試合レポート


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第12回 東京都サッカートーナメント
決 勝
2007年9月2日(日) 東京都・西が丘サッカー場
明治大学、9年ぶり2度目の優勝!!

9月2日、第12回東京都サッカートーナメントの決勝が西が丘サッカー場で行われた。6年ぶりに社会人対大学生の組合せとなったゲームは明治大学が1-0で勝利。この結果、明治大学は東京都代表として第87回天皇杯に出場する。

 


ゲームプラン通りの勝利
途中出場の長友が決勝弾

 明治大学がFC町田ゼルビア(以下ゼルビア)を1-0で下し、9年ぶり2度目の東京都サッカートーナメント優勝と、9年ぶり11回目となる天皇杯出場を決めた。
 明治大学にとっては会心の勝利だった。神川明彦監督は試合前に選手たちにこのような指示を出したという。「相手は前半からゴールを狙ってくるはず。最初の15分を耐えろ。そして、前半は0-0で帰って来い。恐らく60分過ぎから落ちてくるだろうから、そこから勝負を仕掛けよう」。
 悲願の天皇杯初出場を目指すゼルビアは、前半から積極的に攻め込んでいく。その中でも明治大学の脅威となっていたのが、185センチの大型FW船山翼だった。ゼルビアはこのターゲットマンへのクロスで、明治大学ゴールを何度も脅かす。
 前半ロスタイムには右サイドからのクロスにフリーでヘディングシュート。「完全にやられたと思った」(神山監督)。だが、ボールはバーの上に外れてしまう。この決定機を逸したことがゲームの分かれ目になった。
 昨年は法政大学のメンバーとしてこの大会で優勝を経験し、今季からゼルビアに入団した雑賀友洋はいう。「相手は大学生だから走れる。それが社会人の僕らといちばん違うところ。前半あまり来なかったから、後半に来るだろうなとは思っていた。チームとしてこういう舞台が初めてだったので、いつもより飛ばしてしまった」。
 試合前の神川監督の「相手は後半落ちてくる」という読みは的中した。ゼルビアの選手たちの足は後半開始早々に止まってしまう。攻撃時の押し上げがなくなり、自陣に引きっ放しになり、明治大学が一方的にボールを回す展開になった。
 ここで神川監督が動く。62分、腰痛でベンチスタートだったU-22日本代表候補の右サイドバック・長友佑都をピッチに送り込んだのだ。「勝負を仕掛ける合図が、長友の投入だった」(神川監督)。
「0-0だったので点を入れさせないことをまず考えながら、自分の持ち味の攻撃参加をやろうと思っていた」という背番号2は、右サイドでの精力的なアップダウンで明治大学の攻撃を活性化させた。
 そして79分、長友が大仕事をやってのける。橋本晃司からのサイドチェンジのボールを右サイド深くで受けると、ゴール前にグラウンダーのボールを入れる。これがGKに当たって、ゴールイン。「あれはクロスです。林(陵平)が走り込んで来ているのが見えたので。いつも練習している形なんです。でも、GKとDFの間に速いボールを蹴り込めば、FWが押し込んだり、敵に当たったりすることがある。相手にとっては嫌なボールだと思います」(長友)。
 失点後、ゼルビアは途中出場のFW柏木翔一がドリブルで果敢に仕掛けていくも、ゴールをこじ開けることはできず。ゼルビアは今季の公式戦で初めての敗戦を喫することになった。
 神川監督が「できすぎです」と驚くほどに、ゲームプラン通りの勝利を手にした明治大学。今季は流動性のあるサッカーにチャレンジし、「東京一」という結果を出した。天皇杯について長友は「苦しい時間帯もあるだろうけど、大学生なりのチームワークで戦っていければチャンスはあると思う」と語った。9月23日、明治大学はこの日と同じ西が丘サッカー場で天皇杯2回戦に臨む。


  


 



U-15
東京-ソウル親善サッカー定期戦2007
2007年8月30日(木) 東京都・西が丘サッカー場

最小得点差ながらも攻守ともに充実の内容

 クラブチームから選出された東京都U-15選抜は、「試合前に顔合わせをしたばっかりです」(小林祐希)と言うように、チームとして戦うのはこの試合が初めて。だが、彼らは2日前に東京都中体連選抜が1-7と大敗したソウル特別市中学校選抜から、1-0で勝利を飾った。
 東京ヴェルディ1969ジュニアユースから8人が選ばれ、そのうち6人がスタメンに名を連ねた。
「ポゼッションを握りたかったので、ボールを扱える選手を集めた」(坂井千明監督)というメンバー選考の方針は、ピッチに反映されていたといっていい。ソウルが中盤で激しくプレッシャーをかけてきても、大きく蹴り出すことはせず、ショートパスやドリブルを使って中央から攻め崩した。「もうちょっとサイドからも攻めたかった」と坂井監督は課題を口にしたが、”ぶっつけ本番“としては上々の出来だったといえるだろう。
 決勝ゴールが決まったのは42分、ゴール中央でパスを受けた小林が、緩急をつけたドリブルで左方向へ敵をかわすと、ペナルティーエリア手前から左足を振り抜く。
「味方が走り込んでいたので、最初は(パスを)出そうと思ったけど、敵の重心がパス方向に傾いていたから、かわして打とうと思った」というシュートは、GKの伸ばした手の先を抜けて右サイドネットに絡まった。小林は「理想通りです」と顔をほころばせた。
 パスサッカーの中にも、シュート意識の高さは感じられた。多少遠目からでもゴールが見えたら打っていく――。小林のゴールもそんな思い切りの良さから生まれたものだといえるだろう。
 また、左右に張り出したウィングを使って、サイドからのクロスやカウンターを仕掛けてきたソウルの攻撃にも、東京は櫻岡徹也とキローラン木鈴のCBコンビがしっかりと対処。「危ない場面はほとんどなかったと思う」(坂井監督)。
 このチームが来年度の国体少年男子のベースになるのは間違いない。もっと点差がついてもおかしくない内容だっただけに、「決定力を高めていく」(小林)ことは今後の課題となるだろう。




