試合レポート

 第10回 東京都サッカートーナメント 決勝
佐川急便東京SC 2-1 横河武蔵野FC
明暗を分けたのは制空権争い 佐川急便が「高さ」で3連覇
 3年連続で佐川急便東京SCと横河武蔵野FCの組み合わせとなった東京都サッカートーナメント決勝。過去2年は佐川急便が横河を下して天皇杯への切符を勝ち取っている。JFL前期第2節では3-1で佐川急便に勝利している横河としては、ライバルに勝って天皇杯への出場を決めたいところ。
 試合は5分、後方からのロングフィードを身長190センチのターゲットマン・大久保哲哉が落とすと、「半分以上は勝ってくれる」と信じて走りこんでいた山本正男が受けてシュート。3連覇に向けて佐川急便が幸先良く先制する。
 しかし、佐川急便のリードは5分と持たなかった。「1点が入って目が覚めた部分もあった」(田辺和彦)横河は10分、CKの跳ね返りを田辺が拾って再びゴール前にクロスボールを入れる。これをCK時に上がってそのまま残っていたCBの熊谷寛が得意のヘディングで合わせた。
 追いついた横河は佐川急便に積極的なプレスを仕掛けて、ミドルゾーンでの自由を与えない。それによって、中盤を省略して「悪い意味で大久保に当てるようになった」(田中信孝監督)佐川急便は、前線への放り込みを繰り返すだけで効果的な攻撃ができずに1-1で前半を終了した。
 後半に入ると横河は55分、負傷でベンチスタートだったエースの村山浩史を投入。負けじと佐川急便も61分に「ジョーカー的な形で使っている」(田中監督)堀健人をピッチに送り込みFWを3枚に増やして勝ち越し点を狙う。
 佐川急便が3トップにしたことで、下がり気味にポジションを変えた山本のマークが「ルーズになりすぎた」(田辺)横河は、何度も決定的なピンチを招く。しかし、GKの大石和夫が近距離からのシュートをことごとく防いで失点を水際で食い止める。
 お互いに譲らないまま勝負は延長戦へと突入する。ここで佐川急便は「リスクを負いたくないので、とにかく大久保に当てることを徹底した」(山本)。すると104分、榎本周平が1点目と同じようにペナルティエリア内にいる大久保の頭を目掛けて蹴りこむ。大久保が圧倒的な高さで中に落とすと、待ち構えていた堀が反転しながらシュート、ついにゴールネットを揺らした。残り少ない時間で横河も反撃するが及ばず、横河に「向こうは上手くいかなくても自分たちの得意な形を貫いた」(大石)と脱帽させた佐川急便が「高さ」で3連覇、そして天皇杯の出場権を手に入れた。


  interview   佐川急便東京SC FW 10 山本正男

天皇杯ではJリーグのチームと当たるところまで勝ち進みたい
前半は自分たちのミスでペースを崩していた。だから1-1で折り返せて良かったぐらいだと思う。後半は相手のミスに助けられた部分もあったし、こっちが入れるべき部分もあった。決勝だから簡単には勝てないのはわかっていた。(2アシストの)大久保の高さは一つの武器ですね。半分以上は勝ってくれるので。天皇杯では最低限、Jリーグのチームと当たるまでは勝ち進みたい。個々の能力では劣る分、チーム一丸となって戦いたい。




