TOKYO FA's Pick UP

フォローアップセンター
「中学生年代トライアル」
中学生年代の活性化を実現する
 
日本サッカー協会公認
A級コーチ
川島弘章氏


1年生前半、3年生後半の「空白期間」

 2005年の暮れも押し迫った12月27日、世田谷区立用賀中学校では、東京都サッカー協会による意欲的な試みが行われていた。キャプテンズ・ミッションにも掲げられている「中学生年代の活性化」を実現すべく、04年12月からスタートしたフォローアップセンター、通称「中学生年代トライアル」だ。
 朝10時の開始時刻が近くなるにつれて、異なる制服に身を包んだ中学生がポツリ、ポツリと集まってくる。日本サッカー協会(以下JFA)公認A級コーチで、インストラクターを務める川島弘章氏は1人1人に「おはよう!」と声を掛ける。彼らのほとんどが3年生。もうすぐ高校受験を控えているため、サッカー部は約半年前に「引退」している。

   川島氏が「中学生年代トライアル」のコンセプトを説明する。「中学校サッカー部では1年生の前半期、3年生の後半期は活動機会が少なくなります。入部したばかりの1年生は球拾い、走り込みがメインで、ほとんどボールに触れない。3年生は7月ぐらいで受験のために一線を退きます。そのような選手たちにサッカーをプレーする機会を提供するのが目的です」。
 そのため、4月から7月までの上半期は1年生、9月から12月までの下半期は3年生の希望者をトレセン第1地区(千代田区・港区・品川区・大田区・新宿区・渋谷区・目黒区・世田谷区)の中学校、クラブチームから募って、JFA公認指導者ライセンスの保有者によるトレーニングを行っている。
 各中学校から選手が集まって練習するスタイルのため、「トレーニングセンター(トレセン)」と混同されることも多い。だが、トレセンが各地域の優秀な選手を選抜するのに対して、「中学生年代トライアル」には「サッカーをプレーしたい」というモチベーションさえあれば参加できる。

高校サッカーでスタートダッシュ

 この日の事前の申し込み人数は15人程度。だが、やはり受験前だけに当日のキャンセルも少なくないという。この日は結局7人しか集まらず、川島氏が顧問をしている牛込第2中学校サッカー部を交えて約1時間30分のトレーニングを行った。
 川島氏によると参加人数は受験が近づくにつれて減少していくのだという。04年度は12月からのスタートで翌年2月までの日程だったが、受験の追い込み時期となる1月を境目にガクッと落ち込んだ。
 将来的には第1地区から拡充していくつもりだが、「こういう取り組みがあることを、もっと知ってもらわなければならない」(川島氏)というように現時点で行き渡っていないのは否めない。
 だが、少人数とはいえ参加者がトレーニングに対して意欲的に取り組む姿は印象的だった。川島氏の指導の下で密度の濃いメニューをこなして、参加者のチームに川島氏が顧問を務める牛込第2中学校の選手を加えてのゲームで締めくくった。
 川島氏が終了後のミーティングで参加者に伝えたように、「中学生年代トライアル」には、高校でもサッカー部に入ろうと思っている3年生にとって「他の選手が休んでいる間に体を動かして、高校サッカーのスタートで差をつけよう」というメリットがある。
 引退後も「サッカーをしたい」と渇望している3年生、入部後は「ボール拾いばかり」と嘆く1年生には、是非とも活用して欲しい。

 

ゲームでは積極的にボールを奪い合う 川島氏の言葉を真剣に聞き入る参加者