試合レポート


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第15回東京都サッカートーナメント 決勝
(第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会東京都代表決定戦)
2010年8月28日 東京都・西が丘サッカー場
 


2種(高校生)のチームとして初めて東京都代表になった東京ヴェルディユース

東京ヴェルディユースが 延長戦を制して優勝!

 天皇杯の出場権をかけて行われる東京都サッカートーナメント決勝。第15回の今回は「社会人の部」よりJFL所属の横河武蔵野FC、「学生の部」からは強豪大学を撃破してきた東京ヴェルディユースのカードとなった。東京ヴェルディユースが勝てば史上初の高校生チームの天皇杯出場。横河武蔵野FCからすれば社会人としてのプライドにかけても負けられない。真夏の夜の熱戦がスタートした。
 「試合前に話したのは東京ヴェルディのユースと戦うんじゃなくて、『東京ヴェルディ』のつもりで戦おうということ。気の緩みはまったくなかった」と横河武蔵野FCの依田博樹監督が語ったように、立ち上がりから気合い十分。横河武蔵野FCはDFラインの背後にシンプルにボールを送り込み、スピードと高さのある2トップを生かすサッカーを展開した。
 それが実ったのは前半ロスタイムだった。人数をかけて攻め込んだ東京ヴェルディユースの攻撃をゴール前で食い止めると、前線に素早くフィード。パスを受けたFW冨岡大吾がスピードでマークを振り切り、左サイドから左足でグラウンダーのシュート。これが右のサイドネットに吸い込まれ、理想的な時間帯で横河武蔵野FCが先制する。

 

前半ロスタイム。横河武蔵野FCが冨岡大吾のゴールで先制する
 

 高校生チームであれば、前半終了間際に先制されれば、慌ててしまってもおかしくはない。だが、東京ヴェルディユースはハーフタイムに「0―1という現実を受け入れて、もう1回頑張ろう」(楠瀬直木監督)と気持ちを切り替えて臨んだ。
 すると後半開始直後の48分、10番の小林祐希が右サイドから中央に侵入し、相手の注意を引きつけてから左足でスルーパス。完全に裏を取ったFW南部健造がファーストコントロールでGKをかわし、落ち着いて流し込む。前半の失点から気持ちを切り替えた東京ヴェルディユースが早い時間で同点に追いついた。
 後半は横河武蔵野FCのカウンターと東京ヴェルディユースのボール回しが真っ向からぶつかりあう。お互いにチャンスを作るも決められず20分間の延長戦へ突入する。
 横河武蔵野FCが勝つのか、それとも東京ヴェルディユースが勝つのか――。
 決勝戦にふさわしい熱戦に終止符が打たれたのは97分。東京ヴェルディユースは、左サイドからカットインした南秀仁が右サイドにパスを送る。山浦新が正面の相手を切り返しでかわしてミドルシュート。このシュートがGKの手を弾きながらネットを揺らした。その後の横河武蔵野FCのパワープレーを跳ね返して2―1でタイムアップ。東京ヴェルディユースは2種(高校生)のチームとして初めて東京都サッカートーナメント優勝、そして天皇杯出場権獲得という快挙を達成した。

 

延長前半の97分、東京ヴェルディユースの山浦新が
鮮やかなドリブルシュートで勝ち越しゴール
 

 東京ヴェルディユースの楠瀬監督は「南部や山浦のように、トップの試合にも絡んでいない、年代別代表にも選ばれていない、だけれども、地道に頑張り続けてきた選手たちがこういう場所で活躍してくれたことがうれしい」と目を細めた。
 敗れた横河武蔵野FCの依田監督は「背後のスペースを狙いどころにしていて、前半まではうまくいっていたが、後半はやり方が単調になり過ぎてしまったのかなと思います。もっとボールを動かしていければ違った結果になったかもしれない」と悔やんだ。
 9月3日、東京都代表として天皇杯に臨んだ東京ヴェルディユースは、総理大臣杯優勝による大学シード枠で出場した駒澤大学と1回戦で当たった。0―1で惜しくも敗れたが、東京ヴェルディユースらしい細かいパスワークと強い団結力で、たくさんのサッカーファンに感動を与えた。

