← 前ページ 次ページ →
PK戦の末に東久留米総合高校が勝利した
“想定外”の劇的な勝利で東久留米総合が全国へ
「こんな予定ではなかったんですけどね」。開口一番、東久留米総合高校の齋藤登監督は苦笑しながら語った。19分、58分にエース・佐々木翼がゴールを決めて2点をリード。全国大会への道のりは極めて順調なはずだった。しかし、試合終了間際の79分、関東第一高校に1点を返されると、必死の追い上げを食い止めることができず、立て続けに失点してしまった。さらに最後のプレーでGKが負傷。すでに交代枠を使い切っていたため、GKを変えることはできない。「やっちゃったなと思った」(齋藤監督)。試合は20分の延長戦へ突入した。
天国から地獄に一気に突き落とされる格好になった東久留米総合高だったが、選手たちの気持ちは折れていなかった。延長戦を急造GKで守り切ると、PK戦では負傷から復帰したGK 野仲優志がゴールマウスに立った。そこまで全員成功して迎えた後攻・関東第一高の5人目がクロスバーにシュートを当てる劇的な幕切れで、壮絶な試合に終止符が打たれた。全員サッカーを掲げる東久留米総合高が逆境を跳ね返し、「選手権」の切符をつかんだ。
関東第一高校も素晴らしいプレーを見せた
「一つ、二つと勝って行きたい」(齋藤監督)と臨んだ全国の舞台では、1回戦で愛媛県の済美高校にPK戦の末、敗退した。東京都大会での劇的な勝利と、全国大会での悔しい敗戦は東久留米総合高にとって大きな財産となったに違いない。
東久留米総合高校 FW 佐々木翼
関東第一高校の強さはわかっていたので、前半に必ず1点取ろうと話していて、それができたのは良かったです。試合終了間際に2点を追いつかれてしまいましたが、みんなであきらめずにやれば勝てると思っていました。(PK戦では)GKの野中はインターハイでもずっと止めてくれていたので信頼していました。「東久留米総合高校」になってからは(2007年に統合)、まだ全国大会で勝っていません。結果にこだわりたいです。
攻撃サッカーを貫いた國學院久我山の勝利
東京都大会史上に残る好ゲームとなった
第1試合の劇的な試合の余韻が残る中で行なわれた第2試合。常連校の一つである國學院久我山高校と、近年実力をつけてきた早稲田実業高校の試合は、両チームの持ち味が発揮された好ゲームとなった。前線から激しくプレッシャーをかける早稲田実業高に対して、ボールをつなぐサッカーを標榜する國學院久我山高がかわす試合展開。80分で1点ずつを取り合うも、勝ち越しゴールは生まれず、勝負の行方は延長戦へ。
87分、待望のゴールを決めたのは早稲田実業高だった。ミドルシュートを相手GKがファンブルするラッキーにも助けられ、勝利へ一歩近づく。しかし、延長後半に國學院久我山高の攻撃力が爆発する。途中出場の“スーパーサブ”室井晃希の起死回生の同点弾で息を吹き返すと、99分、右高静真のFKをDF巽豪が頭で叩き込んで逆転に成功した。「策としては完璧にハマっていたが、最後に体力的な問題が出た」。早稲田実業高の森泉武信監督はガックリと肩を落とした。一方、勝利した李済華監督は「こういうゲームは私の指導者人生の中でも何度もあるゲームではない。感動した」と感慨深げな表情で語った。
全国大会に勝ち上がった國學院久我山高は見事に1、2回戦を突破。3回戦で栃木県の矢板中央高校に惜しくもPK戦で敗れたものの、世界最強軍団のFCバルセロナにも例えられた攻撃的なプレースタイルで高校サッカーファンを魅了した。
國學院久我山高校のエース・右高静真
國學院久我山高校 FW 右高静真
勝てたことはうれしいですが、正直内容はあまり良くなかったですね。最後まであきらめずに戦えたことが勝てた要因だと思っています。全国大会では早稲田実業高校や、負けたチームの分まで背負ってしっかりと戦っていきたいです。(2年前にベスト8に入っているが?)国立に行くことが目標ですが、まずは一つ一つの試合を勝っていくことが大事です。全国大会では久我山らしいサッカーを見せたいなと思っています。
府中アスレティックFCプライマリーが1部昇格
2部昇格1年目で1部参入の快挙!
