広報誌

Vol.23 2015年9月発行

東京ーソウル 親善サッカー定期戦2015/駒沢オリンピック公園総合運動場 8月26日、27日(U-15:70分 / U-18:80分)

ライバルとして、友好都市として

東京ーソウル 親善サッカー定期戦2015 写真1

1996年から始まった「東京ーソウル親善サッカー定期戦」が今年も行われた。東京とソウルで交互に開催されている大会は、お互いのサッカーの発展と友好を深める貴重な機会となっている。

R E S U L T
U-15
東京都中体連選抜0-2ソウル特別市中学校選抜
東京都U-15選抜0-0ソウル特別市中学校選抜
通算成績 37戦23勝6分8敗
U-18
東京都クラブユース
連盟U-18選抜
4-1彦南高校(ソウル)
関東第一高校2-3彦南高校(ソウル)
通算成績 37戦10勝10分17敗

2011年以来の黒星を喫する

第70回国民体育大会 関東ブロック大会 写真5

 U-15では東京都中体連選抜と東京都U-15選抜が、ソウル特別市中学校選抜と対戦した。「3年間、東京に勝てていなかったので、今回は勝てるように準備してきた」(イム・グンジェ監督)と言うように、並々ならぬ気合いが感じられた。
 象徴的だったのはサッカーのスタイルだ。「日本の方が実力は上だと思っている」(イム・グンジェ監督)と認めた上で、ソウル特別市中学校選抜はDF5人を並べて守備ブロックを固め、そこからカウンターを仕掛ける形を徹底的に仕掛けてきた。
 8月26日の1試合目、東京都中体連選抜は相手の術中にハマってしまい、17分、69分に2連続失点を喫して0-2で敗れた。U-15の部で東京都が敗れるのは、2011年以来のことだった。
 翌27日の2試合目、東京都U-15選抜が挑んだ。前半はシュート1本に抑えられた東京都U-15選抜だったが、後半は10本ものシュートを浴びせた。だが、ソウル特別市中学校選抜の堅い守りを崩せず、スコアレスドローに終わった。
 東京都U-15選抜の竹原康夫監督は「ソウルはガッチリと守ってカウンターを狙ってきたので、やっていて怖かった」と振り返る。
 親善試合といえども、とことん勝負にこだわる戦い方をしてきたところに、友好都市でありながらも「絶対に負けられない」というライバル心が感じられた。

インターハイ3位の関東第一高校は逆転負け

東京ーソウル 親善サッカー定期戦2015 写真2

 U-18では東京都クラブユース連盟U-18選抜と関東第一高校がソウル特別市の彦南高校と対戦した。
 東京都クラブユース連盟U-18選抜は太田翔(横河武蔵野FCユース)、ピーターゼン世隠(FCトリプレッタユース)、田代雄大(横河武蔵野FCユース)、高橋渉(FC町田ゼルビアユース)がゴールを挙げて4-1で快勝。
 翌日はインターハイで3位に入った関東第一高校の単独チームで戦った。20分、PKを与えて先制を許してしまう。その後も、前日の大敗を払拭するべくエネルギッシュに戦ってくる彦南高校に押し込まれる時間帯が続いた。
 それでも、持ち前のしっかりとパスをつなぐサッカーで自分たちのペースに持ってくると、35分に岡崎仁太朗が同点ゴールを決めて、1-1で前半を折り返す。
 後半に入ると、63分、高橋快斗が左サイドから強烈なシュートを叩き込んで逆転。インターハイ3位の実力を見せつけた。
 だが、ここから彦南高校の反撃が始まる。キャプテンのソ・ボイルをセンターバックから左サイドバックに移し、攻撃的な布陣に変えたのだ。74分、そのソ・ボイルのクロスからアン・ギョンチャンが決めて同点に。さらに後半のアディショナルタイムには、チャン・イェジョンが強烈な左足ミドルシュートを突き刺し、土壇場で試合をひっくり返した。
 逆転負けを喫した関東第一高校の小野貴裕監督は「高校選手権に向けて、すごく良い刺激になったと思う」と前向きに振り返った。

I N T E R V I E W

東京都U-15選抜 / 監督 竹原 康夫

東京都U-15選抜 / 監督 竹原 康夫

 ソウルは役割分担がハッキリしていて、ガッチリと守ってカウンターを仕掛けてきました。やっていて怖かったです。時間が経ってもスピードとパワーが落ちなくて、特に1対1でのフィジカルの強さがあるなと感じましたね。

I N T E R V I E W

関東第一高校 / 監督 小野 貴裕

関東第一高校 / 監督 小野 貴裕

 いろいろな選手を試しながら勝ちたいと思っていました。海外の相手と戦うのは、ほとんどの選手が初めてだったので、身体の使い方などに戸惑った部分があったかもしれない。こういうレベルの相手と戦うことができて良かったです。

