広報誌
Vol.24 2016年3月発行
2015年9月27日〜10月1日、和歌山県で開催された第70回国民体育大会。成年男子が第4位入賞、女子は準優勝の好成績を残し、東京都として2013年の東京国体以来2 年振りの男女総合優勝を達成した。各カテゴリーの監督に大会を振り返ってもらった。
正直に言うと、ここまでの結果を出せるとは思っていませんでした。最大の要因は「本国体で勝ちたい」という気持ちを出して、良い形でまとまって、一つひとつ勝てたことが大きかったと思います。
大会を通じて、選手たちが一試合ごとに成長していきました。関東ブロック大会のメンバーから数名の選手変更を行いましたが、新しく入った選手たちも非常によくやってくれました。
1回戦(香川県)は攻めながらも点が取れない時間が続いて、1点を奪うまでは苦しみました。この試合では6点全て違う選手が決めたのですが、そのことで勢いに乗れました。
準々決勝・広島県との試合は2-2で延長戦に入りました。延長でゴールを決めた十文字高校の松本茉奈加は関東ブロック大会ではメンバーに入っていませんでしたが、準決勝・長野県戦でも決勝ゴールを決めるなど期待に応えてくれました。
今回のチームは高校、大学、クラブチームとさまざまなところから集まっている本当の意味で「オール東京」として戦うことができました。このような結果を出せたのは、東京の女子サッカーに関わる、たくさんの方々のおかげです。単独チームが多い中、準優勝することができたのは、東京の女子サッカーの取り組みの成果だと思います。
私自身も指導者として貴重な経験をさせていただいたことに感謝しています。
Pos | No. | 氏名 | 所属 |
---|---|---|---|
GK | 1 | 鈴木佐和子 | 浦和レッドダイヤモンズレディースユース |
DF | 2 | 村岡 真実 | 都立飛鳥高等学校 |
DF | 3 | 工藤 真子 | 日テレ・メニーナ |
DF | 4 | 宮田あずさ | 慶應義塾大学 |
DF | 5 | 市川 実季 | 日本体育大学 |
MF | 6 | 松本茉奈加 | 十文字高校 |
MF | 7 | 藤原 加奈 | 都立飛鳥高等学校 |
MF | 8 | 海老澤桃子 | 日本体育大学 |
MF | 9 | 有田 佳奈 | 都立飛鳥高等学校 |
MF | 10 | 今井裕里奈 | 浦和レッドダイヤモンズレディースユース |
FW | 11 | 長﨑 茜 | スフィーダ世田谷FCユース |
GK | 12 | 川端 涼朱 | 十文字高校 |
DF | 13 | 田中 康子 | 慶應義塾大学 |
DF | 14 | 本多 彩夏 | 日テレ・メニーナ |
MF | 15 | 傍田 捷子 | 慶應義塾大学 |
今回、成年男子として総合優勝という結果に貢献できて、本当にうれしく思っています。
監督のオファーをいただいたときは、「自分でいいのか」という思いもありましたが、東京都代表の監督を務めることは良いチャンスだと思い、引き受けさせていただきました。
5ヶ月間という短いチーム作りの過程で、関東ブロック大会までの練習試合では思うようなパファーマンスをなかなか発揮できず、チームの完成には試行錯誤が続きました。それでも、関東ブロック1回戦の神奈川県戦では退場者2人を出す非常に厳しい展開の中で勝つことができ、その中でチーム全体に一気にまとまりと勢いが生まれ、和歌山につながりました。
和歌山ではチームコンセプト「連動した守備」「粘り強い守備」「フェアプレー」をベースに、連動したプレスからボールを奪い、丁寧かつ正確なビルドアップによってボールを動かし、主導権を握るサッカーを発揮しました。そのパフォーマンスはJFL単独編成で臨んでいた他のチームにも十分通用し、確かな手応えを感じました。
全国で4位入賞という結果については、もちろん優勝を目指していたので正直悔しさはあります。しかしながら、私たちのチームワークに関しては間違いなく出場チームの中でもナンバーワンだったと思っています。
