現代サッカーでは審判にもスピードが求められる
これまでの2級審判員のフィジカルテストはクーパー走(12分間走)を規定の距離以上走るというものでした(男子33歳以下2800メートル・34歳以上2600メートル、女子33歳以下2300メートル・34歳以上2200メートル)。それが今回からスピードテストとして40メートルダッシュを6秒4以内(女性は6秒8以内)、1分30秒のインターバルで6本走る。持久力テストとして200メートルのうち150メートルを30秒以内(女性は35秒以内)に走り、50メートルを40秒以内(女性は45秒以内)に歩く。これを20セット行うという新方式になりました。
なぜ変わったのかというと、現代サッカーではダイレクトプレーと呼ばれる、ゴールからゴールへと直結するプレーが増えていて、レフェリーにもよりスピードが求められるようになったからです。レフェリーもサッカーの変化についていかなくてはいけません。新フィジカルテストでは走る、止まるを繰り返すので、より試合中の動きに近くなり、審判としての適合性を見ることができます。
従来のクーパー走の基準は、極端なことをいうと、体力に自信があれば70〜80%で走ってもクリアすることができました。しかし、新しい方式では短い距離を何本も走るので、トレーニングをしていないとクリアすることができません。普段のトレーニングがダイレクトに結果に表れます。先日のクラブワールドカップでもフィジカルテストをパスできず、帰国を余儀なくされた審判がいたほどですから。
審判にとってスピード、持久力は正確な判定をするために必要不可欠なもの。どんなにプレーを見極める目があったとしても、プレーが起こっている場所から遠く離れていては説得力がありません。いい判定をするためには、いいポジションを取るためのフィジカルが必要になります。 審判の皆さんにはゲームで生かすための基礎体力作りに取り組んでいただきたいと思っています。
ステップアップのためにはまず足元を固めて欲しい
現在、日本では世界のサッカーをテレビで簡単に観ることができます。これだけ情報量が増えている中で、審判にとって大事になるのは、根本的なところを一つひとつしっかり抑えるということです。
スペインの審判がこうしていたから、イタリアの審判がこうしていたから、というのを安易に取り入れても、ゲームのレベルもスピードも異なるので、実際にはうまくいかないことも多い。どうしても審判としてのテクニックに目がいきがちですが、まず、「サッカーという競技がどういうものなのか」を再確認するべきだと思います。
最もわかりやすい例としては、アドバンテージが挙げられるでしょう。例えばドリブルで持ち込んでいた選手がファウルで倒されたけど、ボールは味方につながってシュートチャンスになりそう、という場面。そこでファウルの見極めだけに頭がいきすぎていると、プレーを止めてしまい、選手にストレスを与えることになってしまう。
「いい判定」というのは決してファウルをとることだけではありません。ゲームの次の展開を予測する力、選手の心理を読む力なども大事になります。
今後、審判トレセンなどで一緒にやらせていただきますが、東京都の審判は全国的にもレベルが高いと感じます。だからこそ、審判としての足元を固めることが、これからのステップアップにつながるはずです。 |