三井のリハウス 東京都U-12 サッカーリーグ/ヴェルディグラウンドなど 前期4月5日〜6月21日、後期7月5日〜10月18日(40分)

2015年度からスタートした「東京都U-12 サッカーリーグ」。MTM(マッチ・トレーニング・マッチ)を通して選手の育成を図ることが狙い。新たに始まった試みから見えてきたものとは。

2015年度 参加チーム
グループA

東京ヴェルディジュニア/青梅新町フットボールクラブ/古千谷FC/JACPA東京FC/FCトレーロス ジュニア/FC85オールスターズ/キタミ80フットボールクラブ/横河武蔵野フットボールクラブジュニア/フットボールクラブ大泉学園/EFC ROCKETS

グループB

三菱養和サッカークラブ調布ジュニア/西原少年サッカークラブ/FCキントバリオ/FCトリプレッタ渋谷ジュニア/府中新町FC/ヴィルトゥスサッカークラブ/江東FRIENDLY-SC/Abrola武蔵村山/高尾サッカークラブ/町田JFC

グループC

三菱養和サッカークラブ巣鴨ジュニア/FCトッカーノ/Grant Football Club/大二小サッカークラブ/バディサッカークラブ江東/和田ブルドッグサッカークラブ/西新井フレンドリ-SC/Football.Club.Waragoma/ヴィトーリア目黒フットボールクラブ/国分寺第五サッカークラブ

リーグ戦の効果と今後への課題

三井のリハウス 東京都U-12 サッカーリーグ 写真1リーグ戦は2週間に1度のペースで行われている

 眩しい日差しが降り注ぐピッチの上に、はつらつと試合に取り組む子どもたちの姿があった。7月12日、JR三鷹駅からほど近い横河電機グラウンドで行われていたのは、今季から新設された東京都U-12サッカーリーグの公式戦だ。
 ジュニア年代は全日本少年サッカー大会を筆頭にトーナメント形式が主流だったが、選手の燃え尽き症候群などを回避して恒常的に強化を進めるため、東京都少年連盟は今季から新たにリーグ戦を導入した。初年度は参加30チームが3組に分かれてしのぎを削っている。
 古千谷FCの今井佑介監督は「2週間に1度のペースで試合ができるので、試合で感じた課題を次の試合で解決できるかどうかという目標を持ちやすい。前期はほとんど勝てなかったけど、次もこのレベルで戦うという意識を持って、練習に臨む姿勢が変わった子がいる」とリーグ戦の特徴である継続性が生み出す効果に手ごたえを示した。

三井のリハウス 東京都U-12 サッカーリーグ 写真2練習に臨む姿勢に変化が見られる子供もいるという

 横河武蔵野FCジュニアの戸田智史監督も「公式戦を頻繁に行うだけで成長するわけではなく、指摘を受けたシーンと似た状況に気付かなければ改善はできない。ただ、同じ相手と対戦することで、今度はどうしようかと選手が考えるようになる部分はある」と生かし方に工夫が必要であることを指摘しながらも選手の意識が変わるメリットを挙げた。
 一方、課題も浮かび上がっている。すべてのチームが自前のグラウンドを持っているわけではなく、参加を見送ったチームやリーグ戦の日程がずれ込むケースが生まれている。また、横河武蔵野の戸田監督は「リーグで定期的に公式戦が入って来ると、トレセン活動に参加している子やトーナメントにも参加し勝ち上がっていくようなチームの子は、休むタイミングが少なくなる」と大会や試合が増える際の日程面を懸念した。
 リーグは将来的に複数の階層に分かれる予定だが、青梅新町FCの米口重雄監督は「規模の小さい町クラブは、学年毎のレベルの差が大きく、1部に残り続けるのは難しい。今年のように強いチームと戦えればいいが、階層が分かれてもモチベーションを保ち続けられるか」と今後に起こり得る課題にも目を向けていた。

三井のリハウス 東京都U-12 サッカーリーグ 写真3試合で出た課題を次の試合に生かすのが狙いだ

 ただ、指導者たちは心配しているばかりでなく、様々な問題に対して各自で対策も講じている。横河武蔵野では日程緩和のため夏場に長期の休養期間を設定。青梅新町FCは、八王子市内で組まれたBチームリーグにも参加し、選手を部分的に入れ替えることで選手層のベースアップを図っている。Aグループの幹事を務める東京ヴェルディジュニアの菅原智監督は「自主運営で、各チームの指導者が準備や記録を助け合って連係が取れているし、勉強になることも多い。他のチームや選手がどう成長しているのかも感じられる。リーグは初年度だから、やっていく中で意見は出てくると思うし、出てくるべき。その中で少しずつより良いものにしていければいい」とリーグ戦の機能向上に意欲を示した。
 始めてみなければ分からないこともある。新たに得たメリットを生かしながら、改善案を出していくことが重要だろう。各クラブがすでに対策を実施していることは頼もしい限り。未来を担う子どもたちの育成環境の整備は、着実に進んでいる。