委員会インフォメーション


 技術委員会
(財)日本サッカー協会公認D級コーチ養成講習会
日本サッカーの裾野を広げるため、サッカーの楽しさを実感してもらう
7月31日、8月1日の2日間に渡って行われた、(財)日本サッカー協会公認D級コーチ養成講習会の模様をレポートする。
第1日
サッカーの前段階の人間的ベースに比重を置く
 実技講習を始める前に受講者1人1人と力強く握手を交わすのは、講師を務める公認B級コーチの北原由氏だ。公認D級コーチ養成講習会は2日間で講義5.5時間、実技4.5時間、そして全科目修了後の筆記テストにパスすれば、晴れて「公認D級コーチ」の資格が与えられる。
 1日目は「サッカーというよりも人間的なベースになるところがほとんど」(北原氏)。まずは講義①「発育発達と一貫指導」から始まり、実技①「サッカーとは&コミュニケーション」を挟んで、講義②「コーチング法・GK指導法」が1時間、講義③「競技規則とフェアプレー」が1時間30分。北原氏の言うようにサッカー指導者になる前段階の部分だといえるだろう。
 基本中の基本から学ぶことからもわかるように、D級コーチ養成講習会のハードルは高く設定されているわけではない。D級はいわばコーチの入門編であり、受講対象者にも明確な狙いがある。北原氏が説明する。「少年サッカーの監督・コーチは保護者がする場合も多い。そういう方たちが気軽に受けられるようにと2日間のコースを作成しています。子どもたちにより楽しくサッカーをしてもらうためにも、保護者の方には正しい指導法を知っていてもらいたい。それにより日本サッカーの裾野が広がり強化にもつながってくると思います」。
 しかし、今回の受講者は少年サッカーの指導者ではなく、幼児体育のスポーツトレーナー・インストラクターを養成する、東京スポーツ・レクリエーション専門学校のチャイルド・スポーツ科2年生21名。北原氏のアシスタントを務める、同校教務部の斎藤範幸氏によれば「参加者のうち半分以上はサッカー未経験者です。受講者の割合としては科の性質上、幼児体育でサッカーを教えるために受講するという生徒がほとんどです。それでも、中には将来的にC級コーチの取得も視野に入れている生徒もいます」。
 北原氏は彼らについて「意欲的に取り組んでくれていると思います。僕の方から遊びのあるメニューを組み込んでいるのもありますが、彼ら自身にも『楽しもう』という気持ちがあるのがいい。サッカーの本質は『楽しむ』というところですから」と話す。
第2日目
思わずボールが蹴りたくなるサッカーの本質は楽しさ!
 2日目の午前は実技②「ボールフィーリング・初心者指導」からスタート。だが、タイトルのようにお堅い講習かといえばそうではない。少年サッカーの指導に必要不可欠な「遊び」の要素を取り入れて、ゲームをしながらもサッカーの本質的な動き・考え方が学べる、そのようなメニューがふんだんに盛り込まれているのだ。
 実技③の「ゴールを奪う(シュート)」も然り。その名の通り、シュートへの積極的な姿勢を養うためのメニューを紹介・実践していくのだが、1時間半の講習の前後では積極性がまるで違ってくる。
 午後は講義④「指導者の役割」を北原氏から。そして、ラストの講義⑤「メディカルの知識」では大塚製薬(株)の協力を得て、実際の事例を出しながら暑熱対策の重要性などをレクチャーした。受講生は水分補給の大切さを改めて実感しただろう。
 そして、再確認の意味も含めて筆記テストを行い、2日間の講習は終了。21名は無事に「公認D級コーチ」の資格を得ることができた。
 北原氏が講習会で伝えたかったこと_「サッカーの本質は楽しさ」という思いは、果たして受講生へ届いたのだろうか。
 この問いにサッカーは全くの素人だという大澤智美さんは笑顔で語ってくれた。「サッカーはあまり知らなかったのですが、楽しく学ぶことができました。保育士になって子どもたちに先生(北原氏)のように教えたいです」。経験者でサッカー部のエースだという岡本豊さんは異なる感想を持ったよう。「プレーするのと指導するのではまた違うということを感じました。子どもの立場からサッカーを見るのはすごい勉強になる。将来はサッカーの指導者になりたいです。自分はC級を取ります!」。
 公認D級コーチ養成講習会を通じてサッカーの楽しさを新発見、再発見した彼ら21名には、これから子どもたちへとその楽しさを伝えていってもらいたい。




