどを審判に申告する。
 そして、自分が接触して相手が倒れたら審判にアピールする、痛んだ選手が起き上がるのを手伝ったり、遠くに飛んでいった相手ボールを拾ったりする、そのようなフェアプレー精神、競技者同士の助け合いに対しては審判から「グリーンカード」が出される。

 2日間に渡って行われた大会の表彰式。チームごとに並んだ子どもたちの顔には、うれしそうな表情、悔しそうな表情が入り混じっていた。チーム表彰と個人表彰が行われたが、いちばん大事なのは自分がサッカーを楽しくやれたか、サッカーが好きになったかどうか、である。ここにいる総勢727名の”ゴールデンエイジ“たちのサッカー人生は、まだ始まったばかりなのだから。

 



中学
第51回東京都中学校サッカー新人大会
決 勝
2007年12月15日(土) 東京都・大井第二球技場

神代攻撃陣抑えて 暁星、2連覇達成!

 2連覇を狙う暁星と、3年前の覇者・神代がぶつかった第51回東京都中学校サッカー新人大会の決勝は、1点を争う緊迫した試合となった。
 前半から暁星は全員が連動した組織的なプレスディフェンスと、奪ってから素早く前にボールを送るカウンター攻撃を主体に神代ゴールに迫っていく。
「今年のチームは例年よりも技術的には落ちるが、スピードはある」と荒木弘監督が語るように、暁星は守備では寄せの速さ、攻撃では展開の速さが際立っていた。
 一方の神代はFWの那珂通是とトップ下の北川竜二の、創造性溢れる個人技と、テンポの良いコンビネーションでここまで勝ち上がってきたチーム。
 チームを率いて4年目となる辻義治監督のコンセプトは「伸び伸びと思い通りにやらせる」というもの。「自分たちで実戦を戦う中で、いろいろなことを学ぶ」ことを大事にしているからこそ、那珂や北川の個人技も飛び出すのだろう。
 後半もお互いにチャンスがありながら決められない中、試合を決定付ける1点が入ったのは、タイムアップまで残り4分となったとき。決めたのは暁星だった。CKを撥ね返した神代のDFラインが押し上げようとしたタイミングで、武藤靖治がゴール前に浮き球で押し戻す。これが山田滉大へつながる。「オフサイドだ」と思った神代の選手はプレーを止めてしまう。突然訪れたGKとの1対1の場面だったが、山田はゴール左スミへ落ち着いて蹴り込み、ゴールネットを揺らした。
 一瞬のスキを突いてゴールを奪った暁星がこのまま逃げ切り、1-0で勝利して2連覇を飾った。暁星は守備の意識を選手全員がもって失点1で大会を終えた。
 神代としては、「自分たちで勝手に判断して、オフサイドで止まってしまった」(辻監督)ことで痛恨の失点を喫したのが悔やまれるところ。それでも、42分に那珂が右サイドで相手の頭上を浮かせる”シャペウ“と呼ばれるフェイントを見せたように、自由な発想から生まれるプレーは賞賛に値するものだった。

 
 
準 決 勝
神代中学校 2 ( 2-1
0-0
) 1 東村山第四中学校

開始9分で3ゴール!
神代・那珂が大活躍

 試合はいきなり動く。開始50秒、左サイドを突破した那珂が上げたクロスに山田高太郎が頭で合わせて、神代が先制する。
 だが、東村山第四はすぐさま同点に追いつく。失点から約1分後だった。中野淳の右サイドからのクロスを、ゴール前で待っていた渡辺駿が右足で叩き込んで1-1に。
 勝ち越し点は早くも9分に生まれる。1点目をアシストした神代・那珂が、今度は右サイドから切れ込むと、ペナルティーエリアの外から豪快にミドルシュート。これがゴールに突き刺さった。
 後半、東村山第四は猛反撃に出るが、神代の守備陣が球際でしっかり体を寄せて決定的なピンチを作らせない。結局、9分までに決まった3ゴールがこの試合の全得点となった。

 
準 決 勝
暁星中学校 3 ( 2-1
1-0
) 1 日本大学第三中学校

危なげない試合運び
連覇まであと1勝!

 4分、左サイドからの折り返しを寺松悠輔がニアで受けて左足シュート。これが逆サイドネットに突き刺さり、暁星が幸先良く先制する。
 それでも日本大学第三は8分、吉村佳斗が塩澤史也からのスルーパスをファーストコントロールで中に切り返し、ゴール左スミへとシュート。4分でビハインドを取り返す。
 それでも暁星は失点から5分後の13分、CKをニアで寺松がコースを変えて2点目。2-1として前半を折り返す。
 後半はこう着状態となったが、暁星が残り3分のところで、ゴール前で山田がキックフェイントで相手をかわして決定的な3点目をゲット。
 前年度王者・暁星が危なげない試合運びで決勝進出を果たした。

 



高校
第86回全国高校サッカー選手権大会 東京都大会
決 勝
2007年11月17日(土) 東京都・西が丘サッカー場
 

帝京、5年ぶりに東京都大会を突破!