「入れ替え戦はこういう感じになるんです。どちらもプライドがかかっているので……」。府中アスレティックFCプライマリー・俵由紀子監督の言葉が、この試合の壮絶さを物語っていた。
1部7位のザ・サンキストと、2部2位の府中プライマリー。ザ・サンキストは勝ち、もしくは引き分けで1部残留、府中プライマリーが勝った場合は入れ替えとなる。
5分、先手を取ったのは府中プライマリーだった。「ここのピッチは狭いので、点を取れる形として練習してきた」(俵監督)という、ゴレイロからのスローを前線の選手がヘディングでコースを変えるシンプルな作戦が奏功した。
お互いのプライドがぶつかり合う
しかし、ザ・サンキストも現1部の意地を見せる。10分、コーナーキックから同点に追いつくと、前半終了間際にはフリーキックのこぼれ球を詰めて2点目。
1-2でリードされた府中プライマリーだったが、後半開始早々に1点目と同じ形で同点に追いつくと、キックインからファーサイドで詰めて3-2と勝ち越す。その後、ザ・サンキストの必死の猛攻を守り切った府中プライマリーが見事1部昇格を果たした。
ピッチが狭かったこともあって、お互いにゴレイロがゴール前に直接投げる大味なプレーが多かったが、両チームの気迫に満ちたプレーの数々は「これぞ入れ替え戦」と呼ぶのにふさわしい内容だった。
府中アスレティックFCプライマリー 俵由紀子
練習の成果が出ましたね。2得点を決めたゴレイロからのスローに合わせる形は、この入れ替え戦に向けて練習してきた必殺技のようなものです。チームには中学生から30代まで幅広い年代の選手が所属しています。フットサルの経験があまりない子もいるので、モットーは「楽しくやること」。1部リーグでも楽しみながらやっていきたいと思います。
引き分けで2部残留を決めたフェスチーロ
アドバンテージ生かし2部チームが降格回避
2部リーグのフェスチーロと、エントランスリーグからの昇格を目指すフュージョンの試合は、両チームが持ち味を出し合う好ゲームとなった。
試合を優位に進めたのは挑戦者のフュージョン。ショートパスを回しながら攻撃を組み立て、果敢にゴールに迫った。しかし、何本もシュートを打ちながら、精度を欠いてゴールには至らない。
入れ替え戦らしい緊張感溢れる展開
「相手のほうがうまいと思うので、その上でどうやって勝つかを考えていた」というフェスチーロ・海野伸明監督の作戦が実ったのは12分。チーム全員で粘り強く守りながら、ハーフラインまで前線に素早くボールを入れる形から先制ゴールを挙げた。
入れ替え戦では引き分けの場合、上位リーグチームの残留となる。そのため最低でも2点が必要になったフュージョンは後半、前半以上に積極的にゴールを狙っていった。そして25分、ゴール前のこぼれ球を詰めてついに1-1。
フュージョンに最大のチャンスが訪れたのが、後半ラスト5秒、ゴール前で1対1になった選手がコースを狙ってシュートを放つ。しかし、このボールは無情にもポストに嫌われ、勝ち越すことはできず。
タイムアップの瞬間、ピッチ上で飛び跳ねて喜ぶフェスチーロと、がっくりと肩を落としてうなだれるフュージョン。その光景が入れ替え戦という試合の意味を物語っていた。
フェスチーロ 海野伸明 監督
昨年、2部にいたチームと合同で作ったときは、選手同士がぎくしゃくした面もありましたが、リーグ戦で後がなくなってからコミュニケーションが増えてきました。今日は試合前から暗くならないように、「みんなで楽しもう」と話して、試合中も明るい雰囲気を作ることを意識しました。来シーズンは今日のように気持ちを出しながら、個々で強くなっていきたいですね。