U-18
東京-ソウル親善サッカー定期戦2007
2007年8月30日(木) 東京都・西が丘サッカー場

前半終了間際の2得点が決め手

 40分ハーフの前半は、ソウル特別市高校選抜の1点リードのまま折り返そうとしていた。だが、残り2分を切ったところで、突如として修徳高校の攻撃力が爆発する。
 38分、ボランチの原拓也がセンターサークル付近から出したスルーパスが、高めにラインを敷いていたソウルDFの裏を突いた。右MFの西谷一樹が中に入り込みながらパスを受けると、GKとの1対1を落ち着いて流し込み、同点弾をゲット。
 勝ち越し点が決まったのは、それから1分後のこと。時間はすでにロスタイムに入っていた。FW目黒翔大がゴール中央で敵を背負った状態から、パスを受けると同時に右方向へ振り向いてシュート。ファーストコントロールでフリーの状況を作り出した目黒の技術が光った。
 修徳高校の向笠実監督が「最初にミスで失点してしまって、相手に優位にゲームを運ばれたが、前半の最後に逆転できたことが大きかった」と語るように、この2得点によってソウルペースだったゲームの流れは劇的に変わった。
 ソウルのチェ・スンホコーチはハーフタイムに4人を入れ替え、後半5分には5枚目のカードを切った。積極的なメンバーチェンジには、失ってしまった前半の勢いを取り戻したいという狙いがあったのではないだろうか。
 しかし、後半はリードしたことで落ち着きと余裕が出てきた修徳高校のパスワークが冴え渡り、64分にはダメ押しの3点目が生まれる。このゴールはサイドから来たパスを中央の原がダイレクトで縦に入れ、CB2人の間に入り込んだ目黒が決めたもの。目黒は「原からいいパスが来たので決めるだけだった」と語ったが、ワンタッチで出した原の判断力と、目黒の質の高い動き出しの2つが組み合わさったファインゴールだった。
 高校サッカーの名門・修徳高校だが、昨年は高校選手権の出場を逃している。これから予選を戦う修徳にとっては、「球際が激しくて、競り合いを怖がらない。日本の高校生よりも執着心がある」(目黒)というソウルとの対戦は貴重な経験になったに違いない。




第62回 国民体育大会 関東ブロック大会 サッカー競技

少年男子、2年ぶりに全国の舞台へ

「第62回 国民体育大会 関東ブロック大会 サッカー競技」が8月11〜13日に成年男子、女子、8月21・22日に少年男子が埼玉県で行われた。一昨年は総合優勝に輝いたが、昨年は一転して全種別で関東大会敗退。雪辱を誓って臨んだ今年は、3種別の中で少年男子が出場権を獲得、9月30〜10月4日に行われる「秋田わか杉国体 サッカー競技」に出場する。なお、女子は出場権を獲得したものの一部選手の参加資格不備によって辞退した。

 
成年男子
2007年8月11日(土)〜13日(月) 埼玉県・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場 他

泥臭くチームとして戦い最後まで千葉を脅かす

 初戦の相手は、メンバー15人中14人がJFLのジェフリザーブズに所属する千葉。同クラブ所属ということで連係面にも不安のない千葉は、キックオフ直後からワンタッチ・ツータッチの速いパスワークで中盤を圧倒した。
 押される展開となった前半5分、東京はペナルティーエリア内で千葉FW渡邉健雄の足を引っかけてPKを与えてしまう。「シンプルにボールを動かして失点をしないように。前半を1-0で終える」(東京・嶺岸浩二監督)というプランで臨んだ東京にとっては大誤算。さらにその後も豊富な運動量を誇る千葉に対して追加点を許し、前半を0-2で折り返す。
 後半、「ウチにマラドーナのような選手はいない。みんなで泥臭く戦うチーム」と言うキャプテン・川村亮介の言葉通り、東京の全員反撃が始まった。川村率いる東京DFの必死の守りは千葉をシュートまで持ち込ませず、ボランチの河内智史を基点とした東京のカウンターアタックが牙をむく。
 後半27分、東京は自陣で奪ったボールを素早く展開し、FW鶴岡学がドリブルで右サイドへ切り込んでクロス。これを途中出場のFW内山淳一がニアサイドで合わせて1-2と迫る。遅すぎる追撃弾にも見えたが、まだ東京は諦めない。32分には河内が判断良くキーパースローをインターセプトしてクロス。これを前線に上がっていたDF岩間耕平がボレーで狙うが、ボールは惜しくもGKの正面を突く。延長戦も見え始めたところだったが、試合はここでタイムアップの笛を迎えた。「今年は核となる選手がいない」(嶺岸監督)という東京だったが、チームとして最後まで可能性を見せてくれた。