 第60回 国民体育大会 関東ブロック大会
成年男子
絶体絶命のピンチから大逆転劇で出場権獲得

 JFLの佐川急便東京サッカー部を中心に編成された東京の成年男子の試合は、1点差を争う熱戦の連続となった。
 13日の神奈川戦、東京は11分に榎本潤が先制する。東京はポストプレーヤーの榎本潤を1トップに据えて、後方からゲームメーカーの山本正男がサポートするシステムが機能して前半を2-1で折り返す。後半15分、PKによって1度は追いつかれるも、すぐさまスルーパスに抜け出した榎本潤がGKの頭越しを狙ったループシュートを決めて3-2で勝利した。
 明けて翌日はJFLの強豪・栃木SCがメンバーの大半を占める栃木。榎本潤は「相手は強いと思うが、勝つ可能性はゼロじゃないから一丸となって戦いたい」と意気込みを語った。
 しかし、その栃木に東京は0-1で惜しくも敗れてしまう。ハーフタイム明けの36分、榎本潤が「暑い中でやっているから、ちょっとしたミスで入ってしまう」と悔やむように、立ち上がりで集中力が高まらないうちに栃木の高秀賢史にバイタルエリアでのドリブル突破を許し、左足で強烈なシュートを打たれた。クロスバーに跳ね返って急降下したボールは、ゴールラインを割ったか割らないか微妙だったが判定はゴール。その後、東京は2トップにして反撃を試みるもそのままタイムアップ、15日の群馬との第3代表決定戦に回ることになった。
 炎天下の中での3日連続のゲームは体力的にも厳しいが、榎本潤から気弱な言葉は聞かれなかった。「厳しいのは相手も一緒だし、今日は僕らが先に試合があったのでアドバンテージがある」。
 第3代表決定戦は69分(試合時間は35分ハーフの70分)まで1-2でビハインドの状況だったが、その69分、榎本潤がCKからヘディングで押し込み起死回生の同点弾を挙げる。続けざまに榎本潤のシュートをGKが弾いたところを窪田慎吾が詰めて、わずか1分間で試合をひっくり返す大逆転劇を演じた。
 3位となった成年男子は9月9日からの本大会「晴れの岡山国体」に出場する。

interview
成年男子 MF 9 榎本 潤

暑い中でやっているからちょっとしたミスで入ってしまう。あの1点以外は守っていたのだが……。攻撃のバリエーションを増やして、全体的な運動量が向上することで流動性を持たせれば相手も嫌がるんじゃないか。去年は1回戦敗退だったけど、今年はチャンスがあるので、絶対に出場権を手に入れたい。
(8・14 栃木戦)


成年男子 結果(※得点は東京のみ記載)
8・13 ○3-2神奈川 得点=榎本潤(11分、50分)、山本正男(32分)
8・14 ×0-1栃木
8・15 ○3-2群馬 得点=伊藤琢也(4分)、榎本潤(69分)、窪田慎吾(69分)
※栃木、埼玉、東京が関東ブロック代表




 第60回 国民体育大会 関東ブロック大会
成年女子
目指すのは最初から全国優勝 最強軍団で国体制覇を目指す
 第26回全日本女子選手権で優勝した日テレ・ベレーザ(下部組織の日テレ・メニーナ含む)の単独チームで出場する成年女子は、ほとんど「なでしこジャパン」と呼んでも差し支えないぐらいの豪華メンバーである。それだけに、選手たちも関東ブロック大会は「絶対に勝たなくてはならない」(酒井與惠)ものだと捉えている。
 1回戦、スタメンに日本代表経験者を8人も揃えた東京はキックオフと同時に群馬を自陣に釘付けにする。6分の右サイドから切り込んだ伊藤香菜子が決めた左足ミドルを皮切りに前半2得点、後半3得点の合計5ゴールで大勝した。
 タレント集団による圧倒的なポゼッション率の高さ、永里優季、荒川恵理子、大野忍らFW陣の持っている攻撃力をまざまざと見せ付けた格好になったが、キャプテンの酒井は試合内容に対して反省を口にする。「もっと点を取れていたと思います。上手いことパスが回らない時間帯があった。受けてから考えるのではなくて、受ける前から考えていないと。相手に合わせないで、気持ちを引き締めて戦いたい」。
 続いての神奈川戦は所属チームでは澤穂希、川上直子の影に隠れている伊藤、戸崎有紀が存在感をアピールした。左利きのゲームメーカー・伊藤はFWに決定的なラストパスを供給するだけでなく東京の2点目を自らゲット、右サイドMFの戸崎は献身的な上下動を繰り返して何度もチャンスを演出した。
 伊藤に加えて、永里、荒川の両FWが2ゴールずつ奪い群馬戦と同様に5丨0の圧勝。関東ブロック大会を10得点、無失点で締めくくった。酒井は「とりあえず勝てて良かった」と安堵感を口にする。
 本大会でも優勝候補の筆頭になるのは間違いないが、酒井は気を緩めない。「私たちはチャレンジャーだと思っています。Lリーグ、国体、全日本の3冠が今年の目標です」。
 東京の看板を背負って、女子王者としての誇りを胸に刻み、最強軍団の挑戦は終わらない。

interview
成年女子 MF 5 酒井與惠

とりあえず勝てて良かった。神奈川は攻めてきたから(引いていた)群馬よりやりやすかった。全部ベレーザで出るのははじめて。今まで国体は優勝したことがないから、私たちはチャレンジャーだと思っています。Lリーグ、国体、全日本の3冠が今年の目標です。国体は連戦なので難しさもありますが、絶対に優勝したい。
(8・14 神奈川戦)