 審判委員会
サッカー3級審判員研修会
審判員に必要な要素を共有し、さらなるレベルアップを図る
審判委員会の最重要課題は 1級審判員の育成・輩出 


(財)東京都サッカー協会
審判委員長
山田 正

 8月19日、27日の2日間に分けて、都内大学でサッカー3級審判員研修会が実施された。これは東京都サッカー協会で審判委員会からの「審判割当」を希望する3級審判員を対象にして行われ、審判員に必要な要素を共有しさらなるレベルアップを図るというもの。
 現在、東京都サッカー協会には4級からスペシャルレフェリー(SR)まで約1万7000人の審判員が登録しており、その中で3級審判員には関東リーグ以下の主審・副審が割り当てられている。
 講師を務める1級審判員の抱山公彦氏が開会の挨拶で「東京は試合数が一番多い。たくさんのゲームを支えていくには皆さんの力が必要不可欠です」と伝えたように、3級審判員は東京サッカーの円滑な運営になくてはならない存在だといえるだろう。
 研修会の大まかな流れとしては「筆記テスト」、「講義」、「体力テスト」の3つに分けられる。
まず始めに筆記テストで審判員としての基本的な知識をどれだけ理解できているかをチェック(写真①)する。19日は100点満点もいたそうだが、取材日の27日は98点が最高点。
筆記テスト終了後の講義は、判定基準、競技規則の改正について日本サッカー協会のスタンダードを正確に行き渡らせるために行われる。
判定基準では「2006 JFA スタンダードVTR」という、Jリーグの試合からフィジカルチャレンジ、オフサイドなどの場面を抜き出したVTRを使用する(写真②)。実際例を見て各々が判定基準_正当なプレーかイエローカードか、オフサイドかノットオフサイドか、など_を解答用紙に書き込み、日本サッカー協会の見解VTRと照らし合わせて統一化を図る。そして、2006―2007年度の競技規則の改正点について、抱山氏から「どのように変わるのか」の解説が参加者になされた(写真③)。
 大学内のグラウンドに場所を移しての体力テストでは、通称クーパー走と呼ばれる12分間走が行われた。3級審判員には、下は10代から上は60
代まで非常に幅広い年齢層がいる。そのため、体力テストの結果は筆記テストよりもバラつきがあるが、それぞれのカテゴリーで求められる運動量は異なる。「マイペース!」という掛け声がインストラクターから飛び交っていたのはそのためである。ちなみに、この日27日の最高記録は男性3700メートル、女性3200メートルで、女性については「1級審判員でもなかなかいない」(抱山氏)とのこと。
 2日間で合計181名が参加した3級審判員研修会。閉会の挨拶で山田正審判委員長は「それぞれに目指しているものはあると思いますが、ぜひとも1級、2級を目指して欲しい」と語った。
 東京都からは岡田正義氏、西村雄一氏などのSRを輩出しているものの、近年は1級審判員の合格者が少なくなっている。山田委員長も審判委員会の課題を「1級審判員がなかなか生まれないこと」だと語る。そういう意味でも現在2級、3級の審判員に掛かる期待は大きい。
 Jリーグのレフェリーインスペクターも務める山田委員長は優れた審判員の条件として「サッカーの本質を知っていること」を挙げる。「ゲームの流れ、選手の気持ちを総合的に判断してジャッジするには、ルールだけではなく、サッカーを理解しなければいけない」。そのためには選手と良好なコミュニケーションを築けなければならない。「私が常々話すのは『レフェリーである前に人間であれ』ということ。それはJリーグでも少年サッカーでも同じです」。
審判委員会では東京都からJリーグ、そしてワールドカップへと羽ばたいていく人材を輩出するべく一層のレベルアップに取り組んでいく。