 帝京が5年ぶり32度目の全国大会出場を果たした。帝京サッカーの黄金時代を築いた古沼貞夫前監督から、現在の廣瀬龍監督にバトンタッチして5年目。帝京が全国の舞台に返り咲いた。
 だが、前半は初出場を目指すつばさ総合の「フレッシュで、大胆なサッカー」(廣瀬監督)に苦しめられた。「関東大会やインターハイには東京都代表として出場しているが、この西が丘(サッカー場)での決勝は特別な雰囲気がある。選手たちにはいろいろなプレッシャーがあったと思うし、ちょっと堅かったかな」と廣瀬監督は振り返る。
 立ち上がりからロングボールを中心にゲームを優位に展開したのは、帝京のほうだった。15分までに何度か決定機をつかんだが、決めることができない。
 逆に19分には、ゴール前でのクリアミスを相手FWに拾われ、あわやという場面も。つばさ総合は、その後もハーフライン手前から思い切ってロングシュートを狙っていくなど、伸び伸びとしたプレーを披露する。
 前半を0-0で終えると、ハーフタイムに廣瀬監督は「ボールが動いていない。チームでシンプルに運ぼう」と声をかけた。
 後半のピッチで帝京イレブンはその言葉を体現する。45分、右サイドで3人が絡んでの崩しから、新裕太朗がクロスを上げる。これをファーサイドで奥山慎がボレーシュートで決めて、帝京高校が待望の先取点を奪った。
「1点では安心できない」(廣瀬監督)と、帝京は先制後も貪欲にゴールを狙い続け、65分にはCKから浅田大樹のヘディングが決まって2-0。「2点目で余裕が生まれてきた」と廣瀬監督がいうように、帝京は試合終了までの15分間を落ち着いたパスワークで乗り切り、つばさ総合の攻撃をシャットアウトした。
 「全国制覇」を目標に掲げて臨んだ全国大会では、惜しくも2回戦敗退。それでも、帝京が復活への確かな足がかりをつかんだのは間違いない。この経験を糧に一回り大きくなったとき、”強い帝京“が帰ってくるはずだ。

 
 

三鷹、2年越しの初出場
白熱の大接戦を制す

 どちらが勝っても初出場という早稲田実業と三鷹による決勝は、最後まで目が離せない好ゲームになった。
 前半、三鷹は、キャプテンの北見拓也を中心に早稲田実業ゴールへと迫っていく。
 一方の早稲田実業は攻め込まれながらも、最後のところで守備陣が踏ん張り、ゴールを許さない。前半はどちらにもゴールが生まれず、0-0のスコアレスのまま折り返す。
 後半になると、三鷹のサイドバックは前半よりも高い位置を取るようになった。「前半は抑えていたけど、後半から上がっていいよ、と」(山下正人監督)オーバーラップを”解禁“。特に右サイドバックの林真人の攻め上がりによって、攻撃は厚みを増した。
 先制点が決まったのは54分、2年前の決勝で敗れたときに1年生として出場、「先輩たちの分まで頑張ろう」と”リベンジ“を誓っていた北見だった。吉野康次朗とのワンツーからディフェンスラインの裏へ抜け出すと、落ち着いてゴール右上へシュート。
 59分には、ゴール前に蹴り込まれたFKを、混戦の中で林が触って2点目を挙げる。三鷹が初出場をグッと手元に引き寄せた。
 だが、ここから早稲田実業が猛反撃を開始する。64分、左CKから片桐卓のヘディングしたボールがゴールネットを揺らして1点差に。この1点で一気に活気づく早稲田実業は、ポジションに関係なく攻め上がり、シュートチャンスを何度も迎える。
 これに対して「最後の10分はメチャクチャ硬かった。僕も含めて」(山下監督)という三鷹は、焦ってボールを前線に蹴り出しては、相手に拾われ波状攻撃をくらうという苦しい時間が続く。それでもロスタイム、早稲田実業のCB、キャプテンの世良俊和のボレーシュートが枠を外れると、タイムアップの笛が鳴った。三鷹の初出場が決定した。
 全国大会の開幕戦に登場し、見事勝利した三鷹は、その後も勝ち進みベスト8進出。”三鷹旋風“と呼ばれるほどの鮮烈な印象を残した。


 




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