成年女子 結果(※得点は東京のみ記載)
8・13 ○5-0群馬 得点=伊藤香菜子(6分、27分)、大野忍(36分)、
                宇津木瑠美(63分)、荒川恵理子(68分)
8・14 ○5-0神奈川 得点=永里優季(19分、48分)、伊藤香菜子(25分)、
                荒川恵理子(30分、44分)
※埼玉、東京、神奈川が関東ブロック代表



 第60回 国民体育大会 関東ブロック大会
少年男子
苦戦しながらも泥臭い決勝点 全カテゴリーで本大会に進出
 FC東京U-18、ヴェルディユースのクラブユースを主軸に、國學院久我山高校、都立駒場高校など強豪校が脇を固める陣容の少年男子。全国屈指のタレント集団なのは確かだが、竹原康夫監督が「出足が良くない」ことを課題に挙げるように、千葉戦、栃木戦のどちらでも立ち上がりの悪さは目に付いた。
 1回戦の相手である千葉に対して、前半の東京は「いつもと違う。やってることができなかった」(村田翔)。開始からセカンドボールをことごとく拾われ、15分には船山貴之のFKが壁に当たってコースが変わる不運も重なり先に失点してしまう。前半終了直前の35分には、相手のセンタリングをDFがクリアするが、その先に待ち構えていた船山に強烈なミドルシュートを叩き込まれてリードを2点に広げられた。後半、東京は58分に村田が力強い弾道のFKを決めて1点差まで迫るが、追いつくには至らず第5・6位代表決定戦へ進むことが決定した。
 本大会に出るためには「後がないので勝たなければいけない」(村田)東京は、千葉戦からスタメンを3人も入れ替えて栃木戦に必勝を期した。しかし、個人能力では千葉に劣る栃木にも、東京は「勝ちたい」という気迫で上回れない。28分、またしても相手に先制点を許して1点ビハインドで前半を終えた。ハーフタイムの東京ベンチでは「勝ちたいと思うなら戦え」と竹原監督から檄が飛ぶ。すると前半とは打って変わって積極的になった東京は47分、喜山康平の左足FKで同点に追いつく。それ以降は東京ペースで進むものの決定打を繰り出せず試合は20分(10分ハーフ)の延長戦に突入した。
 延長前半が終わりに近づいた79分、左SBの佐々木景一がペナルティエリア内へ持ち込んで中央へ折り返す。中途半端な高さのボールに体ごと合わせたのはオーバーラップしていたCBの小川諒。スマートなサッカーを身上とする東京らしからぬ泥臭いゴールが決勝点となり、少年男子が成年男子、成年女子に続いて本大会への出場権を獲得した。

interview
少年男子 MF 10 村田 翔

いつもと違って、やっていることができなくて戸惑ってしまった。竹原監督からハーフタイムに「自分たちを信じろ」と言われて後半は持ち直すことができた。サイドを起点にしたかったが、なかなかドリブルやクロスでチャンスを作れなかったのが反省点です。明日は後がないので勝たなければいけない。
(8・16 千葉戦)


少年男子 結果(※得点は東京のみ記載)
8・16 ×1-2千葉 得点=村田翔(58分)
8・17 ○2-1栃木 得点=喜山康平(47分)、小川諒(79分)
※群馬、神奈川、埼玉、千葉、茨城、東京が関東ブロック代表



