委員会インフォメーション


 東京都地域トレセンU-13交流大会
“気づき”を与える場

12月21日、23日の2日間にわたって行われた「東京都地域トレセンU-13交流大会」。 これは東京都の各7地域トレセンに招待チームを加えた10チームが大会形式で交流を図るというもの。 Jクラブのジュニアユースも参加した、この大会が果たす役割とは。


「7地域」から「東京」へ
新しい選手を発掘する

 12月21、23日、隣接する駒沢第2球技場と駒沢補助競技場で「東京都地域トレセンU-13交流大会」が開かれた。
 東京都内の7地域では優秀な選手の発掘と育成のために定期的に指導スタッフによるトレーニングを行っている。これが「東京地域トレセン」と呼ばれるものだ。この地域トレセンの中から選ばれた選手が参加するのが「東京トレセン」である。この東京トレセンのメンバーに、U-15からJクラブのユース選手が加わって、次年度の国体少年男子(16歳以下)の東京都選抜メンバーが形成される。


 東京トレセンの最大の目的は、優秀な選手に質の高い環境を与えることによって、東京から世界に通用する選手を育てることだ。「このような交流大会を開いているのは、彼らの年代がいちばん伸びしろがあるからです」。そう語るのは、東京トレセンU-13チーフ・蔵森紀昭氏だ。他の指導スタッフと一緒に鋭い視線をピッチに送っていた蔵森氏によれば、この大会の目的は〝新しい選手を引き上げること〟にあるという。
「春に行った東京トレセンU-13の選考会には、各地域トレセンから推薦された選手が参加するのですが、中学校に入学したばかりで地域トレセンでも状況が把握できていない選手もいます。また、U-12からU-13というのは心身の急激な発達が起きる時期でもあるので、入学時から半年間で大きく伸びた選手もいる。そういった選手を東京トレセンに引き上げることが第一の目的です」。
 7つの各地域トレセン以外にも、今大会には単独チームとして三菱養和SC巣鴨ジュニアユース、FC東京U-15むさし、東京ヴェルディジュニアユースが招待参加している。
 FC東京と東京ヴェルディのジュニアユースは全国大会でも優勝争いをするほどのチーム。東京の中でもトップクラスの選手が集まっている。各地域の〝寄せ集め〟である地域トレセンのチームとの実力差は明らか。そういった別格のチームを招待する意味とは何だろうか。
「昨年は埼玉県トレセンに来てもらいました。招待チームを入れる意味は、他県の同年代の子どもたちやJクラブがどれぐらいのレベルなのかを肌で感じてもらうため。今日の試合でも招待チームの試合をみんな見学しているんですね。自分たちに何が足りないのかを気づくには、実際に見てもらうのがいちばんの刺激になるだろう、ということでお願いしています」。
 Jクラブ・他地域のチームと戦い、見ることで、この大会で何かをつかんでほしい──。これは東京トレセンスタッフに共通する願いだ。その中でも特に蔵森氏が強調したのはオフ・ザ・ボールの部分だ。
「今は『自分とボールの関係』でしかサッカーができない選手が増えている。今日見ていても、ボールが来たら仕事を始めるけど、ボールが来るまでの駆け引きの動きに乏しい。FC東京やヴェルディの選手はそういう駆け引きができている。だから、簡単にゴールになっているように見えるけど、パスが通った時点で勝負が決まっているんです。技術的な差よりも、そういったところに気づいてもらって、日々の練習で意識的に取り組んでほしいですね」。
 この大会は全10チームが2グループに分かれて総当たり戦を行い、各グループの同一順位同士で最終順位を決定する。決勝戦といえる1位同士の順位決定戦はJクラブ同士の顔合わせとなり、東京ヴェルディが勝利した。だが、トレセンスタッフは「順位や勝ち負けはほとんど気にしない」という。
「優勝したからといってトロフィーがもらえるわけでもないですし、優勝チームが次の年の大会で優遇される、というようなこともありません。ただ、順位や勝ち負けがあったほうが子どもたちのモチベーションは上がりますし、より実戦的な姿を見ることができるんです」。
 トレセンでは各チームの選手が必ずしも自分の得意なポジションでプレーできるとは限らないが、スタッフが見る上でポジションは「ほとんど気にしていない」そうだ。
「そのポジションの選手がいないからやっている場合もあれば、指導者が他のポジションを経験させるために意図的にコンバートしている場合もあります。我々はそういったことも含めて、トータル的に見ています」。
 そして、この大会で交流するのは選手だけではない。指導者同士の情報交換も盛んに行われる。
「グラウンドが少ないとか、指導者がいないとか、いろいろな問題が地域によってあるので、そういったところを吸い上げたりしながら、我々が協力できる部分があれば改善の手助けをするとか、そういう形でのコミュニケーションをとるということです」。
 99年のスタートから今年で10年となった東京トレセン。その間に数々の選手がプロの世界へ巣立っていった。今後も1人でも多くの優秀な選手を育てるために、東京トレセンは全力で取り組んでいく。




PROFILE


東京トレセンU-13チーフ

蔵森 紀昭