 
 



2010東京国際ユース(U-14)サッカー大会
2010年4月29、30日、5月1、2日 東京都・駒沢オリンピック公園総合運動場


優勝の喜びを爆発させるヴェルディ

ヴェルディが会心の勝利! 前回大会の悔しさを晴らす

 ヨーロッパ、南米、アフリカ、アジアの8都市と開催地・東京から出場した12チームによって行われた「2010東京国際ユース(U─14)サッカー大会」。数多くの熱戦が繰り広げられた大会のラストを飾ったのは東京ヴェルディとコリンチャンスだった。
 ヴェルディvsブラジルという顔合わせは昨年と同じ。前回大会ではサンパウロFCがヴェルディに勝って優勝しただけに、今年のチームは「去年の悔しさを晴らしたい」と並々ならぬ気合いを入れて臨んでいた。
 開始わずか45秒、ヴェルディの選手たちの気持ちがゴールという形で表れる。右サイドの安在達弥からのクロスをファーサイドで室町仁紀が詰めて、電光石火の先制点を挙げたのだ。24分には、1点目と同じように右サイド・室町からのクロスに青戸翔がダイビングヘッドで合わせて2点目をゲットした。
 しかし後半、コリンチャンスが反撃の狼煙を上げる。38分、コリンチャンスのFWカイッケがDFラインの背後にうまく抜け出すと、GKとの1対1を落ち着いて決めて1─2。
 コリンチャンスの反撃ムードをヴェルディがすぐさま断ち切る。40分、10番・中野雅臣からのロングパスを、青木亮太がペナルティーエリアの左角で受けて左足でシュート。これが決まって、ヴェルディがまたしても点差を2点に広げる。
 ヴェルディの3ゴールはどれもサイドの裏のスペースに飛び出したところから生まれている。青木が「サイドの裏を突いていけといわれたので、みんなで積極的にできた」と語ったように、高い位置まで上がってくるサイドバックの裏を突くという作戦を実行した結果だった。
 45分、三竿健斗がCKからのヘディングで決定的な4点目を決めて、4─1でタイムアップ。ヴェルディが1年前、サンパウロFCに敗れた悔しさを、同じ舞台で見事に晴らした。
 「去年のチームよりも、個々の能力ではちょっと落ちる」(大嶋康二コーチ)にも関わらず昨年以上の結果をつかんだことは、大きな自信になっただろう。今年で3回目を迎えた今大会は東京のチームの初優勝で幕を閉じた。


世界レベルのフィジカルを体感する

 今大会は12チームが3つのグループに分かれて1次ラウンドが行われ、各グループの1位に加えて、2位の中から成績のよい1チームが第1トーナメントにワイルドカードとして進出する。
 その最後の1枠に滑り込んだのは、地元・東京から出場した東京都トレセン選抜だった。東京都の中体連やクラブから選抜された「東京トレセン」のメンバーを中心に結成したチームは、コリンチャンスには惜しくも敗れたものの、北京、モスクワから勝利を収めてワイルドカードをつかんだのだった。
 3位決定戦に回ったトレセン選抜の対戦相手はエジプトのカイロ。小澤通晴監督の「カイロはフィジカルが強くて、縦に速いので、それに対応できないとやられる」という不安は的中してしまう。
 前半からカイロがパワフルなドリブルや鮮やかなコンビネーションでゴールを狙っていく。トレセン選抜はGK畚野直柔を中心に猛攻を抑えていたが、前半終了直前の30分、左サイドのクロスからA・モハメッドにうまく合わせられ、1点リードされて前半を折り返す。
 後半、何とか反撃の糸口を見つけたいトレセン選抜だったが、カイロの個人技とフィジカルを止めることができず、4点を追加されて0─5で大敗した。