 東京-ソウル 親善サッカー定期戦2005
東京都U-15選抜 2-3 ソウル特別市中学校選抜
序盤の2失点が響いてソウルに逃げ切られる
 8月25日、台風11号が近づく中、西が丘サッカー場では第9回を迎える「東京-ソウル 親善サッカー定期戦2005」の第2戦が行われた。
 2日前の第1戦で東京都中体連選抜に2丨1で勝利したソウル特別市中学校選抜と戦うのは東京都U-15選抜。東京トレセンU-15参加者から選抜された選手たちだ。
 第8回までの対戦成績は16戦を戦ってU-18は3勝7敗6分と劣勢だが、U-15は通算成績で13勝1敗2分と大きく勝ち越している。しかし、キックオフ直後の1分、自陣ゴール前でボールがこぼれたところに素早く反応されて失点、いきなり出鼻を挫かれてしまう。切り替える間もなく3分、右コーナーエリア付近でFKを与えると、それを横に流されてペナルティエリア外からのミドルシュートで早々と2点を献上した。
 東京は「立ち上がりは集中していなかった」(山村佑樹)ばかりに、痛恨の2点差を背負うことになったが、5分を過ぎるとFW山村が果敢なドリブルを仕掛けて自らにペースを呼び込んでいく。それが実ったのは20分、ペナルティエリア内に浸入した山村がDF2枚の間を中央突破、GKとの1対1を落ち着いて決めた。このまま同点、そして逆転といきたい東京だが、前半終了間際の29分(30分ハーフ)にも追加点を奪われて、ソウルに2点リードを保たれたまま後半に突入する。
 後半も半ばの43分、東京は41分にピッチに入ったばかりの岩渕良太が30メートルはあろうかという距離から思い切り良く右足を振り抜く。無謀かとも思われたロングシュートがゴール右隅を捉えて再び1点差に迫る。しかし、その後は攻勢をかけるが、勝利への執念を燃やすソウルに小刻みな交代で上手く時間を使われて2-3でタイムアップの笛を聞いた。
 なお、同日のU-18では国士舘高校が東國大学校師範大学附属高校に1-4で敗れている。

interview
東京都U-15選抜
FW 17 山村佑樹

立ち上がりは集中していなかった。いきなり失点して浮き足立ってしまった。僕らはシュートが少なかった。外国のチームとやるのはスピードとか強さが違うから面白い。言葉はわからないけど、仲良くなったりするし。
憧れている選手は森本(貴幸・東京ヴェルディ1969)選手です。




TOPICS

 第5回 東京都フットサルチャレンジU-18
高校生年代へのフットサルの普及を目的に
 第5回東京都フットサルチャレンジU-18が、8月13日、14日の2日間に渡って東京・駒沢屋内球技場で行われた。1日目には出場チーム選手を対象にクリニックも開催され、59名が受講した。
 3チーム×4グループの1次ラウンドを戦って、2次ラウンドでは決勝トーナメントの他に、勝ち進めなかったチームによる順位決定リーグ、下位トーナメントが行われた。優勝したのは府中アスレティックF.C.U-18との決勝を1-0で勝利したタボス。なお、フェアプレー賞はFC一ツ橋に贈られた。

 adidas cup 2005 第29回 日本クラブユース サッカー選手権(U-18)大会
 ヴェルディユース、12年ぶりの優勝
 adidas cup 2005 第29回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会が、7月29日から8月6日まで福島・Jヴィレッジで行われた。東京からはFC東京U-18、ヴェルディユース、三菱養和SCユースの3チームが参加、ヴェルディユースが決勝まで勝ち上がった。
 横浜F・マリノスユースとの決勝では、終了間際の78分(40分ハーフ)に征矢智和が値千金の決勝ゴールを決めて1-0で勝利、ヴェルディユースが12年ぶりに「クラブ日本一」に輝いた。

 第35回 全国自治体職員 サッカー選手権大会
 東京消防庁、念願の初優勝
 第35回全国自治体職員サッカー選手権大会が7月29日から8月4日まで宮崎・宮崎県総合運動公園陸上競技場・サッカー場ほか3会場で行われた。東京からは東京消防庁、東京都庁、世田谷区役所の3チームが出場、東京消防庁が念願の初優勝を果たした。
 東京消防庁は3回戦で前年度優勝の藤枝市役所(東海)を延長戦の末に2-1で退けると、準決勝で藤沢市役所(南関東)、決勝で秋田市役所(東北)と強豪を次々に撃破して出場48チームの頂点に立った。