 
interview


成年男子
DF
川村亮介

国体はこれで5回目です。他チームの選手とコミュニケーションを取れるのが選抜の良いところ。ひとつ上のJFLでプレーする選手が相手だったが、その中でできることをやれたと思う。

 
女 子
2007年8月11日(土)〜13日(月) 埼玉県・越谷しらこばと運動公園 他

悪夢の連続失点…… 千葉へのリベンジならず

 1回戦で栃木に5-1で快勝した東京は、千葉とのゲームに臨んだ。千葉は昨年の関東ブロック大会で敗れている相手。そのときとは東京も千葉もメンバーはほとんど変わっていない。東京にとっては絶好の「リベンジ」のチャンスとなった。
 立ち上がりから積極的にプレーする東京は、8分、右サイド・斎藤有里からのクロスをFW吉川紗代が頭で合わせて幸先良く先制する。しかし15分、千葉の要注意選手である清水由香に、カウンターから同点ゴールを決められてしまう。
一進一退の展開で迎えた53分、勝ち越し点を決めたのは東京だった。海老沢有香のパスから斎藤が抜け出し、GKとの1対1を決めて2-1。
グッと勝利を引き寄せたかに見えたが、その5分後、千葉のMF大澤江梨子に特大のロングシュートを決められまたも同点に。「2点目をやられてから、チーム全体の流れが悪くなって、ドドドッと3点目を入れられてしまった」とキャプテンの山本りさが振り返るように、それから4分後の62分、右からのクロス気味のボールをGKがキャッチしきれず、痛恨の3点目を献上してしまった。1年前の雪辱を果たすことはできなかった。
 敗れはしたものの、東京の奥山靖彦監督は「ボールを大事にプレーするというやり方は間違っていない」と手応えを口にした。実際に東京の2ゴールはどちらもクロス、スルーパスから決まった狙い通りの形から生まれている。
 この翌日、東京は神奈川との最後の椅子をかけての出場決定戦に3-0で勝利し、「秋田わか杉国体」への出場権を獲得した。
 ※一部選手の参加資格不備により出場辞退

 
interview


女子
DF
山本りさ

流れがこっちとあっちとで行き来したようなゲーム展開でした。いいところで決めきれなかったのと、失点後に落ち込んでしまって、立ち直るまで時間がかかってしまったのが敗因です。

 
少年男子
2007年8月21日(火)・22日(水) 埼玉県・埼玉スタジアム2002第2グラウンド 他

東京から息吹きつつある魅力溢れる個人の力

 昨年、神奈川と埼玉の両チームに敗れて国体の出場権を逃がしている少年男子。東京のキャプテン、DFの高橋拓也は早生まれにより昨年の悔しい敗退を経験している選手だ。この日は埼玉へのリベンジを果たすべく、序盤からアグレッシブな戦いでゲームに入った。
「前線からボールを追い、高い位置でボールを奪って攻める」(田中康嗣監督)という作戦通り、東京は素早いプレスを仕掛けていく。前半15分、DFの動きを読んでボールを奪ったFW重松健太郎が、右サイドから縦に持ち込んで中央へ折り返す。このボールをFW山口潤が軽く合わせて東京が先制ゴール。その後は19分の埼玉・原口元気、28分の東京・高木俊幸と、両チーム共にDFの処理ミスを突いて得点。前半は2-1の東京リードで折り返す。司令塔の原口を中心としたパスワークが特徴の埼玉に対し、東京はピチピチした個人の力が冴え渡るサッカーを展開した。
 後半に入っても東京の勢いは止まらない。3分には相手CKのカウンターからPKを獲得。これをMF玉城峻吾が決めて3-1。その6分後には埼玉にPKを与えてしまうが、GKの原田祐輔がビッグセーブ。これで流れを引き戻し、終盤にさらに1点を追加した東京が埼玉を下した。
「攻撃も守備も、流れの中で選手たちの判断に任せた。システマチックにやりすぎると、駆け引きの意識がなくなってしまう」(田中監督)という言葉が印象に残る。アジアカップの敗戦以降、個の力を育てることが重要視されている日本サッカーだが、その新しい成長の息吹きを、今日の東京チームの中に確かに感じることができた。

 
interview


少年男子
FW
重松健太郎

前線から追っていくことができました。持ち味はキープ力と前を向いてシュートを打つこと。今日はどんどん走って、暑さに負けないようにしました。これぐらいの運動量なら平気です。




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