広報誌

Vol.25 2016年9月発行

日テレ・ベレーザがなでしこリーグ優勝!

7月18日に開催された「第2回東京都フットボールカンファレンス」。日本サッカー協会の田嶋幸三会長、影山雅永JFA インストラクターなどを講演者に迎えて、東京都における選手育成のための情報共有が図られた。

基調講演を行った日本サッカー協会の田嶋幸三会長基調講演を行った日本サッカー協会の田嶋幸三会長

日本サッカーの未来のために

 7月18日、国士舘大学で行われた「第2回東京都フットボールカンファレンス」は、東京都サッカー協会の上野二三一会長の「70周年を迎えて」という挨拶から始まった。上野会長はサッカーの普及、環境の整備に取り組んでいくことを改めて宣言。とりわけ、芝生のグラウンドを増やしてサッカーの環境を改善すること、キッズ対象のフェスティバルによるサッカーと出会うきっかけをつくっていくことに意欲を見せた。
 オープニング終了後、「日本サッカーの未来と育成」というテーマでの基調講演を行ったのは日本サッカー協会会長の田嶋幸三氏。田嶋氏は会長選挙で「育成日本復活」をマニフェストに掲げていた。
 冒頭、田嶋会長は「日本サッカー協会は2015年に世界のトップ10に入るという目標を掲げてきましたが、それは達成できていません。なぜできなかったのかを考えていく必要があります」と切り出した。
  「サッカーを取り巻く環境は昔に比べれば良くなってきています。ただ、本当に世界を目指してやっているのか。世界に通用する選手を育てるには、指導者も世界のサッカーを意識していかなければいけません」
 田嶋会長はフランスの指導者ロジェ・ルメール氏の「学ぶことをやめたら、教えることをやめなくてはならない」、リム・キム・チョン氏の「自分を高めたいかどうか。その答えは知っているのはあたな自身だけだ」といった言葉を引用し、会場に集まった東京都のサッカー指導者たちに訴えかけた。
 続いて登壇したのは、日本サッカー協会インストラクターの影山雅永氏。影山氏は国際大会での日本代表チームが敗退した試合を分析、日本サッカーが強くなるために何が必要なのかをプレゼンした。影山氏の口から何度も出てきたのが「基本の徹底」というフレーズだった。
 「ゴールに向かう意識、ボールの奪い合いに勝つ、シュートの精度を高めるなど、サッカーの基本は変わらない。たくさんの情報が入ってくるが、一過性のブームに流されるのではなく、やるべきことを徹底し続けることが日本サッカーの将来に向けて重要になると思います」
 また、12年のブラジルW杯で世界一になったドイツや、FIFAランキングで1位になるなど急成長を遂げたベルギーにおけるタレント育成プログラムの構造を紹介。ドイツでは366の拠点で1000人のコーチがタレントの発掘にあたっていることや、ベルギーでは13歳までのリーグで順位表をつくらず、勝利至上主義の指導者を排除していることなどを明かした。

参加者にはリフレッシュポイントが付与される参加者にはリフレッシュポイントが付与される

世界レベルへの具体的なアプローチ

 休憩時間を挟んだ第2部では、「東京の女子サッカー」というテーマで、十文字高校サッカー部監督を務める石山隆之氏が講演を行った。
 まず石山氏が触れたのはアメリカ女子サッカー発展の背景について。アメリカでは大学スポーツが野球、バスケットボール、アメフト、ホッケーの4大スポーツとほとんど変わらない規模で行われており、それにより施設の充実や優秀な指導者の招聘が可能になる。石山氏は「このような好循環サイクルができていることが、アメリカから良い選手が出てくる背景にある」と語った。
 日本の女子サッカーの現状については、高校から大学に入った後もサッカーを続ける学生が年々増加しているというポジティブなデータを紹介した上で、多くの選手が現役引退後の生活に不安を感じていることを指摘。女子選手がサッカーを続けやすい仕組みをつくることが重要になると話した。
 東京のゴールキーパー育成ではGKプロジェクトリーダーの石島崇氏が、JFAが世界大会でのGKのパフォーマンスを分析した資料を用いて、これからのGKに求められるゴールキーパー像を提示した。最終ラインをカバーするスイーパーのような守備範囲の広さや、攻撃面でもチームに貢献できるテクニックの高さなどの重要性が高まってくるとした上で、そのために育成年代ではどのような指導を行うべきかが示された。
 また、石島氏は選手自身が観て、判断するトレーニングの必要性を示した。
 最後の講演に登場したのは、審判委員会委員長の牧野明久氏。今年6月からサッカーのルール改正が行われたが、具体的にどのようなシーンで適用されるのかを、映像を交えて説明が行われた。
 さまざまな立場からサッカーに関わる人間が、それぞれの知識や考え方を発信したフットボールカンファレンス。東京のサッカーに関わる参加者によって現場に還元され、育成環境の向上や、より良い指導 につながっていくことを期待したい。

<第1部>

1. オープニング「70周年を迎えて」 上野二三一(東京都サッカー協会会長)

2. 基調講演「日本サッカーの未来と育成」 田嶋幸三(日本サッカー協会会長)

3. 講 演①「指導者養成及び選手育成」 影山雅永(日本サッカー協会インストラクター)

<第2部>

4. 講 演②「東京の女子サッカー」 石山隆之(東京都サッカー協会47FAインストラクター)

5. 講 演③「東京のゴールキーパー育成」 石島崇(東京都サッカー協会GKプロジェクトリーダー)

6. 講 演④ ルール改正について 牧野明久(東京都サッカー協会審判委員会委員長)

7. クロージング 大西正幸(東京都サッカー協会技術委員会委員長)