カイロを相手に貴重な経験を積んだ

「パスをつなげずに蹴って、跳ね返されて、相手のボールになってしまった」(池田樹雷人)、「普段はもっと積極的に上がるんだけど、海外の選手が相手で怖がってしまった」(山本雄志)と課題を語ったように、海外の相手にチームとして、個人として自分たちの武器を出すことが今後のテーマとなるだろう。
 それでも、カイロやコリンチャンスのような強豪チーム、北京やモスクワといった異なる文化やスタイルを持つチームと戦ったことは、ユース年代にとって何事にも変え難い財産となったはず。
 世界中から同年代の優秀な選手たちが集まった今大会で東京から出場したチームが優勝(東京ヴェルディ)、4位という結果を残したことは、東京のユース年代の充実を表したものといっていい。今回出場した選手たちには経験や自信を糧にして、世界の舞台へと羽ばたいてもらいたい。
 
 



第65回国民体育大会 関東ブロック大会


5年ぶりに全国大会出場を果たした成年男子


成年男子と少年男子が本大会に出場する
2010年8月14、15日 大胡総合運動公園、宮城総合運動場
成年男子
 


岡本の値千金の1発で勝利して本大会へ

PK戦、延長戦を制して4年連続敗退に終止符を打つ

 4年連続で関東ブロック大会の壁に阻まれていた成年男子チームが、5年ぶりの本大会出場を果たした。
 1回戦では山梨県に対してゲームを支配しながらも、ゴールを奪えず、延長戦に突入。延長前半5分に待望の先制点を挙げて勝ったかと思われたが、延長終了間際に同点ゴールを決められてPK戦にもつれることになった。
 ここで大活躍したのが7年連続で国体メンバーに選ばれているGK寺地廉だった。PK戦前に交代出場すると、鋭い読みと大きな体でPKを2本ストップ。チームを勝利に導いた。「延長に入ったときに監督から『PKになったら出るぞ』と言われていたので、落ち着いてできた。あと1勝して本大会に出たい」と喜びを語った。
 出場権をかけた2回戦の相手はJFLの栃木ウーヴァ主体のチームで臨んできた栃木県。試合前日、漆間信吾監督は「相手のほうが実力は上だと思うが、今までやってきたことを信じて東京のサッカーで勝ちたい」と語っていた。
 東京は格上の相手にも前半から堂々としたゲームを展開する。しかし、ゴールを決められず2試合連続で延長戦へ。前日に猛暑の中で70分+延長20分+PK戦を戦った東京は不利かと思われたが、勝利の女神は東京に微笑んだ。
 74分、交代出場した後藤秀平のドリブルシュートのこぼれ球に、素早く反応してゴールを決めたのは同じく交代で出場した岡元思帆。「不思議と焦らずに、基本に忠実に打てました」と振り返ったシュートが、東京に5年ぶりの全国大会出場をもたらした。
 大会前に主力選手だった河内智史が怪我で離脱。ベンチには10番のユニフォームが飾られていた。「彼のためにも」とチーム一丸となった東京が大きな目標を達成した。

interview

安藤 謙
昨年は神奈川に敗れて悔しい思いをしたので、新しく入った選手にはその経験を伝えました。
去年は社会人と学生のメンタルにギャップがあったんですが、今年は一つにまとまっていたので、そこが勝てた要因だと思います。