Pos | No. | 氏名 | 所属 |
---|---|---|---|
GK | 1 | 小林 拓矢 | 明治学院大学 |
DF | 2 | 園田慎一郎 | エリースFC東京 |
MF | 3 | 小島 暢明 | 日立ビルシステム |
DF | 4 | 安藤 謙 | エリースFC東京 |
MF | 5 | 渡辺 淳揮 | 法政大学 |
MF | 6 | 小松 聖音 | 東京海上日動火災保険 |
MF | 7 | 近藤 洋史 | CERVEZA FC 東京 |
FW | 8 | 藤波 大登 | 日立ビルシステム |
FW | 9 | 山本 恭平 | 東京23FC |
MF | 10 | 朴 世訓 | FC KOREA |
MF | 11 | 佐々木 陸 | 早稲田ユナイテッド |
GK | 12 | 康 成宇 | FC KOREA |
FW | 13 | 和田 勇樹 | 明治大学 |
FW | 14 | 田村 聡 | 東京23FC |
MF | 15 | 川田 悠介 | LB-BRB TOKYO |
DF | 16 | 黄 永宗 | FC KOREA |
少年男子は2013年の東京国体で優勝しています。本大会に出る以上は優勝したいということで取り組んできました。トレセン活動を通してハードワークとコミュニケーションをテーマにして選手の見極めとチーム作りを行ってきました。
1回戦の相手が開催地の和歌山県になって、厳しい試合になるのは想定内でしたが、思っていた以上に硬くなってしまったというのが正直な感想です。一生懸命やってはくれていましたが、選手の距離感が遠くて、長いボールが多くなって、セカンドボールを拾えず、うまくリズムを作れませんでした。サイドバックの攻め上がりや、前線のポジションチェンジなどができなかったのが大きかったですね。ただ、選手は本当によくやってくれたと思っています。
総合優勝という結果は素晴らしいと思います。成年男子、女子のみなさんのおかげです。少年男子の監督としては勝利という形で貢献できていなかったことに対して、悔しさしかありません。何よりも選手たちにもっと試合経験をさせてあげたかったという思いが強いです。
優勝した神奈川県は関東ブロック大会の1回戦でPK戦で敗れた相手ですし、実力差があったわけではないと感じていただけに、1回戦を突破できていれば・・・という思いは強いです。今回の経験を次につないでもらいたいなと思います。
Pos | No. | 氏名 | 所属 |
---|---|---|---|
GK | 1 | 田中 颯 | 東京ヴェルディユース(ヴェルディSS相模原ユース) |
DF | 2 | 岡庭 愁人 | FC東京U-18 |
DF | 3 | 篠原 新汰 | FC東京U-18 |
DF | 4 | 長谷川光基 | FC東京U-18 |
DF | 5 | 知久 航介 | 國學院久我山高等学校 |
MF | 6 | 荒川 滉貴 | FC東京U-18 |
MF | 7 | 半谷 陽介 | FC東京U-18 |
MF | 8 | 池谷 祐輔 | 川崎フロンターレU-18 |
FW | 9 | 吉田 和拓 | FC東京U-18 |
MF | 10 | 品田 愛斗 | FC東京U-18 |
FW | 11 | 小林 幹 | FC東京U-18 |
GK | 12 | 高瀬 和楠 | FC東京U-18 |
DF | 13 | 吹野 竜司 | FC東京U-18 |
FW | 14 | 渋谷 黎聖 | 三菱養和SCユース |
DF | 15 | 佐々木陸生 | 三菱養和SCユース |
MF | 16 | 小林 真鷹 | FC東京U-18 |
本協会の安田一男名誉会長が平成27年度秋の「旭日双光章」を受章された。安田氏は昭和8年生まれ。早稲田大学卒業後、昭和34年に25歳の若さで本協会の理事に就任以来、48年間にわたって東京都においてサッカーの普及・発展に尽力してきたことが評価された。平成9年理事長に就任、協会の法人化を推進、平成12年に東京都より財団法人の認可を受ける。その後財団法人としての初代会長に就任し、駒沢オリンピック公園内補助競技場及び第二球技場の整備事業を推進し環境の改善に努める。また、国民体育大会サッカー競技において東京都を3回(平成9年、12年、17年)の総合優勝に導く。さらに平成25年のスポーツ祭東京(東京国体)の開催に向けて準備を進めた。
