TOKYO FA's Pick UP

上野ニ三一新会長インタビュー 「東京のサッカーを発展させたい」
7月1日、上野ニ三一会長が新会長に就任した。
「信頼」、「喜び・楽しみ」、「夢」、「勝利」の4つのヴィジョンを掲げた上野新会長に、東京都協会のこれからについてうかがった。

 東京都サッカー協会は、東京におけるサッカーの普及と発展、育成と競技力向上を図り、都民の豊かなスポーツ文化を創造し、健全な社会を構築することを理念とし、以下のヴィジョンを持って行動します。
 一つ目が「信頼」です。東京都協会は公益財団として、サッカーファミリー、プレーヤー、審判員、指導者、サッカーに関わるすべての人々から信頼される組織でなくてはなりません。これはヴィジョンというよりも大原則といえるでしょう。
 二つ目が「喜び・楽しみ」です。東京では年齢的にはU─6からO─70まで非常に幅広いカテゴリーでサッカーを行っています。近年は女性のプレーヤーも増えています。スポーツを「する」、「見る」、「支える」、「育てる」そういった活動をサポートしていく財団でありたいと考えています。
 三つ目が「夢」です。自治体と協力して芝生のピッチを増やす、新しいスタジアムの建設、グローバルな視野に立った企画、ワールドカップ開催への協力など、夢のある事業を展開します。
 四つ目が「勝利」です。先日行われたワールドカップでの日本代表を見てもわかるように、勝つことによって未来は開けてきます。東京都においても、フェアプレー、リスペクトの精神を持ちながら勝つことを目指していきます。国体では常に優勝争いをするように競技力アップを図っていきます。
 東京都協会は公益法人ですので、普通の企業のように利益を挙げることが最優先されるわけではありません。さまざまな事業を通じてお金を集めますが、その使い道は公益性の高い、例えばトレセンや、キッズ等多くの人に還元される事業に当てています。
 そういった点を踏まえて、私が力を入れたいと考えているのは、東京都のすべての選手がサッカーを楽しめるための環境作りです。
 5年前、駒沢第二競技場と補助競技場を日本協会と東京都協会が協力して人工芝ピッチにしましたが、メンテナンス面でも非常に楽になりましたし、利用者も非常に増えています。現時点では駒沢に利用が集中する傾向がありますが、同じような施設が二箇所、三箇所とあれば、スムーズにグラウンドを確保できるはずです。2013年に東京国体が行われますから、それを契機に施設の整備を推し進めていきたいと思っています。
 現在、味の素スタジアムの周辺に多くのスポーツ施設が点在しています。調布市の西町サッカー場、三鷹市の大沢総合グラウンド、府中市の朝日サッカー場など各市に素晴らしいグラウンドがあります。現状はそれぞれの市が運営していますが、総合的にできれば大阪府・堺市の「NTC」に匹敵するようなサッカータウンになるでしょう。芝生のグラウンドを一気に増やすことは難しいでしょうが、横のつながりを増やすことでプレーしやすい環境が整っていくはずです。
 「東京から日本を代表する選手を出す」ことも大きなテーマとなります。先日のワールドカップの日本代表にも東京出身の選手は中村憲剛選手と森本貴幸選手の2人しかいませんでした。人口と競技人口の多さからすれば、これは非常に寂しい数字だと言わざるを得ません。
 東京の優秀な人材を、いかにして育成していくか。そのためには育成年代の活動が非常に重要になります。Jクラブなどに代表される大きなクラブはいいのですが、小さな街クラブが十分に活動できていません。東京都協会として「街クラブ」を積極的にバックアップしていくことも必要になるでしょう。
 それから、審判員、指導者の育成も当然重要なテーマです。審判員に関しては全国の中でも最大の人数を誇っています。今回のワールドカップレフェリーの西村雄一氏など優秀な審判員を輩出している状況を継続していきたいと思います。指導者に関しては普段の選手を見ているのは個々のチームですから、現場で教えている指導者へのアプローチが大切になってきます。ワールドカップで優勝したスペインもバルセロナをベースにしていたように、チームのレベルアップが代表チームの結果にもつながってくるはずです。
 最後に、東京都協会の円滑な活動のためには、サッカーファミリーのみなさんのご協力が欠かせません。一緒に東京のサッカーを盛り上げていくためにも、ご協力をお願いします。

 


Profile

上野二三一(うえの・ふみかず)
1948年1月1日生まれ。 東京都出身。石神井高校、東京教育大学でGKとして活躍。大学時代には全日本大学選手権、関東大学リーグ優勝に輝く。 1978年の長野国体で東京少年男子を率いて初優勝に導く。 教師生活38年、日本協会理事、東京都協会副会長などを歴任し、2010年度より現職。