TOKYO FA's Pick UP

日本サッカーの未来のために、今やるべきこと
東京都サッカー協会ユースダイレクター
齋藤登氏インタビュー
日本サッカーの目標である「世界一」を実現するために、昨年4月から日本協会と各都道府県協会をつなぐユースダイレクターが設置された。
ユース育成のビジョンを日本全体で共有して、各地域で独自性を持って取り組んでいこうという、このプロジェクト。
東京都サッカー協会の担当者となった、技術委員の齋藤登氏に、ユースダイレクターの具体的な役割と、東京のユース育成の現状と課題について話を聞いた。


理想のリーグ戦を作り上げたい

 日本サッカー協会(以下、日本協会)が掲げている「2015年に世界のトップ10に入る」「2050年にワールドカップで優勝する」という目標を達成するためには、日本サッカーが一丸となってユース年代の育成に取り組んでいかなくてはいけません。
 ただ、日本協会が”トップダウン“でユース育成の重要性を説いたとしても、なかなか各都道府県のエリアまでは行き届かない。そこで、日本協会と連携しながらユース育成に取り組む責任者を地域ごとに設置しようということでできたのが、ユースダイレクターなのです。46都府県に1人ずつ、北海道は広範囲なので4人のユースダイレクターがいます。
 では、実際にユースダイレクターとは何をするのか。ユースダイレクターの仕事は日本協会と各協会の”パイプ役“になるだけではありません。そういった点もありますが、各地域や都県によってサッカー人口やチーム数、グラウンドの数など環境面は異なります。日本協会が指し示すビジョン(方向性)は共有しつつも、具体的な取り組みは地域の独自性を大切にして、育成環境を改革していく。その”旗振り役“となるのがユースダイレクターの役割なのです。
 2007年4月にユースダイレクターができて、6月に第1回の、12月に第2回の研修会が行われました。当面の目標は2009年に全ての都道府県でU-18、U-15のリーグ戦が立ち上がることです。
 現状、東京都では3年前からTリーグU-18(3部制)、昨年からTリーグU-15と、すでにどちらのカテゴリーもリーグが始まっています。まだリーグ戦を立ち上げていないところもあるので、そういった意味ではリードしているといえるかもしれないですが、今のTリーグは理想のリーグとはいえません。改善の余地はたくさんあるのです。
 理想のリーグとは①年間を通したリーグ戦である、②同じチームと複数回対戦できる、③1クラブから複数チームが出場できる、この3点を満たしたものです。
 ユースの育成ではMTM、つまりマッチ・トレーニング・マッチが大事です。試合をして、課題を抽出して、トレーニングをして、また次の試合をするというサイクルを生み出すためのリーグ化なのです。
 Tリーグの現状では、①については、4月〜8月の短期間で行われていますし、②に関しても1回戦総当りで複数回対戦できません。③についても、各地区のユースリーグでは複数チームが出場できるようになっていますが、Tリーグではまだできていません。
 理想の実現のためにネックとなっているのが、東京のチーム数の多さと、それに反比例してサッカーのできるグラウンドが少ないことです。リーグ戦というのは絶対的に試合数を増やすことになるので、場所の確保も大きな問題です。
 高体連の場合は高校選手権やインターハイもありますし、プリンスリーグ、トレセンマッチデーもあります。日本代表や東京都選抜に選ばれている選手のスケジュールは過密日程といってもいいほどです。その辺りの日程調整も簡単なことではありません。
 現場サイドには、「試合数が増えれば大会運営の負担も増えるのでは」という抵抗感もあります。これについてはホームチームがグラウンド・審判の確保など、「自主運営」をすることの意識付けを徹底していきたいと考えています。
 すでにリーグ戦が動き出している分、それを変えることの難しさもあります。逆にいえば今はなにもないところは、最初から理想の形で始めることができる。東京は今リーグ戦があることにあぐらをかくのではなく、危機感を持って取り組んでいかなくてはいけません。
 現時点での具体的な取り組みとして、技術委員会内に「ユース部会」を新設しました。ユース育成を題材に種別や連盟の垣根を越えて、さまざまな意見交換をするためです。Tリーグについても「検討委員会」を立ち上げて、新しいTリーグのあり方を話し合っていく予定です。
 東京という地域の特性を踏まえて、できるものとできないものをハッキリさせなくてはいけない。できるものから1歩でも2歩でも前に進んでいこう。そういった形で始めていこうと思います。



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ユースダイレクター

齋藤 登