2015年度 JFA公認C級コーチ養成講習会/都立東久留米総合高校 2015年11月29日(日)〜12月23日(水) / 主 催:(公財)日本サッカー協会、(公財)日本体育協会 / 主 管:(公財)東京都サッカー協会
子供にとって一番の「環境」は指導者
12歳以下の選手・子供たちに関わるグラスルーツで活動する指導者の育成を目的とした、「JFA 公認C級コーチ養成講習会」の秋コースが行われた。インストラクターとして指導にあたった、都立東久留米総合高校監督・齋藤登氏に話を聞いた。
「基準」を示してあげる
実技ではインストラクターの齋藤氏が、どのようにオーガナイズするのか、どんな声掛けをするのかを参加者に示した
今回行ったC級コーチ養成講習会というのは、12歳以下の指導を対象にした内容になっています。「グラスルーツ」とも呼ばれますが、これからの日本サッカーを良くしていくには、若い年代というのは非常に重要になってきます。この年代で良い指導をし、良い選手を育てることが、日本サッカーの10年後、20年後を決めるといっても過言ではありません。
日本サッカー協会が決めたカリキュラムがあるので、講習会で行う内容は、どの指導者がやっても同じです。ただし、インストラクターはカリキュラム通りにやればいいわけではありません。決められたメニューであっても、言葉の掛け方であったり、練習のオーガナイズであったりで、トレーニングの質は大きく変わってくるからです。
私が大切にしているのが、「基準を示してあげること」。例えば、良いシュートが決まったとします。ここで「ナイスシュート!」というだけでなく、なぜ良かったのかを見つけて、そこを褒めてあげる。GKの位置をしっかりと見ていた、ファーストタッチでシュートを打ちやすい場所にコントロールできた、軸足を良い位置に踏み込んでいた・・・。そこを褒めてあげれば、言われた子は「またやろう」と思うし、周りの子も「次はやってみよう」と思う。具体的に褒めることで、基準が生まれ、チーム全体に波及していきます。
実技では、普段は子供たちに教えている参加者の方たちにグラウンドに立ってもらって、トレーニングをやってもらいます。自分が指導される立場になることで、「こうやって褒められたらうれしいんだな」あるいは「こういう風にトレーニングを進めればいいのか」ということを肌で感じてもらうことが重要だと考えています。
一番の環境は「指導者」
今は、サッカーの練習メニューが載った本がたくさん売られていますし、インターネットでもいくらでも出てきます。ただ、日本一になったチームのトレーニングをやれば、自分のチームが日本一になれるのかというと、そうではありません。トレーニングというのは「何をやるか」よりも「どうやるか」のほうがはるかに大切です。
私がよく言っているのが、子供たちにとって一番の「環境」は指導者だということ。人工芝の良いグラウンドがある。たくさんのボールがあって、マーカーやコーンなども充実している。充実した環境があっても、指導者の質が低ければ子供というのは伸びません。逆に言えば、環境が良くなくても、指導者の質次第で子供たちは伸びます。だからこそ、日本サッカーを強くするためには、指導者のレベルアップが重要になるのです。
講義ではサッカーの基本的な知識や考え方、技術・戦術、指導者の役割、コーチング法などが伝えられた
そして、情熱を持ってサッカーに取り組むこと。知識や経験よりも、まずはそこだと考えています。子供たちにも、指導者の情熱というのは必ず伝わります。情熱があれば、サッカーをもっと勉強しようと思います。今回のC級コーチ養成講習会で、少しでも私の情熱が伝わって、参加者の皆さんがそれぞれの現場で活かしてもらえたらうれしいです。