2010年8月14、15日 群馬県立敷島公園
女 子
 


1回戦で敗れた悔しさを来年につなげたい

ベストメンバーを組めず 1回戦で茨城に敗れる

 昨年、平均年齢17歳のメンバーで臨んだ女子は、今年で3年目となる石山隆之監督の下、国体出場権獲得を目指した。
 石山隆之監督は「2013年の東京国体のときに主力になれる年齢の選手」を選考基準とし、高校生や大学生を主体にチームを編成。昨年と同じように若く、有望な選手が集まって、将来を見据えたチーム作りを行った。
 しかし、大学やU─17日本代表のスケジュールの関係で出場辞退する選手が出ると、大会前の直前合宿で中心選手であるセンターバックの田中麻里菜が負傷(最終的にはメンバー入り)。当初、スタメンで出場予定だった選手の実に半数近くが戦線離脱するという事態になってしまった。
 そんな中でも、「目標は本大会出場で変わらない」(石山隆之監督)と強い気持ちで1回戦の茨城戦に挑んだ。
 前半の立ち上がり、東京は激しくプレスをかけられ、本来のパスをつなぐサッカーを封じられてしまう。狭い場所へのパスを狙って、相手にカットされて、何度もカウンターを浴びた。
 そして13分、中央を破られて失点。25分にも、同じようにゴール中央のスペースに飛び込まれ、2失点目を喫してしまう。前半で0─2と苦しい状況に追い込まれた。
 後半、相手のペースが落ちたこともあって東京が何度かチャンスを作ったが、決めることができない。逆にカウンターから追加点を許して3点差。東京は途中出場の田中麻里菜が意地の一発を決めたが及ばず、1─3で敗れて2年連続で出場権を逃した。
「非常に悔しいし、申し訳ない気持ちで一杯です。来年こそは出場権をつかめるように頑張りたい」と石山監督。監督や選手が今回の経験を生かし、来年こそは出場権を勝ち取りたいところだ。

interview

石山隆之監督
中心選手の怪我や当初予定していた選手を招集できないなどのアクシデントがあって、ベストメンバーを組むことができませんでした。 来年も今年同様にラージグループを作りながらチームを作っていきたい。

2010年7月16〜18日 群馬県立敷島公園
少年男子
 


群馬戦、山梨戦では2試合11ゴールを挙げた

神奈川に敗れるも 2連勝で全国大会へ

 少年男子の関東ブロック大会では関東U─16トレセンリーグの順位によって組み合わせが決められる。U─16トレセンリーグでAブロック2位になった東京は、「勝てば本大会出場」という状況で同じAブロック1位の神奈川戦に臨んだ。
 今年の少年男子のメンバーの選考基準は「自分の特徴を持っていて、ゲームの中で発揮できる選手」(川島弘章監督)。FC東京U─18の湯浅寿紀や吉田一彦がサイドを切り崩し、東京ヴェルディユースの中島翔哉や安在和樹が変幻自在のテクニックでアクセントをつける。
 神奈川戦は前半17分、「注意していたがやられてしまった」と川島弘章監督が悔やんだように、相手のエース宇佐見康介に先制ゴールを許してしまう。その後は東京がゴール前まで何度も攻め込んだがゴールを挙げることはできず、0─1でタイムアップ。
 1回戦で敗れた東京は2回勝利することが本大会出場条件となる。2試合目の群馬戦、東京は前日のうっぷんを晴らすようなゴールラッシュを見せる。8─0の大量得点で群馬に勝利して、出場権をかけて3試合目の山梨戦に臨んだ。
 前半1分、ファーストチャンスで岩田拓也が決めて幸先良く先制すると、前半終了間際の32分に安在和樹が直接FKを突き刺し、2点目。後半、山梨にゴールを許して1点差とされながらも62分に交代出場の石川乾悟がダメ押しの3点目を挙げて、3─1で勝利。1試合目の敗戦から見事に立ち直り、本大会出場権を手にした。
 東京が本大会に出場するのは、2年ぶりのこと。全国トップクラスのポテンシャルを誇るチームだけに、本大会でも波に乗れば上位進出は射程県内といっていい。東京、そして日本のサッカーの将来を担う選手たちの躍動に期待したい。

interview

徳田康朗
チームの雰囲気はすごく良いです。選手はみんな明るいですし、コーチの方々も選手の目線で見てくれるのでやりやすいです。 ヴェルディとFC東京の選手が中心なので、お互いの良さをうまく合わせていきたい。


 
 


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