TOKYO FA's Pick UP

「普及」の、その先へ――
JFAキッズ(U-6)サッカーフェスティバル2008東京
2008年11月22日東京・駒沢補助競技場
11月22日、駒沢補助競技場で「JFAキッズ(U-6)サッカーフェスティバル2008東京」が行われた。 90チーム、1000人以上が参加したイベントの中心的役割を担ったキッズプロジェクトの取り組みをレポートする。


理想のリーグ戦を
作り上げたい

 日本サッカー協会(JFA)では10歳以下の年齢層をキッズと名づけ、U-10、U-8、U-6のカテゴリー別に幼児年代からのサッカーの普及促進のためにフェスティバルを実施している。これは各都道府県サッカー協会が独自に開催するもので、東京では11月22日に「JFAキッズ(U-6)サッカーフェスティバル2008東京」として駒沢補助競技場で行われた。
 このイベントの中心的役割を担ったのが東京都サッカー協会内のキッズプロジェクトだ。発足時からプロジェクトリーダーを務める金澤安昭氏に話を聞いた。
 現在、キッズプロジェクトの活動の柱となっているのが、巡回指導、フェスティバル、サッカー大会の3つである。最も頻繁に行われている巡回指導は、Jチームのコーチなどが幼稚園や保育園に出向いて、サッカーボールを使って遊ぶ楽しさを知ってもらうというもの。これまでの開催回数は230回、訪れた場所は120を数える。(2008年11月22日時点)
 最初の頃は「Jリーグのチームの指導者を連れて行っても、そのチームがどこかさえわからない」という感じだったが、現在は「ホームページやダイレクトメールでの告知の効果もあって、非常に人気の高い事業になっている」と金澤氏がいうように申し込みが殺到しているため、日程の調整が難しくなってきている。「まだまだ応募数は伸びることが予想されるので、新規応募チームを優先して、リピーターについては遠慮していただいている」状態だ。
 地道に行ってきた巡回指導によって、幼児年代からサッカーをする子どもは着実に増えてきている。フェスティバルのチーム名にもサッカー少年団やクラブだけでなく、幼稚園や保育園の名前で参加しているところが目立つ。割合的には50対50といったところである。
「子どもたちにボール遊びへの楽しみが芽生えたことで、教諭や保育士の方々も一緒に取り組んでくれているように思います。また、U-6、8、10の指導者講習会(キッズリーダー養成講習会)を行っているのですが、そういう中で指導の仕方や取り組み方を学んできた人たちが、積極的にキッズのチームを立ち上げています」。
 そんな中、東京のキッズサッカー事情は更に変化しつつあると金澤氏はいう。
「普及から育成へ、ボール遊びからサッカーゲームへと移行するチームが増えています」。ボールに触って遊ぶところから一歩踏み込んで、”サッカー“をするチームが増えてきた。そういった流れを受けて、昨年からキッズプロジェクトが新たに始めたのが、キッズサッカー大会である。
「今日のフェスティバルのように導入段階としてのイベントでは、ラインを多少割ったり、ハンドをしたりしても、厳密に取ることはありません。これがサッカー大会になってくると、ラインを割ればスローインになるし、ハンドをしたらファウル。GKもいますし、ゴール自体もちょっと大きくなる。もちろん大会ですから順位はつけますが、参加者全員をキッズ賞として表彰しますし、なるべくたくさん試合を経験させようということで、大会そのものをリーグ戦にして、最後に1位同士、2位同士でと決勝戦をします。この大会が一つの目標になってきています。そういったことは小学校に入ったときの底上げにつながるんじゃないかと」。
 幼児年代の段階でボール遊びから脱皮して、サッカーのゲームのルールを覚えて、基礎的な技術をある程度できるようになれば、当然上達のスピードは上がっていくだろう。以前は少年チームの入団資格は3年生からというところもあったが、現在は大半が1年生から入団できる。東京サッカーの底上げは確実に進んでいる。
 だが、キッズプロジェクトの目的はサッカーがうまい選手を育てるだけではない。根本にあるのは人間教育である。
「サッカーをするというよりも、体を動かす楽しさや、友達と一緒に遊ぶ喜びを知ってもらいたいんです。現代の子どもはテレビを見たりゲームをしたり、1人で遊ぶことが自分の生活の中でいちばん楽しいことであったかもしれないけど、サッカーボールを使ってみんなで遊ぶことを楽しいと感じてもらえれば、そこから社会性や協調性の大事さを学ぶことができる。ルールの中でゲームをしていく、楽しんでいくということが自然と身についていくのが人間としての基盤になるのではないでしょうか」。
 キッズプロジェクトの今後の取り組みに期待したい。



Profile


(財)東京都サッカー協会
キッズプロジェクトリーダー

金澤 安昭